BTCマイニング、ヨーロッパ最後の避難先はもう使えない

今年初め、高騰した電力料金からノルウェー北部とスウェーデンに逃れて操業を続けたビットコイン(BTC)マイニング会社(マイナー)は、この冬、電力料金の高騰を受けて、操業を停止している。

わずか数カ月前、ヨーロッパのマイナーは、ヨーロッパ全体で電力料金が高騰するなか、豊富な水力発電と低需要により世界で最も安価な電力料金となっている北欧の国々に移動した。アメリカやカナダに向かうマイニング会社もあった。だが今、マイニング会社は電力料金の記録的な高騰に直面している。暖房のために電力需要が高まる冬はまだ始まったばかりだ。

ヨーロッパの電力取引所ノードプール(Nordpool)のデータによると、ノルウェー北部の12月の電力価格は1キロワット時あたり平均0.18ドル、過去3年間の平均の約4倍となっている。スウェーデンでも3倍以上になっている。

「衝撃的な出来事が続いた」、それがノルウェー北部とスウェーデンだけで唯一利用できた電力を圧迫し、料金を押し上げたとマイニング企業CMG Cryptocurrency Mining GroupとMaverick Groupの共同創業者デニス・ルシノビッチ(Denis Rusinovich)氏は述べた。

マシンの電源を切る

11月後半、複数の事情が重なったと同氏は語る。電力需要を増加させた低気温/イギリス、ノルウェー、スウェーデン、ドイツでの風力不足による発電量の低下/ウクライナ紛争によって天然ガス供給が悪化したフランス、スウェーデン、フィンランドでの原子力発電所の定期メンテナンスの遅れなどだ。

その結果、電力料金は高騰し、マイニング会社は電力コスト削減のためにマイニングマシンの電源を切らなければならなくなった。ルシノビッチ氏によると、11月中旬には早くも電源を落としたところがあった。

ノルウェーに拠点を置くマイニング会社KryptovaultのCEO、シェティル・ペッターセン(Kjetil Pettersen)氏は12月20日、「我々は毎日1時間ごとに電力料金をチェックして、損益分岐点を上回っているか下回っているかを判断し、マシンの電源を入れるか切るかを決めている。今この瞬間、当社のマシンは停止している」と述べた。Kryptovaultは今年初めにノルウェー北部に移転した。

ペッターセン氏は、ノルウェー北部の電力料金は2023年第1四半期には下落すると予想している。しかし、南ヨーロッパ全体では2023年、電力料金は高止まりすると考えている。

マイニング収益なしでの生き残り

エネルギー危機の間、マイナーは自己防衛手段としてヨーロッパでは操業を停止するだろうとペッターセン氏は述べた。マイニング収益なしで生き残れるかどうかは、準備資金と資金調達能力にかかっているという。もちろん債務状況も重要になる。

「資金を返済する必要がある場合は、数カ月以上生き残ることはできない」とUAEに拠点を置くCowa Energyの創業者フィオレンゾ・マンガニエッロ(Fiorenzo Manganiello)氏は語った。同氏はマイニングの有望拠点として、アイスランドを選択肢にあげている。

アメリカでは、複数のマイニング会社が破綻している。コア・サイエンティフィック(Core Scientific)やコンピュート・ノース(Compute North)といった大手は連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請した。

マンガニエロ氏は、この状況を資産を安価に購入できるチャンスと見ている。

マイニング施設は現状、85%〜90%のディスカウントで販売されていると同氏。強気相場の間、マイニング事業者はマイニング施設を(マイニングマシンなしの状態で)1メガワットあたり150万ドル(約2億円)で販売していた。現在は、10万ドル〜15万ドルとのことだ。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:ノルウェーにあるKryptovaultのマイニング施設。ビットメインのマイニングマシンが山積みに(Eliza Gkritsi/CoinDesk)
|原文:Europe’s Last Bitcoin Mining Refuge Is No Longer Viable