FTXショックの余波が尾を引くなか、16,000ドルを割った11月のビットコイン(BTC)対ドルは、来年の夏に半減期を迎えるライトコイン(LTC)相場の上昇に連れ高となり、月末から戻りを試す展開に一転すると、ブロックファイ(BlockFi)との関わりが懸念されていたシルバーゲート(SilverGate)が、同社へのエクスポージャーが「最小限」であると発表したことや、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が利上げ幅縮小の可能性に言及したことで、17,000ドルを回復して12月を迎えた。
12月初旬のビットコイン相場は節目の17,000ドルを挟んで揉み合いが続いたが、8日に発表された米失業保険新規申請件数の増加を受けて上値を試すと、ショートカバーを誘発し上昇。11月の米消費者物価指数(CPI)が5カ月連続で減速したことも追い風となり、一時は18,000ドルを回復した。
これにより、ビットコイン対ドルはFTXショックで下抜けした17,700ドル〜25,200ドルの中期レンジ下限を回復したが、直後に終了した12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で来年の政策金利見通しが市場予想を上回る結果となった他、イングランド銀行(BOE)と欧州中央銀行(ECB)も利上げ継続を示したことで、リスクオフが加速。これを受け、ビットコイン相場は12月前半からの上げ幅を解消し、16,300ドル付近まで下落した。
米国のインフレ減速傾向が続いたことで、ビットコイン相場は一時復調の兆しを見せた格好だが、主要国中銀が金融政策の引き締め継続の意向を示したことで、市場では世界的な景気後退入りへの懸念が台頭した。これにより、経済指標が改善すると中銀による政策引き締め継続が懸念され、悪化すると景気後退が懸念される格好となり、八方塞がりな状況の中、先行きを見極めるムードが強まっている。
現状打破には、景気減速ペースを抑えつつインフレ指標が減速し続けるか、中銀が引き締めペースを一段と緩めるかの2通りがあるわけだが、景気の先行指標となる製造業関連指標は9月頃から悪化しており、米供給管理協会(ISM)の発表する製造業購買担当者景気指数(PMI)は、11月に50を割り景気減速を示した。FRBのパウエル議長も市場に過度な楽観論を抱かせないよう、タカ派的な姿勢を維持しており、目先で現状を打破できる可能性は限られているか。
ただ、12月のFOMCで利上げ幅が75ベーシスポイント(bp)から50bpに縮小され、来年末時点の金利見通しが5.1%(前回4.6%)にとどまったことに鑑みれば、残り3回の25bp利上げで政策金利は4月にターゲットに到達することとなり、次回2月のFOMCでも50bp利上げとなれば、3月にはターゲットに到達する。つまり、FRBの利上げサイクルは早くて来年春には打ち止めとなる公算もある。
また、11月のFOMC時点で参加者のほとんどが利上げペース減速が近く適切となると合意していたことと、当時からインフレ減速が継続していることを考慮すれば、積極的な利上げに対しての慎重論はFOMC参加者の間で強くなっていることが指摘される。
よって、足元では依然として見通しが悪く、中銀高官から口先で牽制が入ることも想定され、ビットコイン相場は上値を抑制される可能性が高いと言えるが、春の雪解けまでもう少しの辛抱だと見ている。
長谷川友哉:ビットバンク(bitbank)マーケット・アナリスト──英大学院修了後、金融機関出身者からなるベンチャーでFinTech業界と仮想通貨市場のアナリストとして従事。2019年よりビットバンク株式会社にてマーケットアナリスト。国内主要金融メディアへのコメント提供、海外メディアへの寄稿実績多数。
|編集・構成:増田隆幸
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