ビットコイン(BTC)は2023年1月に28%近く上昇し、2022年11月上旬以来の高値を記録した。クリプトツイッターでは、コインベース(Coinbase)のトレーダーがこの暗号資産(仮想通貨)を上昇させる原動力となったと、まことしやかに囁かれている。しかし、ナスダックに上場しているこの取引所は、ビットコインの価格上昇圧力の唯一の原因ではない。
ブロックチェーン分析会社CryptoQuantのデータによると、コインベースのBTC/米ドル(USD)ペアとバイナンス(Binance)のBTC/テザー(USDT)ペアのスプレッドを測定するコインベース・プレミアム指数は、先週プラスに転じ、週末には10月後半以来最高の0.039に上昇した。
つまり、この指標は、コインベースにおける買い圧力が相対的に強くなっていることを示唆している。
「コインベースで取引されたビットコインとバイナンスで取引されたビットコインとの間の価格プレミアム(コインベース-バイナンス・プレミアム)は、1週間を通して引き続きプラスであり、これは個人投資家と比較して機関投資家の買い意欲が高まっていることを示している」とドイチェ・デジタル・アセットの責任者であるアンドレ・ドラゴッシュ(André Dragosch)氏は顧客に宛てたメモに記している。
機関投資家は、個人投資家の代理人とみなされているバイナンスのようなオフショアの事業体よりも、上場しているコインベースを好んでいる。バイナンスは現在、機関投資家向けのプラットフォームとしての地位を確立するための措置を講じているところだ。
しかし、累積ボリュームデルタ(CVD)と呼ばれる市場への純資本流入を測定する別の指標は、永久先物市場において、バイナンスとPaxosが発行するフィアット(法定通貨)担保のステーブルコインであるバイナンスUSドル(BUSD)でバイナンスベースの事業体がビットコインの入札したことから上昇が始まったことを示唆している。そして、コインベースやその他の取引所からの買い手が後から参戦してきたのだ。
CVDが上昇している場合は買い手が多く、逆に下がっている場合は売り手が多いことを意味する。
$BTC Spot CVDs
— exitpump (@exitpumpBTC) January 15, 2023
Whole move from 17k to 21k was made by someone on Binance aggressively buying #Bitcoin with BUSD. Other exchanges started to buy around 19.5k with USDT + USD.
Green CVD includes all exchanges with Binance USDT as well, yellow CVD – only BUSD. pic.twitter.com/1VF34JEQPN
匿名アナリストのexitpump(@exitpumpBTC)氏がCoinalyze.netから入手してツイートしたチャートは、バイナンスに上場されているBTC/BUSDペアの累積ボリュームデルタ(CVD)(黄色の線)と、他の取引所やバイナンスに上場されているBTC/USDおよびBTC/USDTペアのCVDを比較したものだ。
黄色い線は1月11日から上昇傾向にあり、緑の線はその3日後から上昇を始めている。つまり、ビットコインの1万7000ドル(約219万円)からの最初の上昇は、主にバイナンスのBTC/BUSDマーケットでの堅調な入札によって促進され、コインベースを含む他の取引所からの買い手は後から参入してきたのだ。
「私が見たところ、ほとんどが(バイナンスの)1つの主体が入札して売り圧力を吸収し、ブレイクアウト市場を作ろうとしてさらに買って、常に売り勢力を退け、それでも疲弊の兆しがないため、ショートのスクイーズが価格を押し上げたようだ」とexitpump氏はツイートしている。
一方、平均取引規模などの他の指標は、明確なリーダーシップの欠如とクジラの活動が全面的に増加していることを示唆している。
パリに拠点を置く暗号資産データ企業カイコ(Kaiko)のリサーチディレクターであるクララ・メダリー(Clara Medalie)氏は米CoinDeskへの電子メールで 「平均取引規模に関しては、ビットスタンプ(Bitstamp)、クラーケン(Kraken)、ビットフィネックス(Bitfinex)、LMAXデジタル(LMAX Digital)で顕著な増加が見られ、バイナンスを含む他のほとんどの取引所でも若干の増加が見られており、クジラ主導の値動きであることを示唆している」 と述べた。
バイナンスの平均取引規模は1月8日以降、700ドルから1100ドルに増加した。
ビットコインは先週22%近く上昇し、記事執筆時点では約2万1150ドル(約272万円)で取引されていた。この上昇は、マクロ経済のリスクが過去のものになったのではないかという見方から始まった。
「インフレのピークは過ぎ去り、金利はおそらくこれ以上上昇することはないだろうという見方が受け入れられただけではない。ほとんどの売り手が市場から追い出されていることも理由だ」とニュースレター「Crypto Is Macro Now」の著者、ノエル・アチェソン(Noelle Acheson)氏はこの価格上昇を説明している。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:CryptoQuant
|原文:Buyers From Coinbase Powered Bitcoin Higher or Did They?