シンガポールに拠点を構えるデジタル資産運用企業Growが2月、「ビットコイン・レンディング・年8%報酬」という高レートを掲げ、日本のレンディング市場に参入した。打ち出すのは「Make Crypto Simple(暗号資産を簡単に)」というド直球のメッセージ。取引用スマホアプリも、その名に違わず極めてシンプルな作りのため直感的に使いやすくなっている。
長く続く低金利時代を生きている感覚からすると、「ビットコインのレンディングで年8%報酬」という事実には驚くかもしれない。実のところ、これは暗号資産レンディング・サービスの中でも、かなりの高レートだ。彼らはどうやってこのサービスを実現させているのか? CEOのショーン・キム氏に秘密を語ってもらった。
なお、インタビューは主に英語で行われたが、韓国出身のキムCEOの口からは時折、とても自然な日本語のフレーズが飛び出てきた。実はキムCEOは日本に対して「強い思い入れ」を持っていて、それも今回のサービス開始の背景にあるのだという。
スマホアプリで使える「シンプル」なサービス
さて、キムCEOと日本とのつながりを語る前に、まずはGROWの展開するレンディング・サービスを紹介しよう。
こちらがGROWのスマホアプリのキャプチャ画面。ビットコイン(BTC)を180日間貸出す場面で、これで年8%の割合で報酬が受け取れる、という情報が表示されている。シンプルなサービス内容が、この画面からも伝わってくるだろう。
期間を定めずいつでも引き出せるフレキシブルなレンディングもあり、その場合でも報酬はビットコイン(BTC)で年3%。国内の他社サービスでは、30日の固定期間レンディングで貸借料3%というケースも見られるなか、一歩踏み込んだレートとなっている。
報酬の支払いがスピーディな点も強みだ。なんと「1日に4回、6時間置き」という高頻度で、自動的に「複利運用」されるという、ユーザーにとっては嬉しい設計となっている。
ビットコイン(BTC)以外にも、イーサリアム(ETH)、USDTやUSDCなど、合わせて9以上の暗号資産に対応。なお、報酬レートは、貸出期間と暗号資産の種類によっても変わってくる。
高レートを実現する「秘密」はどこにあるのか?
さて、高レートのサービスとなると、気になってくるのは「安全性」だ。投資で安定的に年8%を稼ぐのは、それほど簡単なことではない。GROWは、どうやって年8%という報酬レートを実現しているのか?
CEOによると、GROWのレンディングサービスはサービス開始から2年で、これまで世界150カ国の人たちに利用されており、最大報酬率(年)が9.97%、200万回以上の報酬支払、68万回以上のステーキングトランザクションという実績を残している。一方で、報酬が支払われなかったり、現金が引き出せなかったりといったトラブルは「一度もなかった」という。
GROWの大きな特徴は、まず「DeFiを利用しない」という方針だ。
キムCEOは「暗号資産を扱う会社として、これ以上ということはないほど、リスク管理には徹底して気を使っている。DeFiはまだ黎明期で、多くのプロトコルは大切な資産の運用先としてリスクが高すぎると考えている」とその理由を語る。
GROWでは、顧客から貸し出された暗号資産のほとんどをアービトラージ(裁定取引)で運用している。暗号資産のアービトラージは、さまざまな取引所間の価格差を利用して利ざやを稼ぐ手法。うまく運用するには、高度な専門知識が必要となってくる。そこを担うのがGROWの役割だ。
一般的には、金利差や価格差で利ざやを稼ぐアービトラージ取引は、「リスクが少ない変わりに、利益も少ない」イメージがある。しかし、キムCEOは「暗号資産の場合、まだまだ大きなチャンスが眠っている」のだという。
「GROWは約20人の企業だが、ゴールドマン・サックスやPwCなど、業界で10年以上の経験を積んだメンバーら、精鋭が集った。金融工学やリーガル、エンジニアリングなどのエキスパート集団だからこそ可能なサービスだ」とキムCEOは胸を張る。自身も英国の大学院で金融工学を学び、PwCやクレディ・スイスなどで業界経験を積んできた。
シンガポールでは、クリプトレンディング業者にライセンス取得を求める「2021年改正支払サービス法(PSA2021)」が成立し、いまは施行待ちの段階だ。こちらへの対応についても、キムCEOは「弊社では去年から、新しい基準を満たすよう社内の整備に時間と労力をかけてきた。こちらの準備はすでに整っており、いまは規制当局の申請受付開始を待っている状態だ」という。
なぜ、いま「日本」なのか?
さて、そんなGROWが、なぜあえてこのタイミングで「日本」なのだろうか。
キムCEOは「日本市場には、大きな魅力がある」という。その最大の理由は「日本の暗号資産ユーザーが、ビットコインの透明性や流動性、PoWの仕組みへの理解が深く、その将来性に強い期待を抱いている」と捉えていることだ。つまり、日本にはビットコインの将来性に期待し、多少の価格変動があっても「保有」する覚悟を決めたユーザーたちが多く存在しているというのだ。
もし、「HODLの覚悟」が決まっているなら、貸出期間中の価格変動リスクは想定内。レンディングの利用を考えるのは自然な流れといえる。しかし、BlockFiやCelusius、FTXといったレンディングプロバイダーが破綻に追い込まれるような状況では、ユーザーたちにも迷いが生じているかもしれない。
キムCEOはこう語る。
「彼らが破綻した原因は、一言でいうと『過度なリスクテイク』にあった。私たちの手法は彼らとは全く異なるもので、アービトラージ取引でリスクを最小限に抑えつつ、利益を出せる仕組みを作りあげた。『グローバル水準の暗号資産で簡単に稼ぐ手段』を日本の皆さんにもお届けしたい」
暗号資産と日本のユーザーの「親和性」について、キムCEOはこのような指摘もしていた。
「日本のユーザーが抱負な知識を持っている背景の一つには、そもそも暗号資産それ自体に日本との強いリンクがあることも一因ではないか。ビットコインを作り出したのは『サトシ・ナカモト』だ。SushiSwapや柴犬コインなど、日本に由来する名称も多い。これは世界の暗号資産ユーザーたちが、何らかの形で日本文化へのリスペクトを持っていることの現れだろう。それは逆に日本人にとっても、親しみやすく、名前を覚えやすいといった副次的効果をもたらしている」
そうした様々な点が、日本での「暗号資産」利用に、これからも心理的なプラスの効果を生み出していくだろうと見込んでいるのだ。日本がマンガやアニメ、ゲームなど、さまざまな世界的コンテンツのIPを有していることも、GemiFiやNFTなどでの展開で、他のエリアとは違う独自の強みを持っているとにらんでいるそうだ。
ところで、キムCEOが日本市場の可能性に大きく着目している背景には、実は個人的な事情もある。韓国出身のキムCEOだが、結婚した相手は日本人女性。10年以上の結婚生活を通じて、多様な角度から、日本文化を学んできた。
「家族での会話は基本的に日本語で、食事も日本食が多い。子どもたちもジャパニーズスクールに通っている。義理の両親に会うため、日本に行く機会も多い。自分にとっても日本はとても大切な場所」とキムCEOは強調する。英語でインタビューをする中でも、自然な形で日本語のフレーズが飛び出てくるのは、それだけ普段から日本語を使っているということだろう。
キムCEOは「僕自身も『スラムダンク』を読んで育った世代で、日本のアニメ・マンガ・ゲームなど、さまざまなコンテンツを通じて、日本の文化や考え方に触れてきた」と振り返る。家族の関係で横浜に行く機会が多いこともあり、大好きなラーメンは横浜発祥の「家系」というあたりも、「リアル日本」への理解の深さが伺い知れるポイントだろう。
そういった背景事情から、GROWでは日本でのサービス展開を、「単なる151カ国目」ではない、特別なものとしてとらえているそうだ。キムCEOは「今回のために、日本語ネイティブの情報発信チームを作った。日本語でのユーザーサポートやチュートリアル、ブログ・SNSなどの情報発信に力を入れていく」と、本腰を入れて日本市場を開拓していこうという意気込みを語っていた。
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|文・編集:coindesk JAPAN編集部広告制作チーム
|画像:coindesk JAPAN、UFI PTE.LTD.(GROW)
※2月22日15時55分 当初、本文中に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
誤:「顧客から預かった暗号資産」
正:「顧客から貸し出された暗号資産」