暗号資産(仮想通貨)を取引することは今、非常に難しい。暗号資産に特化した銀行のシルバーゲート(Silvergate)問題、主要な取引所の運用上のボトルネック、イーサリアムの「シャンハイ」アップグレードが目前に迫っているという楽観論など、市場は対立する勢力に挟まれているからだ。
暗号資産金融サービスプロバイダーのMatrixportによると、この苦境を乗り切る最良の方法は、相対価値戦略(1つまたは複数の証券を別の証券と関連付けて取引する戦略)を採用することだという。
「今は相対価値取引の時だ」とMatrixportのリサーチ&戦略責任者マーカス・ティーレン(Markus Thielen)氏は3月7日の顧客向けのレポートの中で述べている。「トレーダーは、イーサリアム(ETH)のコールオプションを購入し、ビットコイン(BTC)のコールを売却することで資金を調達できる。これにより、低ボラティリティ資産(BTC)の価格で高ボラティリティ資産(ETH)を購入することができる」
オプションは、特定の日付またはそれ以前に、原資産を所定の価格で購入または売却する権利(義務ではない)を保有者に与えるデリバティブ取引だ。コールオプションは買う権利を与え、プットオプションは売る権利を与える。
コール/プットオプションの購入は、強気/弱気の動きに対する保険の購入に似ている。買い手は、取引を行う際にプレミアムを支払うことで、プロテクションを提供する売り手に対価を支払う。
Matrixportの提案は、ビットコイン(BTC)のコールオプションを売ってプレミアムを集め、それをイーサリアム(ETH)コールオプションの購入資金に充てるというものだ。
この取引のアイデアは、ETHとBTCの年率換算された30日間の実現ボラティリティまたはヒストリカルボラティリティのスプレッドが、現在の異常に低い水準から跳ね上がるという仮定に基づいている。これは、イーサリアムの「シャンハイ」アップグレードと相まって、BTCのコールに対してETHのコールの価格が相対的に高くなることを意味する。
「ETHとBTCのボラティリティ・スプレッドは1以下に圧縮されている。これはまれにしか起こらないことで、過去4年間の93%の期間はスプレッドが1を超えて取引されている」とティーレン氏は指摘した。
ボラティリティは平均回帰的であり、オプション価格にプラスの影響を与える。つまり、ボラティリティが異常に低い時期の後は価格の乱高下が激しくなり、その結果、オプションの需要が高まり、価格が高くなる。したがって、トレーダーは、ボラティリティが長期的な平均値よりも低いときにオプションを購入する傾向がある。
ETHとBTCの実現ボラティリティのスプレッドは、過去の基準に比べて低く見え、価格の乱高下が予想される「シャンハイ」アップグレードに向かうにつれて平均値に戻る可能性がある。
ティーレン氏は、BTCコールを売却してETHコールを購入する根拠について、「スプレッドは1年間で平均1.39であり、ここでは大きなリスク/リターンの可能性がある」と指摘した。
今後数週間のうちに予定されている後方互換性のないハードフォークである「シャンハイ」アップグレードでは、2020年12月以降にイーサリアムネットワークにステーキングされたETHの引き出しが可能になる。このアップグレードは、ステーキングのリスクを軽減し、資本効率を高め、より多くの投資家の参加とおそらくETH価格の上昇のための扉を開くことになる。
バイナンス・リサーチ(Binance Research)は先月のレポートで「これまで傍観していた新規参加者の波は、機関投資家の資本を誘引することができれば、ETHに一段の買い圧力を加える可能性がある」と述べている。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Matrixport Technologies
|原文:Ether Call Options Look Attractive Relative to Bitcoin as Volatility Spread Dwindles