マクロ経済が悪化する中、暗号資産(仮想通貨)に特化したシルバーゲート(Silvergate)銀行が業務縮小を決定したことで、暗号資産投資家の不安が高まり、主要トークンの価格下落に対する保護を提供するデリバティブの需要が急増している。
報道発表時点では、4週間後に満期を迎える安価なアウト・オブ・ザ・マネー(OTM:権利を行使すると損失が出る状態)コールとOTMプットのインプライド・ボラティリティ/需要の差を見ることで導き出されるビットコイン(BTC)の30日コール・プット・スキューは、2カ月以上にわたって弱気のプットオプションに強い偏りを見せている。
これは、投資家がビットコイン価格のさらなる下落を懸念し、ロングのスポットや先物ポジションをヘッジするためにプットオプションを購入している、あるいは単に価格の下落から利益を得ようとしていることを示すサインだ。
暗号デリバティブトレーダーのための機関投資家向け流動性ネットワークであるパラダイム(Paradigm)は、3月9日早朝のマーケットアップデートで「ビットコインの25日スキューは、上昇の勢いが市場から吸い取られているように感じられるため、短い日付のプットにしっかりと戻っている」と述べた。
コール・オプションは、購入者に特定の日付またはそれ以前に、原資産を所定の価格で購入する権利(義務ではない)を与えるものだ。一方、プット・オプションは、売る権利を与えるものだ。ロング・ポジションは、投資家がその資産を所有することだ。
ビットコイン価格の下落に伴い、米ドル取引ペアの市場深度が悪化していることを考えると、プット・オプションに再び偏りが生じていることは正当化されるように思われる。つまり、小さな売り注文が大きな値下がりにつながる可能性があるということだ。深度とは、市場が安定した価格で大きな売買注文を吸収する能力のことを言う。
「米ドル市場の深度は、過去1カ月でバイナンスUSD(BUSD)の深さとほぼ同じだけ低下している。BUSDに関するニュースが出た後、そのトップペアの流動性は、回復する前に40%以上低下した。一方、シルバーゲートのニュースは米ドルのペアに重くのしかかっている」と、パリに拠点を置く暗号資産市場分析企業のKaikoはツイートした。
ビットコインは過去24時間に2万1000ドルを下回る3週間ぶりの安値まで下落し、先月到達した2万5000ドル以上の高値からの下落幅が拡大した。
この売りはは、シルバーゲートの危機とそれに伴う流動性への懸念、連邦準備制度理事会(FRB)の金利予想が急激にタカ派的になったこと、主要取引所における業務上のボトルネックなどが要因として挙げられている。
30日ビットコイン・スキューは-3.62まで低下し、1月7日以来最低となったことが、Amberdataが提供するチャートで示されている。60日、90日の指標はそれぞれ-2.72、-1.58%と2カ月ぶりの低水準に落ち込んでいる。
イーサリアムの「シャンハイ」アップグレードが目前に迫っているにもかかわらず、時価総額第2位の暗号通貨であるイーサリアム(ETH)に関連するオプションにも同様のパターンが見られる。
「パラダイムフローは、BTCとETHの両方でプットが主流となっている。BTCは90日間、ETHは180日間、プット>コールが優勢」とParadigmはテレグラム(Telegram)チャンネルで述べている。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Amberdata
|原文:Crypto Options Market Flashes Bitcoin Warning as Silvergate Winds Down Operations