ビットコインのレイヤー2「スタックス」好調

スタックス(STX)──スタックス・ネットワーク(Stacks Network)のネイティブトークン──は3月、ビットコインNFTを実現するBitcoin Ordinalsブームと、プロトコルのTVL(Total Value Locked:預かり資産)が増加するなか、価格が上昇した。同プロジェクトは今年、スピードとスケーラビリティを高めるアップグレードも予定している。

2019年、史上初の米証券取引委員会(SEC)認可済みのトークンオファリングとなったSTXは3月、23%上昇して、過去1年の最高値1.25ドルに達した。3月末にかけて上昇ペースは減速したが、それでもこの3カ月で350%上昇し、時価総額は15億ドル(約1950億円、1ドル130円換算)となっている。

メッサーリ(Messari)のデータによると、時価総額10億ドル以上の暗号資産のなかでは3月、エックス・アール・ピー(XRP)に次いでSTXはNo.2のパフォーマンスを見せた。

スタックスは、ビットコインブロックチェーンのスマートコントラクト用レイヤー2プロトコルで、ビットコインの機能を「決済システム」というよく知られたものから、プログラム可能なより汎用性の高いプラットフォームへと拡張することを目指している。

価格もTVLも上昇

STXは先月、OrdinalのビットコインNFTへの関心が高まるなか、上昇を始めた。スタックスは、NFT発行機能を備えており、共同創業者ムニーブ・アリ(Muneeb Ali)氏によると、ユーザーはスタックス上ですでに65万個のビットコインNFTを発行している。

TVLもここ数カ月で上昇し、DeFiLlamaのデータによれば、2月の800万ドルから3月中旬には3500万ドルまで上昇した(現在は2500万ドルまで減少している)。

スタックスのTVL
出典:DeFiLlama

「スタックスの盛り上がりは間違いなく、Ordinalsのおかげだが、開発者たちがそのままとどまれば、維持されるだろう」とDeFi(分散型金融)アナリストのマイケル・ナドー(Michael Nadeau)氏。「ビットコインが長期的に存続するためにも、このようなプロジェクトが必要だ」と続けた。

スタックスはビットコインのレイヤー1の外にデータを保管するための台帳を備えており、イーサリアムやソラナ(Solana)と同じようにプラットフォーム上でアプリ開発が可能だ。

スタックスは、ビットコインをよりプログラム可能なものにすることを目指している。プログラム可能性はしばしば、イーサリアムブロックチェーンやソラナブロックチェーンなどと結び付けられることの多い特徴で、現状、DeFi取引の大半がこれらのブロックチェーンで行われている。

アップグレードの予定

スタックスのアリ氏は、STXに対する最近の関心の高まりは、今年予定されているアップグレード「ナカモト」に対する期待がその一因かもしれないと語った。

STXの時価総額
出典:CoinMarketCap

アリ氏によればこのアップグレードによって、ユーザーはレイヤー2チェーン上で完全にスマートコントラクトにアクセスできるようになり、レイヤー2の取引はビットコインネットワークで安全性が確保されつつ、ビットコイン(BTC)をやり取りできるようになる。

イーサリアムやアービトラム(Aritrum)とは異なり、現状ではユーザーは、スタックスへとBTCを簡単に移動させることはできないと、アリ氏は述べた。それが最大の弱点となっている。

アップグレードによって、ネットワークの流動性とキャパシティが増加する予定だ。

アリ氏はさらに、ノードを実行するために高性能なハードウェアを必要とする他の多くのブロックチェーンとは異なり、スタックスではユーザーは、Raspberry Piや普通のノートパソコンなど、それほど高性能ではないハードウェアでもノードを実行できると語った。

そのため、ソラナやICPとは異なり、スタックスはノードを運用するためにデータセンターは必要ない。通常、高性能なハードウェアを稼働させるには、データセンターを利用する。

好意的なレポート

暗号資産投資を行うヘッジファンド、ノースロック・デジタル(NorthRock Digital)はレポートの中で「ビットコインブロックチェーン上で暗号資産エコノミーを構築することの制約にもかかわらず、スタックスは『きわめて大きなチャンス』となる可能性を秘めている。(中略)ビットコインブロックチェーン上に現在構築されている暗号資産エコノミーが比較的小さいためだ」と指摘した。

ノースロックは、ビットコインブロックチェーン上の主要レイヤー2ネットワークとして次の3つをあげた。ライトニング、RSK、そしてスタックス。

それぞれ「補完的で異なるゴールを持っているが、従来からある暗号資産アプリケーション(NFT、DeFi、ネームサービスなど)のためのエコシステム開発という点では、3つの中でスタックスが最も進んでいる」。

ノースロックはまた、ビットコインの次の半減期はスタックスにはプラスとなる可能性が高いと指摘。「半減期はビットコインのセキュリティ予算を削減し、より生産性の高いビットコインエコシステムを通じて、一段と大きな手数料プールを構築する必要性をさらに高める。これによって(スタックスのようなレイヤー2の)重要性は強固なものになる」と述べた。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin Layer 2 Stacks’ Token a Top Performer in March