「シャンハイ」後のイーサリアムに機関投資家が関心──CME先物の建玉が増加

イーサリアムは4月12日、「シャンハイ」アップグレードとも呼ばれる待望の「シャペラ」ハードフォークを実施したことで、ロックされたコインを自由に引き出すことができるようになり、このブロックチェーンのネイティブトークンであるイーサリアム(ETH)のステーキングのリスクを軽減した。この極めて重要な出来事により、市場価値で2番目に大きい暗号資産(仮想通貨)に対する機関投資家の関心が高まっている。

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の公式データによると、4月10日以降、CMEで取引されているイーサリアム先物のアクティブ、またはオープンな契約数は39%増の6248に達している。米ドルベースでは建玉は70%以上増加し、6億3300万ドル(約853億6700万円)になった。コイングラス(CoinGlass)のデータによると、4月14日には6億7500万ドル(約910億3000万円)という12カ月ぶりの高水準に達している。各契約は50ETHの価値を持ち、表記価格は1ETHあたり米ドル建てになっている。

CMEのイーサアリアム先物の建玉数と取引高(CEM)

機関投資家は通常、暗号資産を所有することなくエクスポージャーを得ることができるCME先物のような規制された商品を好む。そのため、イーサリアムやビットコインに関連するCME先物は、機関投資家の活動に使われていると広く考えられている。

暗号トレーダーで、流動性プロバイダーFolkvang Tradingの元最高投資責任者であるジェフ・アンダーソン(Jeff Anderson)氏は「機関投資家が暗号資産取引所の担保の基礎となる信用エクスポージャーを評価することを余儀なくされたため、CMEの市場シェアは拡大した」と述べた。「シャペラを取り巻く動きは、12カ月ぶりの高水準の建玉でこれを露呈している」。

人気のニュースレター「Crypto Is Macro Now」の著者、ノエル・アチェソン(Noelle Acheson)氏も同様の意見を述べている。

「ここ数日、機関投資家のETH先物への強い関心が見られた」とアチェソン氏は述べた。「米ドルの建玉は現在、2022年3月以来の高水準にあり、週末の直前にはCMEのETH先物建玉が米ドルベースで80%以上跳ね上がった」。

価格上昇を伴う建玉の増加は、市場への新規資金の流入を意味し、上昇トレンドを確認するものだ。米CoinDeskのデータによると、シャペラのハードフォーク以降、ETHの価格は8%上昇している。

K33リサーチのアナリスト、ベトル・ルンデ(Vetle Lunde)氏は、「ETHは現在、間違いなく特質的なフローが発生している」と述べている。「BTCのオープンインタレスト(OI、未決済建玉)は4月10日以降1.5%減少しているのに対し、ETHのOIは同期間で38.7%増加している」。

「上場取引型金融商品(ETP)でも同様の流れが見られる。BTC ETPは4月10日から4月18日まで1.52%の純流出があったのに対し、ETH ETPは同じ期間に0.77%の純流入があった」とルンデ氏は付け加えた。

先物ベーシス(先物市場と現物市場の価格差)が拡大したことで、年率換算した3カ月間のプレミアムは2倍の4%超になった。建玉の増加とベーシスの拡大という組み合わせは、レバレッジが強気側に配分されたことを示唆している。

プレミアムが上昇すると、しばしばキャリートレーダーが市場に集まってくる。キャリー取引は、先物を売り、同時にスポット市場で原資産を買い、2つの市場の価格差をポケットに入れることで、市場に中立的な戦略を設定する。

「魅力的なベーシスが、より多くのトレーダーを市場に呼び込んでいる」とアンダーソン氏は言う。

シャペラの後、他の取引所でも取引が活発化しており、今、この市場に集まっているのは機関投資家だけではないことがうかがえる。

クオンツ主導の取引会社TDX Strategiesの創設者兼CEOのディック・ロー(Dick Lo)氏は、「デリビット(Deribit)でも建玉が過去最高を更新しており、機関投資家の買いであるという決定的な証拠とは言えないかもしれない」と述べている。

コイングラスのデータによると、CMEを除く世界のETH先物建玉は、約22%増の66億2000万ドル(約8900億円)となっている。デリビットに上場されているETH先物の建玉は30%増の7億5000万ドル(約1010億円)に跳ね上がり、2021年5月に記録した7億7860万ドル(約1048億円)以来の高水準に達した。

デリビットやバイナンスなど、すべての取引所で建玉が増加している。(CoinGlass)

「『シャペラ』アップグレードの後、アンステーキングの引き出しは秩序正しく、市場によく吸収されており、ETHホルダーからのステーキングの増加も見られる。ETHは『マージ』後もデフレが続いており、自由にアンステークできるステーキング利回りの魅力も加わって、ETHに対する強気の関心が高まっている」とロー氏は述べている。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:CME
|原文:Institutions Flock to Ether After Shapella Upgrade