イーサリアム、週のステーキング預け入れが過去最高を記録──シャンハイで流動性リスクが軽減

イーサリアムブロックチェーンの大型アップグレード「シャンハイ」によって先週、イーサリアム(ETH)のステーキングのための預け入れは記録的な流入を記録。主に機関投資家向けステーキングサービスプロバイダーと引き出し後に獲得した報酬を再投資する投資家が流入を牽引したと暗号資産アナリストは述べた。

暗号資産投資会社21シェアーズ(21Shares)のアナリスト、トム・ワン(Tom Wan)氏が作成したDune Analyticsのデータダッシュボードを見ると、先週、約57万1950ETH、約10億ドル以上がステーキングされた。

ETHステーキングの約2年半の歴史の中で、週あたりの流入としては最大。

Dune Analytics, 21Shares

ETHは、シャンハイの成功を受けて上昇したが、先週、インフレと景気後退にまつわるマクロ経済懸念が再燃し、広く暗号資産市場が下落、上昇分をすべて失った。

機関投資家向けETHステーキング

機関投資家向けステーキングサービスが預け入れ急増を牽引したとワン氏はツイートしている。

21シェアーズのダッシュボードによると、シャンハイ後、機関投資家向けステーキング・サービスプロバイダー上位5社(Bitcoin Suisse、Figment、Kiln、Staked.us、Stakefish)の預け入れは23万5330ETH、約4億5000万ドルにのぼる。

またワン氏は別のツイートで、ETHの引き出しが可能になったことで、ステーキングに伴う流動性リスクが大幅に軽減されたことを強調している。

報酬の再投資

暗号資産市場調査企業K33 Researchのバイス・プレジデント、アンダース・ヘルセス(Anders Helseth)氏は、記録的な流入のもう1つの要因として、投資家が引き出したステーキング報酬を再投資していることをあげた。

シャンハイ後の最初の8日間で、投資家はステーキング報酬として約90万ETHを引き出した。一方、預け入れは約66万7000ETH、シャンハイ前の最後の8日間に預け入れられた額の6倍。

これは、投資家が引き出した報酬の大部分を再投資したことを示しているとヘルセス氏は記した。

売り圧力減少

CoinDeskの元リサーチ責任者で市場アナリストのノエル・アチェソン(Noelle Acheson)氏は、シャンハイはステーキングの流入額では「純増」となったと24日のニュースレターに記した。

「これまでのところ、報酬の引き出しを除外すれば、預け入れペースは引き出しを上回っている」

報酬の引き出しと、完全な引き出し(撤退)の違いは、ステーキングの仕組みに由来する。ユーザーは、ノードを開設してステーキング報酬を得るためには、32ETHをネットワークに預け入れる必要がある。ステーキングで獲得した報酬をノードに置いたままにしておいても、ノードのリターンは向上しない。リターンを増やすために、ユーザーは報酬を引き出し、新たに32ETHを預け入れて、新しいノードを開設することは論理的なこととアチェソン氏は解説した。

報酬の再投資はまた、売り圧力を減らし、ETH価格にとって潜在的にポジティブなサインとなると同氏は述べた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Dune Analytics, 21Shares
|原文:Ethereum Shanghai Upgrade Brings Record Inflow of 572k ETH Staked in a Week