金融の透明性に関して、暗号資産業界と規制当局の考えは同じ【Consensus 2023】

業界が成長すると必ず発生する問題の1つは、皆が同じことを語っているのかわからなくなることだ。DeFi(分散型金融)開発者と金融規制当局の間の議論ほど、この問題が顕著な場面はない。

26日から始まった「Consensus 2023」で、コンセンサス(合意)を得ることはできるだろうか? おそらく無理だろう。

すれ違い

アメリカの金融規制当局はおおむね、暗号資産は明らかに既存の規制フレームワークに収まると考えている。暗号資産を管理するルールはすでに整備されているというわけだ。

だから、米証券取引委員会(SEC)のゲンスラー委員長が暗号資産企業に対して、SECに登録するよう呼びかけたり、金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)が業界全体に対して、より厳格な顧客確認(KYC)とアンチマネーロンダリング(AML)の要件を適用するよう求める状況になっている。

例外もあるが、暗号資産は「ハウィー(Howey)テスト」の枠には収まらないと業界は主張してきた。ハウィーテストとは、金融商品が証券にあたるかどうかを見極めるためにSECが使う指標。簡単に言うと「投資を行う一般市民が、他の人の取り組みをもとに利益を見込んでいるかどうか」を基準としている。

26日に「Consensus 2023」のメインステージに登壇した業界団体Chamber of Digital Commerceの創設者兼CEOのペリアン・ボーリング(Perianne Boring)氏はこうした点を問題視している。

暗号資産の世界では、「コミュニティ」や「コラボレーション」といった用語がよく使われるが、業界関係者と規制当局によって、その意味は異なっている。

「コラボレーションするとはどういう意味か?」とボーリング氏は投げかけた。

SECにとって、その答えは重要ではない。価値を持つ可能性のあるシステムを開発するために人々が組織化されると、「法律が発動される」とボーリング氏は指摘。同氏は少なくともステージ上では、ロビー活動や提案されたガイダンスに意見を表明することなどによって、定義の違いを解消できるとは考えていないようだった。

目的は同じ

だからと言って、完全に落胆する必要はない。分散型取引所(DEX)ユニスワップ(Uniswap)の法務責任者サルマン・バナエイ(Salman Banaei)氏と、同じくDEXのdYdXのマーケティング責任者ネイサン・チャ(Nathan Cha)氏、ブロックチェーン基盤のクレジットマーケットプレースを手がけるメープル・ファイナンス(Maple Finance)の共同創業者シドニー・パウエル(Sydney Powell)氏、DeFiメディアThe Defiantの創業者カミ・ルッソ(Cami Russo)氏によるパネルディスカッションでは、DeFi推進者である登壇者たちは、規制当局はDeFiのパワーと目的を理解するようになると自信を持っていた。

規制当局とDeFi支持者たちは同じ目的を持っている。どちらも金融システムの透明性を高めたい(だからと言って、すべてのノンカストディアル、パーミッションレスなアプリがいずれKYC手続きを追加するというわけではない)。規制当局が規制の文言で行おうとしていることを、DeFiはプログラムで実現できる。

以下のような議論には聞き覚えがあるだろう。すなわち、DeFiはリアルタイム監査、変更不可能な取引記録、ユーザーを簡単に追跡できる能力をもたらす。DeFiユーザーの身元はすぐにはわからないかもしれないが、時間とリソースがあれば突き止めることができる。そして、それこそが金融規制当局の仕事だ。

単なる宣伝文句ではない、バナエイ氏は統計データを用意していた。マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)によると、伝統的金融システム内での違法資産の押収率は約0.1%。バナエイ氏によると、暗号資産は27%という。

暗号資産が金融犯罪の温床になっているということではない。チェイナリシス(Chainalysis)によると、犯罪行為と関連した暗号資産取引はきわめて少ない。つまり、政府がテロリストへの資金供与やマネーロンダリングを懸念するなら、暗号資産がもたらす比類なき透明性を歓迎すべきだ。

結局のところ、暗号資産業界とその監督を望む規制当局は同じ方向を向いている。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Consensusでのパネルディスカッション(Shutterstock/CoinDesk)
|原文:Crypto and Regulators Are Speaking the Same Language When It Comes to Financial Transparency