ビットコイン(BTC)を代表格とする暗号資産(仮想通貨)の利益については、株式投資などと課税の仕組みが異なり、確定申告で正しく納税を済ませるためには、仮想通貨の税金に関する基礎知識を持っておくことが必須だ。
本記事ではビットコインなどの仮想通貨について、税金の計算方法および税率について解説する。
<記事のポイント>
- ビットコインは課税方式は「総合課税」であり、税率は15〜55%となる。
- 利益が20万円以下だと確定申告が不要なケースもある。
- 確定申告をしないと「加算税」や「延滞税」のペナルティを受けることも。
- ビットコインで課税されるタイミングは、売却時や別の仮想通貨に交換したときなど。
ビットコイン(仮想通貨)の税金の仕組みと税率
早速、ビットコイン(仮想通貨)の税金の仕組みと税率について、説明していこう。
ビットコイン(仮想通貨)は「総合課税」で、給与などと合算
ビットコインは「総合課税」として課税される。これは給与など、その他の所得と合算して税額を求める方法だ。「累進課税方式」が取られており、所得が大きいほど15~55%の範囲で税率が上がる(住民税含む)。つまり、ビットコインは高所得者ほど税負担が大きくなる。
厳密に言うと、所得税は課税される所得金額の5〜45%の7段階で課税される。一方、住民税は課税される所得金額に対して一律で10%課税される。そのため、ビットコインに対する課税パーセンテージは15〜55%ということになる。
一方、株式やFXはその他の所得と別に計算される「分離課税」。給与などで高い所得を得ていても、税率は一律20%で求められる。
- 仮想通貨(暗号資産):総合課税(15~55%)
- 株式、FXなど:分離課税(一律20%)
※住民税含む(復興所得税は含まず)
所得区分は「雑所得」または「事業所得」
所得税は、性格の違いから10の所得区分に分けられている。仮想通貨取引で生じるものは、原則として「雑所得」に分類される。ただし、一定の要件を満たす場合は原則として「事業所得」となる。
仮想通貨取引における事業所得の取り扱いは、2022年12月に大きく変更された。仮想通貨取引で生じた利益が事業所得と認められるには、従来はその取引自体が事業所得と認められるか、あるいは事業所得といったその他の所得が生じる行為に付随した取引である必要があった。
しかし2022年12月にこの取り扱いが改訂され、仮想通貨取引そのものが事業所得と認められることとした要件がなくなり、その年の仮想通貨取引の収入が300万円超で、かつその帳簿書類の保存がある場合、原則として事業所得になるとされた。これにより、仮想通貨取引は以前より事業所得に区分されやすくなったと考えられる。
【仮想通貨取引の所得区分】
従来 (2021年12月改訂分) | 現在 (2022年12月改訂分) | |
---|---|---|
原則として事業所得 | 1. それ自体が事業と認められる仮想通貨取引 2. 事業所得などの基因となる行為に付随して生じた仮想通貨取引 | 1. 年間の仮想通貨取引の収入が300万円超で、かつその帳簿書類の保存がある場合 2. 事業所得などの基因となる行為に付随して生じた仮想通貨取引 |
原則として雑所得 | 上記以外 | 上記以外 |
所得金額の計算において、雑所得と事業所得で大きな違いはない。原則として、どちらも1年間の収入から必要経費を差し引いた額が所得金額となる。ただし、一般的に必要経費に算入できる範囲が事業所得の方が広く、また事業所得にはいくつか特例的な取り決めもあることから、雑所得より負担が小さくなりやすい。
【雑所得と事業所得の違い】
他の所得との損益通算 | 損失の繰越し・繰戻し | 青色申告特別控除 | |
---|---|---|---|
雑所得 | 不可 | 不可 | 不可 |
事業所得 | 可能 | 可能 | 可能 |
ビットコイン(仮想通貨)の税率
ビットコインの税率は以下の通り。国の税金である「所得税」が5~45%の範囲で決定され、都道府県および市区町村に納める「住民税」は原則10%だ(所得割部分)。
利益の額 (その他の所得と合算) | 所得税率 (国税) | 住民税率 (地方税) | 合計 |
---|---|---|---|
194.9万円以下 | 5% | 10% | 15% |
329.9万円以下 | 10% | 10% | 20% |
694.9万円以下 | 20% | 10% | 30% |
899.9万円以下 | 23% | 10% | 33% |
1,799.9万円以下 | 33% | 10% | 43% |
3,999.9万円以下 | 40% | 10% | 50% |
4,000万円以上 | 45% | 10% | 55% |
ビットコイン(仮想通貨)にかかる税金の計算方法
ビットコイン(仮想通貨)の利益の計算式
仮想通貨取引における税制上の利益は「売却金額-(取得単価×売却数量)」で計算される。例えば取得単価100万円のビットコイン2枚を400万円で売却した場合、利益は200万円{売却金額400万円-(取得単価100万円×売却数量2枚)}。
「総平均法」か「移動平均法」で取得単価を計算
ビットコインなど、仮想通貨の税制上の利益は「総平均法」もしくは「移動平均法」で求めた取得単価を基に計算される。前者は年間の、後者は購入時点の総購入金額で計算される。
例えば以下のようにア~エの順で売買を行なうとする。ウで売却益が出るが、取得単価の計算方法によって税制上の利益が異なる。
ア…ビットコイン1枚を100万円で購入
イ…ビットコイン1枚を200万円で購入
ウ…ビットコイン2枚を400万円で売却(売却益が発生)
エ…ビットコイン2枚を100万円で購入
総平均法による利益の計算
総平均法を用いた場合、税制上の利益は200万円だ。取得単価と利益の計算は以下の通り。
- 取得単価:総購入額400万円÷総購入数量4枚=100万円
- 利益の額:(売却単価200万円-取得単価100万円)×2枚=200万円
移動平均法による利益の計算
移動平均法を用いた場合、税制上の利益は100万円となる。総平均法と比較し、税制上の利益が100万円小さくなった。
- 取得単価:イ時点の総購入額300万円÷イ時点の総購入数量2枚=150万円
- 利益の額:(売却単価200万円-取得単価150万円)×2枚=100万円
ポイントは「エ時点の購入を取得単価の計算に含めるかどうか」だ。総平均法は同一年の購入はすべて含める(同一年なら取得単価は同じ)が、移動平均法は売却後の購入は含めない。
今回は移動平均法のほうが大きい取得単価となったが、エ時点の購入金額が高額だと総平均法のほうが大きくなる。ケースによってどちらが有利になるか異なるため注意したい。
移動平均法を選択したい場合は届出書「所得税の【有価証券・暗号資産】の評価方法の届出書」の提出が必要だ。提出しない場合は総平均法が適用される。
国税庁が計算用ファイルを公開している
国税庁は取得単価の計算に用いることができるファイルを、総平均法と移動平均法のいずれもホームページで公開している。手計算するより簡単に取得単価を算出できるだろう。
なお、仮想通貨取引における取得単価や税金の計算は、民間の取引ツールを利用する選択肢もある。無料で利用できるサービスは後述する。
利益=所得とし、本業の所得と合算
この方法で求めた仮想通貨(暗号資産)の利益をその他の所得と合算し、所得税の税率を当てはめて税額を求める。仮想通貨の利益が小さくても、もともと高所得を得ている場合は税金が大きくなる傾向にある。本記事のシミュレーションも参考にしてほしい。
ビットコイン(仮想通貨)の税金計算ツール
ビットコインの税金計算は煩雑だ。計算に誤りや漏れがあると追徴課税が課される可能性もある。自信がないなら専用の計算ツールの利用が望ましいだろう。取引回数が一定以下なら無料であることも多い。
ただしツールごとに対応の取引所が異なる。国内の主要な取引所の多くは対応しているため、ツールを利用したい場合はそのような取引所で取引を行なうといいだろう。主な計算ツールと対応取引所を以下にまとめる。
無料範囲 | 対応取引所 | |
---|---|---|
Gtax (ジータックス) | 年間100件まで | コインチェック GMOコイン ビットフライヤー DMMビットコイン ビットバンク |
CRYPTACT (クリプタクト) | 年間50件まで | コインチェック GMOコイン ビットフライヤー DMMビットコイン ビットバンク |
CryotiLinC (クリプトリンク) | 年間200件まで | コインチェック GMOコイン ビットフライヤー DMMビットコイン ビットバンク |
税理士へ委託する方法も
仮想通貨取引の税金計算は、税理士が対応しているケースもある。確定申告まで委託できるため、ツールを使って自身で行う場合より手間がない。ただし基本的に報酬を払う必要があるため、ある程度取引の規模が大きい人の選択肢といえよう。
ビットコイン(仮想通貨)の税金 年収別シミュレーション
ここでビットコインの税金について、より具体的な額を解説したい。
ビットコインの税金を求めるためには、まずその他の所得を求めなければならない。給与以外の収入がないと仮定し、年収別の所得を以下にまとめた。
年収別 給与で得た所得の概算
給与所得控除 | 社会保険料控除 | 基礎控除 | 所得 | |
---|---|---|---|---|
年収400万円 | 124万円 | 61万円 | 48万円 | 167万円 |
年収500万円 | 144万円 | 73万円 | 48万円 | 235万円 |
年収600万円 | 164万円 | 89万円 | 48万円 | 299万円 |
年収700万円 | 180万円 | 105万円 | 48万円 | 367万円 |
年収800万円 | 190万円 | 118万円 | 48万円 | 444万円 |
年収900万円 | 195万円 | 123万円 | 48万円 | 534万円 |
年収1,000万円 | 195万円 | 128万円 | 48万円 | 629万円 |
※控除は「給与所得控除」「社会保険料控除」「基礎控除」のみ適用
※社会保険料は年収を12カ月で除した値を「標準報酬」とし、東京都における2022年度分の協会けんぽ保険料(介護保険第2号被保険者)を使用
例えば「年収400万円」の場合、給与だけで約167万円の所得となる。仮に暗号資産で30万円の利益を得ると利益の額は197万円となり、20%の税率が適用される。
(再掲)ビットコイン(仮想通貨)の税率
利益の額 (その他の所得と合算) | 所得税率 (国税) | 住民税率 (地方税) | 合計 |
---|---|---|---|
194.9万円以下 | 5% | 10% | 15% |
329.9万円以下 | 10% | 10% | 20% |
694.9万円以下 | 20% | 10% | 30% |
899.9万円以下 | 23% | 10% | 33% |
1,799.9万円以下 | 33% | 10% | 43% |
3,999.9万円以下 | 40% | 10% | 50% |
4,000万円以上 | 45% | 10% | 55% |
これを基に、ビットコインによる利益が50万円、100万円、200万円のケースで税金を求めると以下のようになる。利益が同じでも年収が高くなるほど税額が上昇していることがわかるだろうか。
年収別 ビットコイン(仮想通貨)の利益に対する税金の概算
50万円 | 100万円 | 200万円 | |
---|---|---|---|
年収400万円 | 10万円 (5万円) | 20万円 (10万円) | 60万円 (20万円) |
年収500万円 | 10万円 (5万円) | 30万円 (10万円) | 60万円 (20万円) |
年収600万円 | 15万円 (5万円) | 30万円 (10万円) | 60万円 (20万円) |
年収700万円 | 15万円 (5万円) | 30万円 (10万円) | 60万円 (20万円) |
年収800万円 | 15万円 (5万円) | 30万円 (10万円) | 60万円 (20万円) |
年収900万円 | 15万円 (5万円) | 30万円 (10万円) | 66万円 (20万円) |
年収1,000万円 | 15万円 (5万円) | 33万円 (10万円) | 66万円 (20万円) |
上記の結果はあくまで参考にとどめてほしい。同じ年収でも所得控除等の条件は個々に異なるため、当該シミュレーションに当てはまらない可能性が考えられる。
20万円以下の利益は申告不要となる場合がある
以下の条件を満たす場合、ビットコインの利益が20万円以下にとどまるなら申告は不要だ。
- 収入が給与のみ
- 年収2,000万円以下
- 給与の支払いが1カ所のみ
- 源泉徴収および年末調整を受けている
- いずれの理由でも確定申告を行なわない
ポイントは「申告不要だが非課税ではない」という点だ。なんらかの理由(医療費控除など)で確定申告を行なう場合、ビットコインの利益が20万円以下の場合でも併せて申告を行なう必要がある。
ただし上記の申告不要制度は所得税上の取り決めだ。住民税は申告不要制度のルールがなく、原則として所得が発生するなら20万円以下であっても申告する必要がある。
ビットコインで納税しなくてもバレない?
ビットコインで納税しないことが税務署にバレるかどうかについては、答えは「バレる可能性が高い」と言える。
税務署は、個々人がビットコイン取引を行っているかどうかを把握するための手段をいくつか持っている。例えば、日本の取引所は金融庁の規制を受けており、取引所は取引記録を税務署に提出する義務がある。さらに、暗号資産の取引所間での送金や取引履歴はブロックチェーンという公開された台帳に記録されるため、取引が追跡可能となっている。こうした仕組みがあるため、税務署は取引履歴を元に不正がないか確認できる。
取引所から得られる情報を基に、税務署が対象者に対して調査を行うこともある。ビットコイン取引を行っている場合、適切に申告し、税務署とのトラブルを避けることが重要だ。
ビットコイン(仮想通貨)で課税されるタイミング
ビットコインなどの仮想通貨はおもに以下のようなタイミングで課税される。
- ビットコイン(仮想通貨)を売却したとき
- ビットコイン(仮想通貨)で商品を購入したとき
- 別の仮想通貨に交換したとき
- マイニングで仮想通貨を入手したとき
ビットコイン(仮想通貨)を売却したとき
取引所等でビットコインを売却したとき、利益があれば課税される。最も代表的な課税タイミングといえるだろう。前述した方法を基に税金を計算してほしい。
ビットコイン(仮想通貨)で商品を購入したとき
ビットコインを商品の決済に用いた場合も課税される。ビットコインを売却したとみなされるためだ。
例えばビットコイン4枚を400万円で購入し、20万円相当の商品をビットコイン0.1枚で支払った場合、利益は以下のように計算される。
- 取得単価:総購入額400万円÷総購入数量4枚=100万円
- 利益の額:売却金額20万円-(取得単価100万円×0.1枚)=10万円
※20万円相当の購入=売却金額20万円とみなされる
別の仮想通貨に交換したとき
取引所等でビットコインを別の銘柄へ交換した場合も課税されるため注意したい。商品の購入と同様、ビットコインを売却したとみなされるためだ。
例えばビットコイン4枚を400万円で購入し、うち1枚をイーサリアム20枚(200万円相当)と交換した場合、利益は以下のように計算される。
- 取得単価:総購入額400万円÷総購入数量4枚=100万円
- 利益の額:売却金額200万円-(取得単価100万円×0.1枚)=10万円
※イーサリアム200万円への交換=売却金額200万円とみなされる
マイニングで仮想通貨を入手したとき
ビットコインは「マイニング」によって取得できるケースがあるが、これも課税対象だ。取得時点の時価が利益となる。取得単価はないが、マイニングに要した費用を差し引くことが可能だ。
なお「ハードフォーク」等で分裂し、新しい仮想通貨を取得した場合は課税されない。ただしその場合の取得単価は0円となるため、売却時の税負担は比較的大きくなるだろう。
確定申告の方法
オンラインまたは郵送・窓口で申告書を提出
確定申告は、申告書を提出して行う。提出方法は、パソコンなどで作成した申告書データをオンラインで提出する「e―Tax(イータックス)」か、紙の申告書を郵送または税務署などの窓口に直接提出する方法がある。
いずれの方法で提出する場合も、申告書は国税庁ホームページの「確定申告書等再生コーナー」で作成可能だ。ガイダンスに沿って数値を入力すれば半自動的に作成されるため、確定申告の経験がなくても比較的容易だと考えられる。
なお、2019年分からスマートフォン上で確定申告が完結する「スマホ申告」ができるようになった。スマートフォンで申告書を作成でき、e―Taxを通じて提出まで可能だ。以前のe―Taxはマイナンバーカードを読み取るためのカードリーダーを用意する必要があったが、現在はスマートフォンで代用できる。
ただしマイナンバーカードをスマートフォンで読み取るためには、マイナンバーカードの利用者証明用電子証明書を取得する必要があること、その際に設定した4桁のパスワードを入力する必要があることに留意してほしい。
また、スマホ申告は「マイナポータルアプリ」をインストールしたスマートフォンが必要だ。マイナポータルアプリは、iOS 14以上のiPhone7以降の機種または所定のAndroid端末(2023年1月時点で417機種)で対応している。
申告の時期は2月中旬から3月中旬
確定申告は、原則として翌年の2月16日から3月15日に行う。例えば2022年分の所得を申告する場合、2023年2月16日から3月15日が申告期間だ。
納税も申告期限までに行う必要があるが、銀行口座から振り替えて納める場合は猶予がある。2022年分の税金を振替納税で納める場合、2023年4月24日に口座から引き落とされる。
ただし申告を通じて還付金が発生する場合、翌年から5年の間に還付申告を行わなければ還付金を受け取ることはできない。
申告漏れ、無申告のペナルティ
申告期限までに確定申告を行わず、税務調査でその事実が発覚した場合、ペナルティとして「加算税」と「延滞税」が発生する可能性がある。前者は納めるべき税金に対して、後者は納付が遅れることとなった期間に対して課される。
加算税
加算税は、納めるべき税金に対し、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%を乗じて計算される。例えば納めるべき税金が100万円の場合、加算税は17.5万円だ(7.5万円+10万円)。
なお、税務調査前に自主的に申告した場合、加算税は納めるべき税額の5%に減じられる。ただし、その自主的な申告が調査前の通知を受け取ったあとだった場合、加算税は納めるべき税金に対し、50万円までは10%、50万円を超える部分は15%となる。
延滞税
延滞税は、法定申告期限(原則としてその年の翌年3月15日)の翌日から完納する日までの日数に応じ、所定の率を納めるべき税金にかけて求められる。所定の率とは、延滞が2か月までの期間は年率7.3%(※1)、2か月を超えることとなった期間は年率14.3%(※2)だ。
※1.または「延滞税特例基準割合+1%」といずれか低い方
※2.または「延滞税特例基準割合+7.3%」といずれか低い方
※延滞税特例基準割合:銀行の短期貸出金利の平均として財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算したもの
暗号資産と納税に関するよくある質問
暗号資産取引における損失の取り扱いは?
暗号資産取引で損失が発生した場合の取り扱いについて解説する。ある納税者が暗号資産取引を行い、その結果損失が生じたとする。この場合、損失を給与所得など他の所得から差し引く、すなわち通算することはできない。
所得税法において、他の所得と通算可能な損失は、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得に限定されている。雑所得はこれらのカテゴリーには含まれないため、雑所得に基づく損失が生じたとしても、他の所得から差し引くことはできない。
したがって、暗号資産取引による損失は、税務上の取り扱いにおいて特別な配慮がされていない。この点に注意し、暗号資産取引を行う際には、税務面での理解を深めておくことが求められる。適切な申告を行うためには、損失の計算や記録を確実に行うことが重要である。これにより、納税者は今後の取引におけるリスクを把握し、賢明な投資判断を下す助けとなる。
暗号資産の証拠金取引に関する課税の取り扱い
暗号資産の証拠金取引が外国為替証拠金取引(FX)と同様に申告分離課税の対象となるかについて考察する。結論として、暗号資産の証拠金取引によって生じる所得は、申告分離課税の適用を受けない。そのため、所得は総合課税の対象として申告する必要がある。
具体的に言えば、FXは金融商品取引法に基づく金融商品先物取引に分類され、申告分離課税の対象である。一方、暗号資産の証拠金取引は同じく金融商品先物取引に該当するが、租税特別措置法の規定により、申告分離課税の適用から外れている。このため、暗号資産の証拠金取引による所得は、総合課税のルールに従って申告されることとなる。
納税者は、この違いを理解し、暗号資産取引を行う際には、適切な課税方法を選択することが重要である。総合課税が適用される場合、他の所得と合算して課税されるため、正確な計算と申告が求められる。これにより、納税者は税務上のリスクを軽減し、よりスムーズな取引が可能となる。
暗号資産の取得価額や売却価額の確認方法
暗号資産取引を行ったものの、取引履歴を残していないために取得価額や売却価額が不明な場合、取得価額や売却価額を確認するための方法は、次の2つのパターンに分けられる。
まず、国内の暗号資産交換業者を通じた取引について。平成30年1月1日以降の取引に関しては、国税庁が暗号資産交換業者に対して「年間取引報告書」の交付をお願いしている。この報告書には、年中の購入数量、購入金額(取得価額)、売却数量、売却金額が記載されている。もし年間取引報告書が手元にない場合は、暗号資産交換業者に再交付を依頼することが必要である。(なお、平成29年以前の取引については、この報告書が交付されないことがあるため、次の方法を利用することになる)
次に、国外の暗号資産交換業者や個人間取引の場合について。この場合、暗号資産の取得価額や売却価額は、購入時の銀行口座の出金状況や、売却時の入金状況から確認することが可能だ。また、取引履歴や暗号資産交換業者が公表する取引相場を参考にすることも有効となる。特に個人間取引では、主に利用している交換業者の取引相場を基に確認することが望ましい。
さらに、確定申告後に正しい金額が判明した場合には、修正申告や更正の請求を行うことができる。なお、売却した暗号資産の取得価額については、売却価額の5%相当額とすることが認められている。例えば、500万円で売却した場合、その取得価額を25万円とすることが可能である。これにより、取引の透明性を保ちつつ、適切な納税が実現できる。
参考文献
国税庁 総合課税制度
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2220.htm
国税庁 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm
国税庁 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1521.htm
国税庁 所得税の税率
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
LINE BITMAX 第3回:暗号資産の損益計算 ~移動平均法・総平均法とは~
https://bitmax-mag.line.me/archives/26197140.html
国税庁 [手続名]所得税の暗号資産の評価方法の届出手続
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/21kasou.htm
東京都主税局 個人住民税の所得割
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/kojin_ju.html#gaiyo_02
国税庁 暗号資産に関する税務上の取扱い及び計算書について
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/kakuteishinkokukankei/kasoutuka/index.htm
エアリアル・パートナーズ Gtax
https://crypto-city.net/
クリプタクト CRYPTACT
https://www.cryptact.com/about/
クリプトリンク CryotiLinC
https://cryptolinc.com/
国税庁 給与所得控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm
国税庁 基礎控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1199.htm
国税庁 社会保険料控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1130.htm
協会けんぽ 令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r4/ippan/r40213tokyo.pdf
国税庁 給与所得者で確定申告が必要な人
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900_qa.htm
GMOコイン ビットコイン(BTC)には税金がかかる?納税はどうなる?
https://coin.z.com/jp/column/tax/
国税庁 暗号資産に関する税務上の取扱いについて(2021年12月分)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0022012-033.pdf
国税庁 暗号資産に関する税務上の取扱いについて(2022年12月分)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq_03.pdf
国税庁 スマートフォン × マイナンバーカードでe-Tax!進化するスマート申告!
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/r1_smart_shinkoku/index.htm
国税庁 スマートフォンとマイナンバーカードを使って申告される方へ
https://www.e-tax.nta.go.jp/topics/topics_2021_sp.htm
マイナポータル マイナポータルアプリに対応しているスマートフォン等を教えてください。
https://faq.myna.go.jp/faq/show/2587?category_id=3&site_domain=default
国税庁 主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/24200042/noufu_kigen.htm
国税庁 税金の納付
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/qa/10.htm
国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2024.htm
国税庁 延滞税の計算方法
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai.htm