この1年で、一般の人々が暗号資産（仮想通貨）に抱く感情は大幅に悪化しただろう。そのため、少なくとも市場と市場を動かす原動力がもっと確実になるまで、暗号資産には近づかないでおこうという考え方が生まれるかもしれない。
しかし長期的な視点で考えると、異なる見方ができる。暗号資産はまだ新しいテクノロジーであり、新しいテクノロジーには必ず普及曲線が存在する。そして、それを評価する良い方法が「メトカーフの法則」だ。ネットワークの効果は、ネットワーク内のノード数の2乗になるというもので、例えば、ネットワークに10個のノードがある場合、その固有の価値は100（10 x 10）になる。
暗号資産が進化の初期段階にあると考えると（実際、確かにそうだ）、暗号資産は飛躍的に成長する、他には類を見ない潜在能力を秘めている。たとえ話として完璧ではないが、アマゾン株の購入に最も厳しかった時期は、同社が停滞していた2000年代。しかし振り返れば、もちろん買い時だった。
その潜在能力に加えて、暗号資産とブロックチェーンは分散化、セキュリティ、透明性、効率性、イノベーション、金融包摂といった特徴によって定義されるようになっている。これらの特徴の多くは、投資のためにマクロ経済状況を精査する際には魅力的に映る。ほぼすべての資産クラスが下落し、伝統的な60/40のポートフォリオが過去100年以上で最悪のパフォーマンスとなった厳しい2022年が過ぎ去った今、ポートフォリオを再構築し、成長させるためには、将来の可能性に心を開くことが重要だ。
暗号資産とブロックチェーンの可能性
アメリカでは大きな課題が山積している。過去最高水準の債務残高対GDP比を抱え、ドルの価値低下は続き、高齢化は終わりが見えない。
このような課題を克服するためのチャンスをいかにして見つければ良いだろうか？
経済はしばしば、経済状況を反映するまでに時間がかかることを認識することが重要だ。収益の悪化、信用収縮、米連邦準備制度理事会（FRB）にまつわる不透明感などが予想される。その1つの解決策がブロックチェーンと暗号資産だ。
暗号資産への投資が理に適っている理由はいくつかある。分散投資、高い成長可能性、最先端のテクノロジーであること、インフレに対するヘッジ、セルフカストディなどだ。問題は、ポートフォリオのどれくらいの割合を暗号資産に割り当てるべきかだ。
米証券取引委員会（SEC）がビットコイン（BTC）現物ETF（上場投資信託）の承認を頑なに拒むなか、単一の暗号資産のみへの投資や第三者によるリスクを回避し、24時間365日動く暗号資産市場で遅れを取らないようにするには、どのような選択肢があるだろうか？
ウォーレン・バフェット氏はかつて「他の人が貪欲な時は警戒し、他の人が警戒している時は貪欲であれ」と語っている。
今、まさにそんな時だろう。長い将来を見据えるためには、私たちは日常的なノイズから自由にならなければならない。暗号資産は、5年後、10年後、15年後、さらにその後も上昇を続けるだろうか？ 私はそうなると考えているし、アマゾンに2000年代初頭に投資することが賢明だったことと同じように、暗号資産を今リサーチし、ポートフォリオの一部を割り当てることは思慮深い行動だと考えている。
暗号資産とブロックチェーンは、金融取引の管理と安全の確保、透明性と説明責任の向上、幅広い業界でのイノベーションの実現のための新しい方法として重要だ。
不確実性のヘッジ
債務はグローバルエコノミーを支えている。債務が増え、信用が引き締められることに伴ない、市場のあらゆる側面には困難が生まれる。最終的には法定通貨の価値を下げることになる。
米ドルは今のところ、世界の基軸通貨であり続けているが、将来もそのままという保証はない。究極的には、あらゆる法定通貨が価値を下げる。そのようなシステムになっているからだ。
投資家としては、購買力を維持することが重要だ。この先、60/40ポートフォリオや、伝統的な資産運用戦略では十分ではないだろう。だからこそ、大きなチャンスを逃さないためにも、暗号資産に投資をすることが、この先の責任ある決断となる。
資産クラスとしての暗号資産は、国際的な流動性と直接結びついている。この蛇口を閉めることはできない。マネーサプライが時間とともに増加するに伴い、そのような環境から利益を上げられるよう、準備を整える必要がある。
「在宅勤務」が当たり前になった新しい世界で、商業不動産はどのようなポジションを占めることになるのだろうか？
オフィスの空室率は、2023年第1四半期に過去最高の13%近くまで上昇。2008年の金融危機後よりも高くなった。商業不動産のローンは、銀行の融資の40%近くを占めている。この問題と、スマートフォンが加速させた銀行の取り付け騒ぎという新たなリスクが、システムに圧力を加え、事態をさらに複雑にしている。暗号資産はそうした事態に対処するためのツールを拡大してくれる。
システムが債務を基盤としていること、パウエルFRB議長が大きな課題を抱えていることを考慮すれば、代替的な投資の選択肢を検討すべき時。単独のソリューションが万能薬となることはないが、戦略を組み合わせることで投資を成功させる可能性は高くなる。
｜翻訳・編集：山口晶子、増田隆幸
｜画像：Shutterstock
｜原文：If Crypto Is the Future, Advisors Need to Embrace It Now
