ビットコイン(BTC)トレーダーは、6月14日(日本時間15日)のアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)の会合を前に守りの姿勢をとっている。FRBは金利を据え置く一方で、一部のオブザーバーが「タカ派的休止」と表現した動きで将来の引き上げの可能性を保持しておくと見られている。
連邦公開市場委員会(FOMC)は、アメリカ東部時間午後2時(日本時間15日午前3時)に金利を発表する予定だ。その30分後にジェローム・パウエル(Jerome Powell)議長が記者会見する。
フェデラルファンド(FF)先物によると、金利トレーダーは、FRBが2022年3月から5%引き上げてきた基準金利を5~5.25%のレンジで安定的に維持すると予想している。急激な利上げサイクルは、バランスシートの縮小と相まって、昨年、暗号資産(仮想通貨)を含むリスク資産を不安定にさせた。
しかし、FRBは今後数カ月間、引き締めを継続する可能性を示すと予想される。報道時点では、FF先物は7月にFRBがさらに0.25%利上げする確率は50%強だと示している。そして、年末からの利下げがフォワード・レート・カーブに織り込まれている。
シンガポールに拠点を置く暗号資産取引大手QCPキャピタル(QCP Capital)が追跡したオプションのリスクリバーサルデータによると、ビットコインに関連するプット(弱気の賭け)は、FRBの会合に向けて強気のコールよりも高値で取引されている。プットへのバイアスは、市場の神経質なムードを示している。
QCP キャピタルのマーケットインサイトチームは、13日に発表したアップデートで、「FOMCでは、彼らが『タカ派的休止』をする、つまり、今回の会合で一時停止するがタカ派メンバーをなだめるために金利予測の中央値を上げて、継続的な引き上げバイアスを示すと考える」と述べた。「今週のリスクリワードバランスは、BTCとイーサリアム(ETH)のプットのロングが好ましい」。
アメリカの5月の総合消費者物価指数(CPI)は4%と2年ぶりの低水準に落ち込み、現行のFF金利を下回った。QCPによると、これによってFRBは14日の会合で金利を安定的に維持する余地が生まれたという。
しかし、総合CPIとFRBが好むインフレ指標であるコアPCEはともに、FRBが長年掲げてきた目標値である2%を大きく上回っており、FRBが引き締めサイクルを終わらせる余地は少なくなっている。
その上、実質金利とも呼ばれるプラスのインフレ調整金利は、しばしばゴールドやビットコインのようなゼロ利回りの資産に重くのしかかる。
「プラスの実質金利は一般的にそのような資産には不利であり、一般的にBTCは実質利回りと負の相関がある」とQCPは付け加えた。
これまで一部の暗号資産トレーダーは、FRB後の株式市場の動きを見て、計画を決定してきた。しかし、ビットコインとS&P500およびナスダックの株式指数との相関関係が最近弱まっていることから、今回はその戦略が通用しないかもしれない。
投資会社ヴァルキリー・インベストメント(Valkyrie Investments)の調査責任者であるジョシュ・オルシェビッチ(Josh Olszewicz)氏は、12日に発表された週間マーケットレビューで、「FRBの利上げ停止は、すでにS&P500を年初来高値に押し上げた株式強気派に祝福されそうだ」と述べている。「ビットコインとイーサリアムは、ここ数週間、リスク・オン・エクイティ環境の恩恵を受けておらず、潜在的に、規制措置の保留に関する不安感をほのめかしている」。
暗号資産流動性ネットワークParadigmの機関投資家販売ディレクター、デビッド・ブリッケル(David Brickell)氏によると、タカ派的停止に対するコンセンサスは、パウエル議長が市場を出し抜くのに苦労し、リスク資産の回復を可能にするかもしれないという。
ブリッケル氏は米CoinDeskに「コンセンサスはタカ派的停止であるため、パウエル氏が市場を出し抜くにはかなりハードルが高いかもしれない」と語った。「コミュニケーションの観点からは、一時停止しているときにタカ派に見えるのは難しいので、私の見方は期待に反してハト派と解釈されるというものだ。そしてレート(利回り)は下降し、BTCは上昇するだろうが、それが大きな動きを誘発するとは思えない」。
CoinDeskのデータによると、ビットコインは記事執筆時点ではあまり動きがなく、2万5940ドル付近で取引されている。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:QCP Capital
|原文:Fed Preview: Bitcoin Market Skews Bearish as Analysts Anticipate ‘Hawkish Rate-Hike Pause’