大幅下落から1年──ビットコインとイーサリアム、変わらないこと、変わったこと

ちょうど1年前、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)(BTC)をはじめ、暗号資産市場は大きく下落した。あれから何が起きたのか、今回は何が違うのか。

暗号資産の現在の環境は、価格が急落した1年前とかなりの類似点がある。だが根本的な違いもあり、市場は1年前より良い状態にあるようだ。振り返ってみよう。

1年前:ビットコインは2019年以降で2番目に大きな下落

2022年6月13日から24時間のうちに、暗号資産レンディングを手がけるセルシウス・ネットワーク(Celsius network)が顧客による引き出しを一時停止し、暗号資産ヘッジファンドのスリー・アローズ・キャピタル(Three Arrows Capital:3AC)が自社の債務超過を示唆した。

ビットコインは15.4%下落、今でも1日としては2019年以降で2番目に大きな下落となっている。

イーサリアムも16.7%下落、2020年以降で6番目に大きな下落となり、影響が拡大する懸念で市場は動揺した。

インフレ懸念もすでに広がっていた。2022年6月16日、米連邦公開市場委員会(FOMC)は、約30年ぶりの大幅な引き上げとなる政策金利の0.75%引き上げを決めた。

変わらないこと

昨年と同じように、暗号資産の運命は、2つの組織の運命と絡み合っているようだ。昨年はセルシウスとスリー・アローズ・キャピタル。今年はバイナンスとコインベースだ。

投資家は、裁判の結果とトークンが証券か、コモディティか、あるいは他のなにかかどうかの判断次第で、多くの暗号資産の運命が決まると考えている。提訴の中でSECが言及した19の暗号資産の多くは先週、20%以上下落した。

バイナンスとコインベースは、SECの提訴後、すでに財政的に苦しんでいるようだ。とはいえ、両社からの資金流出は先週急増したものの、どちらも支払能力に問題があるようには見えない。バイナンスは顧客資金を混同したという容疑に問われ、コインベースはSECが新規株式公開を承認したにもかかわらず、未登録証券を販売したという容疑に問われている。

こうした法的措置は、市場のバランスを崩す可能性が高いと見られている。

変わったこと

まず、ビットコインとイーサリアムは2022年6月13日以降、それぞれ19%、44%上昇している。

関係も変化している。ビットコインとイーサリアムは、SECの提訴後、20%下落したコインベース株の動きを反映していない。

ビットコインとイーサリアムは暗号資産企業の動きから切り離されている。これは昨年にはなかったことだ。

具体的にはビットコインとイーサリアムは、コインベース株との相関関係がこの1年でそれぞれ30%、17%低下している。

またSECが「証券」と見なしたトークンのリストに、ビットコインとイーサリアムを含めなかったことは、2つの暗号資産はSECの権限外に置かれるべきだということの最新の証拠となった。

マクロ経済要因は、2つの暗号資産取引所にまつわるリスクよりも重視され、13日に発表された米消費者物価指数(CPI)のようなデータは、SECの動きよりも間違いなく注目されている。

5月の米CPIは、前年同月比4%増となり、予想の4.1%をわずかに下回った。インフレの緩和を踏まえて、米連邦公開市場委員会(FOMC)は11会合ぶりに利上げの一時停止を決定した。

先週の劇的な出来事、1年前の出来事、そしてこの数カ月の間に起きた多くの出来事は、ときにビットコインとイーサリアムに影響を与えることはあっても、ビットコインとイーサリアムが崩壊することは決してなかった。

多くの変化に直面しながら、ビットコインとイーサリアムはレリジエンス(回復力)を増しているようだ。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:2022年6月1日からのビットコインの価格推移(CoinDesk)
|原文:Bitcoin, Ether Remain Resilient After Binance, Coinbase Suits, and Amid Long-Running Crypto Industry Turmoil