中央銀行等によるデジタル通貨の共同実験が行われ、金融当局と民間セクターを結びつけ、デジタル通貨の小売決済を促進する方法が検証された。
この実験では、世界の中央銀行を束ねる国際決済銀行(BIS)のロンドン・イノベーション・ハブとイングランド銀行が、オフライン決済を含む30以上の中央銀行デジタル通貨(CBDC)の使用例をテストするために、33のアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)を開発した。
APIは、2つ以上のコンピュータプログラムが相互に通信し、データを共有することを可能にする。
「この『プロジェクト・ロザリンド』では、APIレイヤーがどのようにリテールCBDCをサポートし、さまざまなユースケースを通じて安全で確実な決済を促進するかを検討した」と、BISのロンドン・イノベーション・ハブの責任者、フランチェスカ・ホップウッド・ロード(Francesca Hopwood Road)氏はプレスリリースで述べている。
イングランド銀行は現在、デジタルポンドについて協議しており、将来的に必要となる可能性が高いとしている。同行はその協議の中で、潜在的なデジタルポンドのための集中型台帳とAPIをホストすると定めている。APIは、民間企業が台帳にアクセスし、自動決済などのサービスを提供することを可能にする。
ホップウッド・ロード氏は米CoinDeskのインタビューで、プロジェクト・ロザリンドについて「市場が反応して関与する可能性のあるさまざまな方法を網羅している」と述べた。
今回の実験では、QRコード、携帯電話、スマートカードなどを利用したオンライン、オフライン、店舗での支払いなど、多種多様な支払いオプションがテストされたという。また、このプロジェクトでは、マイクロペイメントの促進についても検討された。
「ユースケースの1つは子どもと親の財布に関するもので、どのように支払いを行うことができるか、責任ある支出を実現する方法、親が子どもにポケットマネーを割り当てる方法、そのお金を異なる場所で使用する方法など、さまざまなことを検討した」とホップウッド・ロード氏は述べている。
この実験では、APIレイヤーがさまざまな台帳に対応できることもわかったという。
BISは4月、同じくイングランド銀行と共同で、銀行間取引の実行に分散型台帳技術を使用する実験に成功した「プロジェクト・メリディアン」に関する報告書を発表している。
BISは、現時点での「非常に重要な」CBDCの話題に貢献するために、さまざまな分野での実験を模索しているとホップウッド・ロード氏は述べている。CBDCの発行を検討する国も増えており、ナイジェリアやバハマなど、いくつかの国はすでに発行している。
「イノベーション・ハブで行ったさまざまな実験を見ると、CBDCの領域を卸売であれ、小売であれ、クロスボーダー、オフライン、セキュリティなどさまざまな次元で探求している」とホップウッド・ロード氏は述べている。
「これらはすべてCBDCの研究の非常に重要な要素であり、中央銀行がますます注目し、注意を向けている分野だと思う」と彼女は付け加えた。
ブロックチェーンネットワークのクアント(Quant)は6月16日に「プロジェクト・ロザリンド」のベンダーチームの一員として果たした役割を発表した。クアントはプレスリリースで、プロジェクトでデジタルソリューションプラットフォームUSTと提携したと述べ、「クアントがインフラとブロックチェーンプラットフォーム、安全なスマートコントラクト、中央銀行台帳の相互運用性を提供し、USTがフロントエンドのロザリンドAPIを構築した」と述べている。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:BISのロンドン・イノベーション・ハブの責任者、フランチェスカ・ホップウッド・ロード氏(BIS)
|原文:Central Banks Successfully Test Over 30 CBDC Use Cases, Including Offline Payments