金融大手がビットコインETFを申請するシンプルな理由

金融機関は暗号資産(仮想通貨)を新鮮な眼差しで捉え直し、殺到している。

帰ってきた機関投資家

世界最大の資産運用会社ブラックロック(BlackRock)は先週、ビットコイン(BTC)ETF(上場投資信託)を申請。今週は、同じく大手資産運用会社のインベスコ(Invesco)もビットコインETFを再申請した。さらに、ウィズダムツリー(Wisdom Tree)も再申請を行った。ウィズダムツリーの最初の申請は、2022年に米証券取引委員会(SEC)が却下している。

その他、ビットコイン以外のニュースとしては、フィデリティ・デジタル・アセッツ(Fidelity Digital Assets)、チャールズ・シュワブ(Charles Shwab)、シタデル・セキュリティーズ(Citadel Securities)が支援する暗号資産取引所がアメリカでスタートし、ドイツ銀行はドイツでデジタル資産ライセンスを申請した。

そう、金融機関が戻ってきた。だがなぜ、運用資産残高10兆ドル(1400兆円)の資産運用会社ブラックロックや、1兆5000億ドルのインベスコは、再びビットコインETFの時がやって来たと判断したのだろうか? 多くの人が複雑で陰謀論的な仮説を立てている。

例えば、ブラックロックは何らかの理由でコインベース(Coinbase)を救済しようと必死になっている。大手金融機関はSECの代わりにセルフカストディされるビットコインを人々の手から遠ざけようとしている。ウォール街は暗号資産業界を自分たちよりあまり先に行かせるわけにはいかないと考えている、といった仮説だ。

他にもあるが、はるかにシンプルなものもある。金融機関はお金儲けが好きで、ビットコインETFの提供は利益をあげる方法というものだ。

ブラックロックの動機

ここで、ブラックロックに注目してみよう。ブラックロックには顧客がいて(実際にいる)、顧客はブラックロックに預かってもらいたいお金を持っており(実際に持っている)、お金を管理してもらうことに対してブラックロックにお金を払っても良いと思っており(実際に思っている)、ブラックロックは顧客の話に耳を傾けている(実際にほとんどの場合、耳を傾けている)と想定してみよう。

そうすると「暗号資産へのエクスポージャー」を求める顧客の需要が十分に存在し、顧客に暗号資産へのエクスポージャーを提供することには価値があると考えることは難しくない。もちろん、その対価として手数料を受け取る。

ブラックロックが、ビットコインETFを顧客に暗号資産へのエクスポージャーを提供するうえで最もハードルが低い方法と考えたことは別の話。ブラックロックは申請が承認された場合のみ、お金を稼ぐことができる。これまでのところ、10以上のビットコインETF申請のすべてがSECに却下されている。しかし、今回のブラックロックの申請は、SECが求める市場監視と情報開示の要件を満たすだろうと判断できる理由がある。

確かに、ビットコインETFが最もハードルが低いのは、CoinDeskのデイビッド・Z・モリス(David Z. Morris)が指摘したとおり、SECが「暗号資産業界の大地を焼き、塩を撒いてしまう」ことに専念しているからだ。これは一方で、ビットコインには問題がなく、問題は証券と名指しされた暗号資産にあることを明らかにしている。

だがまた、ブラックロックが特別にビットコインや暗号資産全般を好んでいるわけでもない。事実、ブラックロックのラリー・フィンク(Larry Fink)CEOはかつてビットコインを「マネーロンダリングの指標」と呼んだ。ビットコインETFが承認されれば、ブラックロックは将来、他の暗号資産関連プロダクトを手がけるかもしれない。

シンプルな答え

私としては、ウォール街でおそらく最もパワフルな企業であるブラックロックは、承認されると考えていなければ今回の申請は行わなかったと考えている。

逆に、より陰謀論的な考え方をすれば、ブラックロックですらビットコインETFを承認してもらえなかったことで、ビットコインをまったく魅力のないものに見せようとする秘密の策略があるのかもしれない。

もしかしたら、まだ考え方が甘いのかもしれない。ここに来て、ビットコインETFの申請が続いていることには、何か知らないうちに進んでいた理由があるのかもしれない。しかし、結局はすべて1つのシンプルな説明で片付けることができる。

金融機関はお金儲けが好きで、ビットコインETFはその手段だ。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:: Sean Pavone / Shutterstock.com
|原文:A Straightforward Explanation for Why Financial Giants Want to Issue a Spot Bitcoin ETF