シンガポール金融管理局(MAS)が7月3日に発表したところによると、シンガポールの暗号資産(仮想通貨)サービスプロバイダーは、年内に顧客資産を法定信託に預け、安全に保管する必要がある。
この要件は、MASが2022年10月に開始された顧客保護の強化に関するパブリックコンサルテーションを受けた後に導入されることになった。
MASは「これにより、顧客資産の損失や不正使用のリスクを軽減し、DPT(デジタル決済トークンまたは暗号資産)サービスプロバイダーが倒産した場合の顧客資産の回収を促進する」と述べている。
MASはまた、暗号資産サービスプロバイダーが個人顧客によるトークンの貸し出しやステーキングを促進することを制限したが、機関投資家や適格投資家には引き続きサービスを提供することができる。
シンガポールの中央銀行は、最新の要件の実施に焦点を当てた法改正に関する一般からの意見を求めている。
ブロックチェーン分析企業TRM Labsのシニア政策アドバイザーで、元MASであるアンジェラ・アング(Angela Ang)氏は「今回の暗号資産へのリテールアクセスの強化は、シンガポール市場を知る者にとっては驚くことではない」と述べた。「MASが、顧客資産に独立したカストディアンを要求するなどの特定の提案を保留する決定を下したことは、業界の声に耳を傾け、サードパーティーのカストディアンが少ないなどの現実的な考慮事項に敏感であることを示している」。
アング氏はまた、シンガポールの要件は他の決済サービスプロバイダーと同じであり、香港の規則ほど厳しくはないと電子メールで米CoinDeskに語った。シンガポールは現在、香港の要件である98%とは異なり、顧客の暗号資産の90%を暗号資産ウォレットで保有することを要求しているが、香港とは異なり、コールドウォレットはオンショアである必要はない。
MASは、暗号資産エンティティが個人顧客向けにトークンの貸し出しやステーキングを促進することを禁止することについては、将来的に立場を変える可能性があることを示した。
「一部の回答者は、DPTサービスプロバイダーが個人顧客の同意とリスク開示のもとでこうした活動を提供することを認めるよう提案したが、一方で、こうしたハイリスクで投機的な活動の禁止を主張する回答者もいた」とMASは述べた。「MASは市場の動向と消費者のリスク意識の変化を注視し、我々の措置がバランスの取れた適切なものであることを確認するための措置を講じる」。
シンガポールが既存の伝統的な金融システムを改善するために業界の技術支援にコミットしていることは、暗号資産業界の悪行に対しては「残忍かつ容赦なく厳しく」対処するというシンガポールの表明した目的と密接に関係している。先月、MASはトークン化された暗号資産のためのオープンで相互運用可能なネットワークを設計する方法とデジタルマネーの使用基準も提案した。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
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|原文:Singapore’s MAS Orders Crypto Firms to Keep Customer Assets in a Trust by Year-End