暗号資産はインターネットに匹敵し、50億人のユーザーを獲得できるか?

インターネットの普及と暗号資産(仮想通貨)の普及を比較したこのグラフを見たことがある人は多いだろう。


暗号資産は、1990年代のインターネットと同じような成長ペースで新規ユーザーを増やしており、その将来についての驚くべき予測を後押ししている。

インターネットは1990年には基本的に利用者がいなかったが、今では50億人に達し、33年間で世界の人口の62.5%を獲得した。暗号資産も同じようなカーブを描くとすれば(人口が増加しないと仮定した場合)、2047年頃に50億人のユーザーを獲得し、人口増加が予測される場合には60億人に達するだろう。

しかし、興奮し過ぎる前に、それは楽観的すぎると言いたい。

インターネットは比較対象としては広すぎる。インターネットは私たちの生活のあらゆる場面で使われている。暗号資産にも多くのユースケースがあり、Web3には希望があるが、平均的な消費者にとって暗号資産はリスクの高い投資か価値の移転手段だ。

比較可能なユースケースから消費者の行動に着目し、ボトムアップ・アプローチで普及について分析してみよう。

金融サービス・テクノロジーの普及を考えてみよう。

  • モバイル・バンキング:1997年にテキスト・メッセージによるバンキングが導入され、2007年には最初のモバイル・バンキング・アプリが登場した。2021年、マッキンゼーは、全銀行顧客のうち、モバイル・バンキングを利用しているのは北米では52%、西ヨーロッパでは47%、中央ヨーロッパでは45%に過ぎないとレポートで述べた。これは、預金口座保有者の56%がモバイル・バンキングを積極的に利用しているとした2023年のCornerstone Advisorsのレポートと一致している。だが、世界の人口の76%しか銀行口座を持っていないことを忘れてはならない。
  • 株式投資:調査会社ギャラップによるとアメリカ人の61%が株式を保有しており、ピュー・リサーチによると、退職金口座以外で株式を保有しているアメリカ人は35%に過ぎない。対面でのセールスは重要で、JPモルガン・チェースによると初めて投資する人の85%は銀行員の紹介によるものだ。

これらの数字が物語るものは何だろう?

私たち金融業界の多くが基本的な金融テクノロジーと考えるものを人々は何十年もかけて導入する。そして、暗号資産は基本的なものとは言えない。

登場から26年経っても、世界の50%以下しかモバイル・バンキングを利用しておらず、さらにアメリカ人の約3分の1しか積極的に株式投資をしていないこと(ニューヨーク証券取引所の開設は1792年)を考えると、暗号資産がアーリー・アダプターを超えて成長するという予測に疑問を抱かざるを得ない。

人口が増えても、2047年までに暗号資産ユーザーが50億人に達することは難しいかもしれない。より詳細な分析が必要だが、伝統的な銀行システムのデジタル化が進むなか、より控えめに見積もって20億人〜30億人だろう。

覚えておいてほしいことは、暗号資産は、まだ進歩しており、十分に普及していない現在の方法を打ち負かす(あるいは加わる)必要があるということだ。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:World Bank, Crypto.com
|原文:Can Crypto Match the Internet and Hit 5B Users?