中央集権型のステーブルコインは暗号資産(仮想通貨)取引の主流を占めているが、最近の混乱は市場が準備金の透明性に欠けるステーブルコインに大きく依存していることを示しており、TrueUSD(TUSD)が最大のリスクとなっていると暗号資産市場調査企業のカイコ(Kaiko)がレポートで指摘した。
カイコのデータによると、13日の時点で、中央集権型暗号資産取引所の全取引の74%にステーブルコインが使われており、法定通貨を組み入れているのはわずか23%だった。
TUSDの取引高が急増
世界最大の暗号資産取引所であるバイナンス(Binance)は、今年初めにバイナンスUSD(BUSD)の発行停止を命じられた後、TUSDの取引手数料をゼロにして利用を促進させていた。これを受けてTUSDは急上昇した。
カストディアン・パートナーであるプライム・トラスト(Prime Trust)社の破綻と準備金報告の混乱により最近厳しくチェックされているが、TUSDの取引高は3カ月で1%未満から19%へと劇的に増加した。過去に準備金の一部が中国のコマーシャルペーパーになっていたテザー(USDT)は、取引高の70%のシェアを占めている。
ステーブルコインは、暗号資産エコシステムの重要な要素となっており、政府発行の法定通貨からの取引とオンボーディングが容易になる。暗号資産データ会社CCDataによると、ステーブルコイン全体の時価総額は1280億ドル(約17兆9200億円、1ドル140円換算)に上る。
大規模ステーブルコインは混乱乗り切る
規模の大きいステーブルコインはいずれも、過去数カ月間の混乱の時期を耐えてきた。2月にニューヨーク州の規制当局がパクソク(Paxos)に対し、当時時価総額第3位のステーブルコインだったBUSDの発行停止を命じた。翌3月、シリコンバレー銀行の破綻によりUSDコイン(USDC)の現金準備金の相当部分が一時的に凍結され、メイカー(Maker)のステーブルコインであるDAIに影響を与えた。先月、テザーは主要なステーブルコイン流動性プールでの売り圧力に耐え、TUSDはプライム・トラストの破綻を乗り切った。
準備金の透明性が欠如
カイコの調査責任者であるクララ・メダリー(Clara Medalie)氏は、こうした不安定な時期によって、暗号資産市場がいかにステーブルコインのリスクと脆弱性にさらされているかが浮き彫りになったと指摘。「暗号資産市場は、準備金に関する透明性が欠けていることが多い中央集権型のステーブルコインに大きく依存している」と述べた。
メダリー氏は、「サークル(Circle)社はUSDコインの透明性を向上させるために多大な努力をしてきたが(テザー社も過去1年間ある程度の努力をしてきた)、準備金や企業構造に関する情報がほとんど提供されておらず、比較的知名度の低いTUSDが現在最大のリスクとなっている」と警鐘を鳴らした。
TUSDの準備金は法定資産
時価総額30億ドル(約4200億円)のTUSDはドルペッグのステーブルコイン。2020年末に知名度の低いアジアのコングロマリット、テクテリクス(Techteryx)社に買収され、知的財産が引き継がれた。同社は、市場操作の疑いで米証券取引委員会(SEC)から提訴されたトロン(Tron)創設者ジャスティン・サン氏との関係に関する報道を否定した。
チェーンリンク(Chainlink)の準備金証明技術によると、TUSDの準備金は法定資産だ。この技術は、ネットワーク・ファーム(Network Firm)の準備金証明から受け取ったデータに依存している。ネットワーク・ファームは、破綻した暗号資産取引所FXTの米国法人であるFTX.USと協力する会計チームがブランド名を変更したものだ。
|翻訳:CoinDeskJAPAN
|編集:林理南
|画像:Kaiko
|原文:Crypto Markets ‘Highly Dependent’ on Stablecoins Lacking Transparency, TUSD Poses Risk: Kaiko