SECのゲンスラー委員長、予算増額を要求──暗号資産は「開拓時代の西部」

米証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長は19日の米上院歳出委員会で、SECの23億6400万ドル(約3309億6000万円、1ドル140円換算)の予算を7200万ドル(約100億8000万円)増額するよう要請。特に「コンプライアンス違反が蔓延している」暗号資産業界から投資家を保護するためにSECの規模を拡大する必要があると表明した。

ゲンスラー委員長は、暗号資産市場を開拓時代の西部になぞらえ、コンプライアンス違反が蔓延しているのを目の当たりにしてきたと指摘。「投資家が苦労して稼いだ資産を、投機性の高い資産クラスでリスクにさらしている」と述べた。

フルタイム職員を追加雇用するために必要

SECは、暗号資産関連の犯罪を取り締まるために広範な取り組みを行っている。増額を要求した7200万ドルは、フルタイム職員数十人を追加で雇用するために必要だという。ゲンスラー委員長は、すでに認められている2024会計年度の予算23億6400万ドル(約3309億6000万円)について、インフレを考慮すると現在認められている人員分をちょうどまかなえるだけの金額だと主張した。

ゲンスラー委員長は、SECが2023年に4685人を雇用し、約半数が執行と調査の業務に専念したとのデータを示した。予算が増額されれば、SECはチームに170のポジションを追加することができるという。さらに2023年に採用された職員に通年の資金を提供することになり、SECのフルタイム職員の総数は5139人に上る可能性がある。

ゲンスラー委員長は、「我々の使命の規模に見合った資金があれば、投資家や発行体など、アメリカ国民のさらに強力な擁護者になれる」とし、「詐欺、操作、悪用を根絶することで、システムのリスクが軽減される」と述べた。

SECのアプローチへの批判も

議員からの質問では、暗号資産とそれを規制するSECのアプローチに対するさまざまな態度が示された。

ジョン・ケネディ(John Kennedy)上院議員は、なぜSECが破綻した暗号資産取引所FTXの不正疑惑の芽を摘み取らなかったのかについてゲンスラー委員長を厳しく非難した。

ケネディ議員は、「ラシュモア山を買収する以外は何でもした人物(FTXのサム・バンクマン-フリード(Sam Bankman-Fried)元CEO)がいるが、この男がどこからそのお金を得ているのか興味はないか?」と質問し、SECの対応が不十分だと指摘した。一方ゲンスラー委員長は、FTXの本社がバハマにあり、強制措置の発動には時間がかかると述べた。

リチャード・ダービン(Richard Durbin)上院議員は暗号資産全般に疑念を抱いているようで、SECには業界を取り締まるのに十分な資金があるのかと質問した。

一方、ビル・ハガティ(Bill Hagerty)上院議員の態度は違った。同議員は、一般的には馴染みのない指標であるステーブルコインの市場シェアやアメリカのブロックチェーン開発者の数などに言及して懸念を強調。SECの「執行による規制」と不明確なルールによってビジネスとイノベーションがオフショアに移転していると指摘した。

|翻訳:CoinDeskJAPAN
|編集:林理南
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|原文:SEC Chair Gensler Cites ‘Wild West’ of Crypto in Case to Increase Agency’s Budget