アメリカ初のビットコイン先物連動型上場投資信託(ETF)を発行しているプロシェアーズ(ProShares)は、デリバティブ取引に伴うコストがトラッキングエラーにつながるとの懸念は杞憂に終わり、同商品はビットコインのスポット価格パフォーマンスを忠実に模倣していると述べた。
プロシェアーズ・ビットコイン・ストラテジーETFは2021年10月にニューヨーク証券取引所でBITOというティッカーで取引を開始し、投資家は暗号資産(仮想通貨)を所有することなくビットコイン(BTC)へのエクスポージャーを得ることができる。世界最大の暗号資産ファンドであるこのETFは、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)に上場されている、規制され現金決済されるビットコイン先物に投資するものだ。
当初から、BITOや他の先物ベースのETFは、ロールオーバー、つまり期限切れの先物契約を売却し、次のセットを購入することに関連するコストのため、ビットコインのパフォーマンスを大幅に下回ると予測されていた。通常、期限の長い先物契約は、期限切れに近い先物契約よりもプレミアム付きで取引され、これはコンタンゴ(contango)として知られる状態だ。コンタンゴは強気相場の時に大きくなる傾向があり、そうなるほどコストが上昇し、いわゆる「コンタンゴブリード」が発生する。
プロシェアーズのグローバル投資ストラテジスト、シメオン・ハイマン(Simeon Hyman)氏は米CoinDeskの電子メールインタビューに答えた。「上場以来(7/18まで)、ビットコインのリターンは-51.5%で、BITOは-54.5%だ。そして、そのささやかな差の半分以上は、BITOの年率0.95%の手数料だ」。
ビットコインの最近の上昇とそれに伴う6月末のコンタンゴの拡大は、ロールコストに対する懸念を再燃させ、ビットコインに直接投資してポジションをロールオーバーする必要がないスポットベースのETFを求める声を強めている。6月15日以降、ブラックロック(BlackRock)、インベスコ(Invesco)などの伝統的な金融大手が、スポットベースのビットコインETFをアメリカ証券取引委員会(SEC)に申請した。
ハイマン氏によると、BITOはファンドの保有する現金による金利収入が、アメリカ経済の金利水準に密接に連動するロールコストを補っているため、スポット価格に密接に連動し続けている。
「CMEのビットコイン先物のように、保管コストのない金融先物では、先物契約プレミアムは期間相当金利と同程度になるはずだ。2022年3月以降、連邦準備制度理事会(FRB)が基準金利を5%引き上げたことが、こうしたプレミアム、ひいてはビットコイン先物戦略のロールコストを押し上げる主要因になっている」とハイマン氏は述べている。
「ここにパズルの重要なピースがある。BITOは現金残高から利息を得て、ロールコストを相殺する。その結果、スポットビットコインの値動きにほぼ連動することになる」とハイマンは付け加えた。
ハイマンが言うように、先物価格の構成要素のひとつは金利であり、FRBはインフレ抑制のために目標レンジを5%~5.25%に引き上げている。その他の変数には、原資産の価格、保管コスト、利回りが含まれる。CMEのビットコイン先物は現金決済なので、保管コストはかからない。
BITOは保有する現金から利息を得る。利子収入は毎月の配当金として支払われ、ファンドのロール減衰をカバーする。BITOは今年6回配当金を支払った。
スポットETFの可能性が先物ベースの商品から投資家を遠ざけるかとの質問に対し、ハイマン氏は、存在しない商品について推測するのは難しいと述べた。
「BITOの実績とフローは、ETF内のビットコイン先物戦略の有効性と投資家の関心の証だ」とハイマン氏は指摘する。
7月18日の時点でプロシェアーズETFの運用資産は11億ドル(約1600億円)。年初来の資金流入額は3億3620万ドル(約476億6000万円)。ファンド設立以来、投資家から22億ドル(約3200億円)の資金を集めてきた。
市場では、スポットベースのETFが登場すれば、機関投資家の資金が殺到すると予想されている。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Cheyenne Ligon/CoinDesk
|原文:ProShares Says Bitcoin ETF Has Matched BTC Price Closely, ‘Roll Cost’ Concerns Are Unwarranted