自宅マイニングに興味ある? 先輩DIYマイナーたちの体験談

かつてはアンダーグラウンドな業界だった暗号資産(仮想通貨)に、メインストリームの金融機関が投資をしたり、大手のマイニング会社が産業規模のマイニング施設を建設するなど、暗号資産は組織化されたものになっている。

しかし、もしあなたが昔ながらのサイファーパンク(社会変革の手段として暗号資産の利用を推進する人)で、自分でビットコインをマイニングしない限り、暗号資産に関わっているとは言えないと考えているならどうだろう? 超巨大マイニング施設の世界で生き残り、数ドルでも稼ぐことはできるだろうか?

弱気相場はマイニングの採算性を低下させたが、最も高価で電力を消費するマイニング機器であるビットコイン(BTC)マイニングASIC(特定用途向け集積回路)の価格も引き下げた。マイニング会社ルクソール(Luxor)のデータによると、ASICの価格は直近の強気相場が始まる前、2021年初頭の水準に戻っている。

同時に、電気料金は過去2年間、アメリカおよび世界中で上昇しており、小規模な愛好家にとってマイニングの経済性は厳しいものとなっている。

米CoinDeskは、現在利用可能な家庭用マイニング機器の可能性を探った。結論としては、趣味以上のものを求める人にとって、勇気づけられるようなニュースはほとんどなかった。何人かのホームマイナーに話を聞いたところ、この市場で儲けることは難しいことが明白となった。次の強気相場がやってきても、ニッチな存在にとどまる可能性が高い。

耐え忍ぶ

テキサス州で住宅建設会社を経営するギャレット・カサダ(Garrett Casada)氏は、ガレージいっぱいにマイニング機器を揃えた2人組の会社、サック・イット・アップ・マイニング(Suck It Up Mining)のオーナーでもある。社名は、できるだけ多くのマイニング能力を「Suck up = 吸い上げる」という野心と、マイナーに必要なレジリエンス(Suck it upには耐え忍ぶという意味もある)を連想させる。

「ときにはマイニングが好調でも、新しい法律ができたりする。それでも愚痴を言わずに、前に進まなければならない」(カサダ氏)

カサダ氏とたった1人の従業員のプログラマーは、テキサスの片田舎にある牧場で多種多様な暗号資産をマイニングしてきた。すべては2020年、2台のグラフィック・プロセッシング・ユニット(GPU)から始まったとカサダ氏は振り返る。

今では、ビットコイン、ジーキャッシュ(ZEC)、ライトコイン(LTC)、ドージコイン(DOGE)のブロックチェーンの新しいブロックをハッシュ化する80台のASICと、GPUと中央処理装置(CPU)の複数の棚があり、そのほとんどがチア(XCH)専用となっている。合計で1メガワットの電力を消費し、毎月2万ドル(約280万円)の電気代がかかる。

利益は、大したことはない。カサダ氏は今のところ、マイニングしたコインを保有し続けている。

「この1年間、コインは売っていない。もし今売るとしたら、電気代を賄うのがやっとだろう」とカサダ氏は認め、「ビットコインは素晴らしいが、保有していなければならない」と続けた。

しかし、強気相場の時はもっと良かった。「2021年には光熱費が8万ドルで、12万ドルの利益があった」とカサダ氏は振り返る。

カサダ氏は太陽光パネルでの電力確保も試してみたが、これまでのところあまり上手く行っていない。カサダ氏によれば、太陽光パネル300枚に15万ドルを費やしたが、今それらのパネルはマイニング・ガレージの屋根で月に約1000ドル相当の太陽光発電を行っているという。

それでも彼の試みを真似したいと思っている人のために、カサダ氏は概算を出してくれた。Antminer製のASIC「S19」2台(1台約3000ドル)の場合、太陽光パネルが20枚、プラス3万ドル必要だ。この組み合わせなら、1日に2ドル〜5ドル相当のビットコインが手に入る。それなら、同じお金で取引所でビットコインを購入し、それを保有する方が良いだろう、とカサダ氏は言う。

余熱活用

バージニア州に住む銀行員のジェラルド・グリックマン(Gerald Glickman)氏は、ビットコインのマイニングにとどまらず、マイニング機器から出る余熱を利用するため、裏庭のプールに給湯システムを作ることにした。

グリックマン氏は、自分があまり器用な人間ではないことを認めている。「かなりの研究と調査が必要だった。私は家に関して何でも直せるようなタイプの人間ではない」とグリックマン氏は語る。

しかし、十分なやる気と豊富なオンラインからの情報、そして電気技師の友人の助けを借りて、グリックマン氏はマイニングの余熱を活用した給湯システムを作ることに成功した。

マイニング機器は容器の中のオイルに浸されている。オイルはマイニング機器によって温められ、細いパイプを通って容器から熱交換器に送り出され、そこでパイプがプールの水循環システムを流れる水に触れる。水は加熱されてプールに戻り、オイルは冷却されてマイニング容器に戻るという仕組みだ。

「自作ビットコイン・プールヒーターの概要を簡単にご紹介!

ほとんどのプールヒーターとは異なり、このヒーターは静かで、完全に密閉することができ、世界最大のピアツーピア通貨ネットワークの安全確保に役立つ。
(ツイッターがオリジナルの投稿を削除したため、オリジナルを再投稿)

注:これはまだ比較的実験的なコンセプトであり、プロトタイプである(ただし動いてはいる!)

このようなシステムを運用するうえで最も一般的なリスクを軽減するために、温度や自動回路への流量を監視するなど、いくつかの予防策を講じた」

Antminer S19j Proを含む装置全体のコストは約6000ドルで、作業には数日を要したとグリックマン氏。

「調査と安全準備に費やした時間のほうが長かったかもしれない。妻は非常に懐疑的だった」

システムは2カ月間稼動しており、グリックマン氏の計算によると、ビットコインと熱の量は電気代をカバーするのにちょうど十分なほどだ。

グリックマン氏もまだ、ビットコインを売ってはいない。というのもグリックマン氏は、ビットコインは未来だと信じており、自分のマイニングプロジェクトは、毎日少しずつビットコインを購入するのに代わる方法だと考えているからだ。

DIYへの挑戦

「私は赤字でマイニングしている」と、コンパス・マイニング(Compass Mining)の元コンテンツ・ディレクターで自身も自宅でマイニングを行うウィル・フォックスリー(Will Foxley)氏は語る。

フォックスリー氏は、実家の外に自作した木と漆喰のコンテナにWhatsminerを1台設置した。彼は1年前にこの試みを始めたが、最初の1カ月で購入した3台のマシンがコンテナ内でオーバーヒートし続け、自動的に電源が切れたため、コンセントを抜いたとフォックスリー氏は語る。

「セットアップが完了し、うまくいくと思っていたら、何かがうまくいかなくなる。何度も繰り返す必要があった」

この春、フォックスリー氏はASICを1台だけにして再スタートを切り、これまで3カ月間にわたってビットコインをマイニングしている。彼がWhatsminerを選んだ理由は、大規模マイナーに人気のBitmainのAntminerよりも高温に強いからだという。さらに、他の一部のマイニング機器とは異なり、Whatsminerは三相電気システムに接続する必要がないため、電源の改修が必要ないとフォックスリー氏は述べた。

フォックスリー氏が住むコロラド州の電気料金は1キロワット時あたり12~13セント程度で、ASICを稼働させると毎月の電気代が200ドルほど膨らんだという。手作りの防音ボックスには300ドル〜500ドルかかり、それに加えて300ドル分の電気製品も必要だった。

マイニングプールに参加してマイニングを行い、ASICが稼働している3カ月の間に、フォックスリー氏は1BTCの約2%ほどをマイニングできたという。現在の価格で580ドル程度に相当し、コストをカバーするには十分ではない。

ビットコイン価格が上昇し続け、一時的に自宅でのマイニングが採算に合うようになったとしても、ビジネスとして持続可能なものにはならないだろうとフォックスリー氏は考えている。

「別のユースケース(自宅の暖房)を念頭に置くか、市場のタイミングをすごく上手く見計らう必要がある」とフォックスリー氏。言い換えれば、安価なASIC、安価な電力、高価なビットコインを同時に捉えるということだ。

だからといって、個人マイニングが終わったわけではないとフォックスリー氏は語る。小規模マイナーは力を合わせて、アウトプットを最大化することができるからだ。「とはいえ、自宅マイニングはいつまでたっても小規模なものであり続けるだろう」と、フォックスリー氏は付け加えた。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:ジェラルド・グリックマン氏自作のビットコインマイナー/プールヒーター(YouTube)
|原文:Want to Mine Bitcoin at Home? DIY Bitcoiners Have Stories to Share