ビットコイン・エコシステムのベンチャー・キャピタル(VC)シーンは、皆さんが思う以上に堅調で、それについては調査レポートで詳しく解説したところだ。
実際、2022年は画期的な年だった。昨年、シード期への投資案件数は2021年に比べて133%増加。資金調達した企業数は70%増加した。
一部のビットコイン・スタートアップは、シリーズBまたはそれ以降のステージに成長しており、シード期の高い成長はエコシステムの成長が早い可能性を示している。
ビットコインVCは成長、暗号資産VCは低迷
暗号資産市場は、2021年11月のピークから大幅に下落。その影響で暗号資産VC全体の投資案件数は実質、低迷している。一方、ビットコインVCは前年比52.9%増と成長カテゴリーとなっている。
ただし、資本配分は偏ったまま
ビットコイン・ブロックチェーンの基盤ソフトウェア「ビットコイン・コア」の変更を慎重に行うというアプローチは「ビットコインでは何も起きていない」というストーリーを生み出している。しかし、調査データを見ると近年、ビットコイン業界全体のイノベーションは加速している。
我々は今後数年でイノベーションが花開くと予想しているが、今のところVC市場とのギャップは非常に大きい。2022年の暗号資産VCの資金のうち、ビットコイン・スタートアップへの投資はわずか1.31%だった。
計画的だが、段階的なビットコインの機能開発
我々、Trammell Venture Partners(TVP)は、ビットコインは「インターネットの基本通貨レイヤーになるための戦いにすでに勝利した」と考えており、いくつかの重要な違いを指摘している。すなわち、マーク・ザッカーバーグ氏の「素早く動き、破壊せよ」という理念は、分散型でグローバルな通貨ネットワークの構築には適さない。ビットコイン・コアの開発は非常に計画的。だが、停滞しているわけではない。
2017年に行われたアップデート「Segwit(Segregated Witness)」は、高速な取引を可能にするライトニング・ネットワークの技術的前提条件となり、ライトニングは次のイノベーションを解き放つレベルにまで成長した。同じく2021年11月のアップデート「タップルート(Taproot)」もまた、新たな成長を切り開いた。
注目すべきは、ライトニングラボ(Lightning Labs)のプロトコル「Taproot Assets Protocol(TAP)」。これはライトニング・ネットワーク上での直接的な資産の発行を促進する。TAPが成功すれば、ライトニング・ネットワークのスピード、低コスト、決済のファイナリティを維持しつつ、ビットコイン・ブロックチェーン上に複数の資産がネイティブに存在することが現実になる。
ビットコインの入念な開発は実を結び始めている。ビットコイン・ブロックチェーンのコンポーザビリティ(構成可能性)が増すにつれ、起業家は最も安全で、分散化され、成熟したプラットフォーム上でビジネスを構築することをますます選択するようになるだろうとTVPは考えている。ビットコインでは何も起きていないと言われ続けている皆さん……見逃さないように。
|翻訳:吉見朋子
|編集:増田隆幸
|画像:Trammell Venture Partners
|原文:Bitcoin Venture Capital Is Anything but Boring: Crypto Long & Short