「私もビットコイン(BTC)を持っている」
リンクトイン(LinkedIn)の共同創設者でペイパル(PayPal)マフィアのひとり、リード・ホフマン(Reid Hoffman)は仮想通貨に対抗する中央銀行を題材にしたヒップホップ動画を制作した理由をCoinDeskに語った。
ホフマンは何年も前からビットコインに関心を持っている。だが、伝統的な銀行システムの破壊を掲げる長年のビットコイン支持者たちと、彼を一括りにするのは間違いだろう。
「私は政府寄りで、健全な社会を望む男」と彼は述べた。しかし、ベンチャーキャピタル「グレイロック(Greylock)」のパートナーでもあるホフマンはまた、世界が望み、必要としていることを可能にするために、必然的に世界規模の仮想通貨がごく一握り生まれると信じている。
「ビットコインを持っているのは、この議論を盛り上げるため」と彼はCoinDeskに述べた。
動画は、お金の将来に関するオンラインディスカッションへのささやかな提案。ただ、普段目にするものよりも、はるかに面白い体裁になっている。俳優兼ラッパーが、アレクサンダー・ハミルトン(アメリカ建国の父、初代財務長官)とサトシ・ナカモト(ビットコインを発明した人物もしくはグループ)の対決を演じた。
仮想通貨 vs 銀行
ホフマンはミュージカル「ハミルトン」を観て、この動画を作ろうと思いついた。
彼は重要なテーマに関する対話をうまく進めるために、教訓的な要素を含むラップの形式を借りることにした。伝統的な銀行と仮想通貨の対決はうまく行くと感じていた。
こうした方法はユーチューブ(YouTube)チャンネル「Epic Rap Battles of History(ERB)」のファンにはお馴染みだろう。2人のメインキャラクターが交互に自説を主張したり、相手の説を否定しながらラップでやり取りする。
「もし、銀行が今でもまだ、人々がお金を増やすことを手助けしてくれるなら…」とナカモトを演じたホスト役のYouTuber、ティモシー・デラゲットー(Timothy DeLaGhetto)は銀行の必要性に切り込んで口火を切った。
「仮想通貨の利回りは急速に上がっている。銀行の今の利子は? 半分くらい?」
だが、銀行支持派は最高のメリットをアピールした。
エピックラップバトル(Epic Rap Battles)のメンバー、エピックロイドがハミルトンを演じて仮想通貨に対して反論。
「追跡不可能なお金、すごく賢い。アドレスを1つタイプミスしただけで、永久に消えてしまう」
もしあなたがこうしたラップに慣れていないなら「ガンジー vs マーティン・ルーサー・キング」「ラスプーチン vs スターリン」、そして、私の一番のお気に入りの「東洋哲学者 vs 西洋哲学者」をチェックしてみてほしい。
実際、経済的な議論のためにラップ対決を使うのはこれが初めてではない。2010年、経済学者ラス・ロバート(Russ Roberts)は、エマージェントオーダー(Emergent Order)というグループと協力して「好況と不況の恐怖(Fear the Boom and Bust)」という動画を制作した。20世紀を代表する経済学者のケインズと、仮想通貨支持派がお気に入りのフリードリヒ・ハイエクを題材にしたものだ。
あなたはどちらを支持?
歴史的なヒップホップバトルに関する以下の投稿を見ると、結果は仮想通貨支持派が優勢と見ざるを得ない。
ディベートの勝者は? ハミルトン? サトシ・ナカモト?
動画には、仮想通貨業界の大物が数多く友情出演している。例えば、ライトコイン(LTC)の創設者チャーリー・リー(Charlie Lee)、ジーキャッシュ(Zcash)の共同創設者ズーコ・ウィルコックス・オヘーン(Zooko Wilcox-O’Hearn)、Earn.comの共同創設者リリー・リュー(Lily Liu)、Beanstockの創設者エレナ・ナドリンスキー(Elena Nadolinski)、ザポ(Xapo)のCEOベンセス・カサレス(Wences Casares)、ビットゴー(BitGo)の共同創設者ベン・ダベンポート(Ben Davenport)など。
仮に人々が、この動画は仮想通貨のための議論にすぎないと言ったとしても、「それでも構わない」とホフマンは述べた。だが、以下のように続けた。
「仮想通貨が1つか2つ以上存在することは、世界にとって良いことだと強く思っている。そのうちの1つはビットコインかその派生物だろう。良いことだと思う」
彼はテクノロジー分野で若い頃から、社会を新しい、より良い方法で機能させる企業が登場する場面を見てきた。例えば、ペイパルは個人の支払い手法を拡大し、何百万ものスモールビジネスに新しい可能性を開いた。
彼はビットコインを、新興市場などでペイパルと同様の新しい恩恵をもたらすチャンスになると考えていた。彼はかつて以下のように考えたと述べた。
「ビットコインは社会をあるべき姿に構築することを支援するための、非常に重要なものになるかもしれない」
しかし実のところ、この動画の根底にあるメッセージは、仮想通貨は銀行システムに取って代わるというほどのものではなく、いかにして議論を進め、銀行と仮想通貨の双方がより多くの人々の生活を改善する方向に進むことができるかにある。
ホフマンはこう結論づけた。
「実際にやっていることは、仮想通貨ネットワークをどう進化させるか、銀行システムをどう進化させるかというゴールをデザインすること。どちらも秩序だった社会の一部だ」
翻訳:新井朝子
編集:増田隆幸
写真:Screenshot via YouTube / Rhyme Combinator
原文:Reid Hoffman’s New ‘Hamilton’-Inspired Crypto Rap Video Is Straight Fire