資産運用大手ブラックロック(BlackRock)が米証券取引委員会(SEC)にビットコインETF(上場投資信託)を申請したことで、機関投資家のビットコインETFへの関心が再燃している。だが、この動きはアメリカにおける暗号資産関連の金融商品についての議論を活発化させただけのようだ。
しかし、ビットコインETFが市場に与える影響について、より意味のある話をするならば、2年半前にこれらの商品が承認され、成功裏に運用されているカナダに目を向ける必要がある。
「鍵を持っていなければ、暗号資産を保有していることにならない」と考えるたちは、ETFを通じてビットコインに投資することのデメリット、つまり投資家が原資産であるビットコインを直接所有しない点を常に指摘するだろうが、ETFの仕組みが暗号資産ネイティブにとどまらない幅広い投資家にメリットをもたらすことを視野を広げて理解することが重要だ。
以下、カナダの経験に基づいた見解を紹介しよう。
安全性
一部の暗号資産投資家は、保有資産を直接管理できないことに不信感を抱いている。しかし実際のところ、カナダでは厳格な規制監督により、ファンド・プロバイダーは透明性の高い運用が求められ、資産の混合やハッキング、詐欺の可能性が極めて困難な運用フレームワークの遵守が求められている。
これまでのところ、カナダのビットコインETFを購入した投資家で、ハッキング被害にあったり、不正行為や不十分なバランスシート管理によってお金を失った人はいない。これはFTXやセルシウス(Celsius)、ブロックファイ(BlockFi)に資産を預けていた何百万人という投資家とはまったく異なる。
信頼できる投資手法
SECはビットコインETFは危険と主張し続ける一方、同時にビットコイン先物ETFや取引所でのデジタル資産の直接売買を認める決定を行った。しかしカナダでは、スポットETFは、先物市場の不確実性やボラティリティが加わることはなく、規制を受けていない取引所の不透明な運用に対処する必要もなく、ビットコインへの直接的な投資を模倣することに非常に効率的と示されている。
アクセシビリティ
暗号資産がメインストリームに受け入れられる可能性を語るとき、アクセシビリティ(アクセスのしやすさ)の重要性は極めて重要だ。カナダ銀行による2021年の調査では、カナダにおけるビットコイン投資の増加は使い勝手の良いモバイル取引所の登場と高い相関関係があるようだと述べられている。また、カナダのトップ3のビットコインETFに数億ドルが流入したことを考えると、従来の金融システムに完全に統合されたビットコインETFのアクセシビリティが、投資家にとって魅力的だったと考えられる。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:In Canada, Spot Bitcoin ETFs Have Been Working for Years