タイの新首相、暗号資産に積極姿勢──国家レベルのエアドロップを計画

不動産業界の大物セター・タビシン(Srettha Thavisin)氏がタイの次期首相に選出された。物議を呼んだ総選挙を経て、タクシン元首相派のタイ貢献派が同国の政権を握ることになった。

セター氏は、タイの不動産開発大手サンシリ(Sansiri)の元CEOで、同社はデジタル資産部門にも積極的。2021年、サンシリはタイを拠点とするデジタル資産サービス・プロバイダーのXSpringに15%出資した。XSpringはタイ大手のクルンタイ銀行と共同で暗号資産ブローカーを運営し、ICOポータルサイトのライセンスも取得している。

2022年、サンシリはXSpringで「シリハブ・トークン(SiriHub Token)」を発表。これはREITのような仕組みで、同社の主要開発物件のひとつであるサンシリ・キャンパス(Sansiri Campus)からの配当を提供するものだ。

国家レベルのエアドロップ

セター氏の選挙公約の中心は、全国民が1万タイバーツ(約300ドル、約4万3500円、1ドル145円換算)を受け取れる「エアドロップ」だ。

16歳以上のタイ国民全員に配布され、利用は自宅から4km以内に限られると、党の広報担当者は現地紙のバンコク・ポストに説明した。
エアドロップは、デジタル資産や暗号資産ではなく、専用のトークンが使われ、指定された銀行で現金に換えることができる。

エアドロップには、批判的な意見もある。5000億タイバーツ(約143億ドル、約2兆740億円)と推定される膨大なコストがかかることや、タイにはすでに既存のデジタルバンキング構想があるにもかかわらずブロックチェーン技術を利用するためだ。

「私はブロックチェーンの普及を期待しているが、このキャンペーンにブロックチェーンとトークンを使うことはやりすぎ」と分散型デリバティブ・プラットフォームFWX.financeの共同創業者、ウドムサック・ラクウォンワン(Udomsak Rakwongwan)氏はCoinDeskに語った。

「タイ人の大多数はすでに、政府の取り組みに合わせて作られたデジタルバンキング・ウォレットのパオタン(Paotang)を使っている。より複雑な可能性のあるブロックチェーンに比べて、実装はシンプルで、簡単かもしれない」

だが同氏は、新政権がより緩やかな暗号資産規制を打ち出し続けることで、タイの暗号資産プロジェクトが急増すると予想している。

「タイの暗号資産を取り巻く状況は急速に進化している」と同氏は述べ、サンシンが複数のICOに関与していることを指摘した。

大物政治家が暗号資産を保有

タイ貢献党は当初、総選挙で第一党となった前進党の党首ピター氏の首相選出に協力していた。だがピター氏は議会で首相選出に必要な支持を得られず、今回のセター氏の首相指名につながった。

セター氏とピター氏はともに暗号資産ファンとして知られている。
CoinDeskは7月、ピター氏がビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、カルダノ(ADA)、バイナンスコイン(BNB)を所有していることを伝えた。

ピター氏の暗号資産保有額は数千ドルに過ぎず、同士の資産に占める割合は小さいが、タイを代表する政治家2人が暗号資産保有者であることは注目に値する。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:選挙運動中のセター氏(Shutterstock)
|原文:Thailand’s New Pro-Crypto Prime Minister Was an Active Crypto Investor