DAIが高利回り制度導入で時価総額50億ドル超え──Sparkの利用も急増
  • DAIの時価総額は今月、8%もの高い報酬率の導入を受けて10億ドル近く上昇した。
  • 一方で、報酬率の高さは発行会社MakerDAOの利益予想に影響を及ぼしたため、Makerは報酬率を5%に制限することになった。

MakerDAOのステーブルコイン「DAI」の価格は長期の下落傾向にあったが、保有者の報酬率が8%に引き上げられたことを受けて需要が活性化し、上昇に転じた。

時価総額は50億ドル超え

流通しているDAI全体の時価総額は4月以来初めて50億ドル(約7250億円、1ドル145円換算)を超えた。CoinMarketCapのデータによると、DAIの時価総額は2022年初めに記録した最高値100億ドル(約1兆4500億円)超から7月下旬には44億ドル(約6380億円)まで縮小していた。

DAIの時価総額増加により、Makerの与信枠を活用し、DAIを採用した分散型金融(DeFi)融資プラットフォーム「Spark」の利用も増加した。DefiLlamaによると、Sparkの預かり資産(Total Value Locked:TVL)は過去1カ月で10倍近く増加し、4億3000万ドル(約623億5000万円)に達した。

8%から5%に引き下げ

Maker創設者のルーン・クリステンセン(Rune Christensen)氏は先月、時価総額の反発を目指し、米国債などの準備資産から得られるプロトコル収入を利用して報酬を支払うことで、DAIを暗号資産投資家にとってより魅力的なものにする利回り強化制度の計画を打ち出した。

いわゆる「拡張DAIセービング率(EDSR)」は当初、預金に対して年利8%の報酬を提供していたが、制度を利用する投資家が増えるにつれて動的に調整される仕組みになった。

8月にEDSRを導入した後、DAIには10億ドル近くの流入があった。

DAIの成長は持続可能か?

しかし、成長を維持できるのか、また新規ユーザーが長く留まるのかについては疑問が残る。

Messariのアナリストであるクナル・ゴエル(Kunal Goel)氏は報告書で、報酬引き上げがMakerの利益を大幅に圧迫していると指摘。「増えた預金額に対して引き上げられた金利を適用することにより、プロトコルの支払利息が膨らみ、利益期待が枯渇した」と述べた。高すぎる利回りは裁定取引の機会にもなったという。

Makerはこれら2つの問題を解決するために、今週末に最大報酬率を5%に引き下げた。

これにより、トロン(Tron)創設者のジャスティン・サン(Justin Sun)氏が管理するアドレスを含む一部の大規模投資家がDAIを手放すようになり、約2億ドル(約290億円)相当のDAIが払い戻された。WuBlockchainが報じた。

DefiLlamaのデータによると、Makerと関連するSparkプロトコルのTVLも、この1週間で6億ドル(約870億円)以上から4億3000万ドル(約623億5000万円)に減少した。

|翻訳・編集:林理南
|画像:Original image by Trevor Jones
|原文:DAI Stablecoin Surpasses $5B Market Cap on Higher Yield, Lifting Spark Protocol