人気のコレクティブル(コレクターズアイテム)をNFT化して売買したり、デジタルアートとしてメタバースに持ち込むことは、NFTのユースケースとして拡大しつつあるが、同時に著作権のトラブルも生まれている。
例えば、NFTアーティストがエルメスの有名なバッグ「バーキン」のデザインをもとにNFTを作成、エルメスがアーティストを訴えた事件では、今年2月にエルメス側の訴えを認める判決が出ている。
人気のキャラクターグッズを購入したとしても、スキャンしてNFT化し、売買することは著作権を侵害することになる。
だが一方で、現実世界のリアルなユーズドマーケットでは、コレクターズアイテムの売買が盛んに行われている。
かつて、ユーズドマーケット、いわゆるセカンダリーマーケット(2次市場)は、ブランドやクリエイターから“目の敵”にされる存在だった。しかし、セカンダリーマーケットの人気が広がり、ユーザーが増えるにつれ、ブランドとセカンダリーマーケットが連携する動きも生まれている。6月、メルカリはポケモンと不正出品や過度な高額転売を防ぐために協定を結んだ。
プライマリーマーケット(1次市場)であるブランドと、セカンダリーマーケットが連携して、ユーザー価値の増大やマーケットの健全な発展を目指そうという動きだ。
メルカリグループで新規事業開発に携わっていた原田大作氏が、シンガポールでスタートさせたWeb3スタートアップのVELVETTが手がけるマーケットプレイス「Unikura(ユニクラ)」は、そうした問題点を解決し、人気のコレクティブルを世界中のNFTをユーザーに届けることを目指している。
所有権をNFT化、アイテムは専用倉庫で保管
特徴は、さまざまなコレクティブルを扱うが、アイテム自体をスキャンしてNFT化するのではなく、コレクティブルの所有権(オーナーシップ)をNFT化していること。売買されるNFTのデザインは、ユニクラ独自のものになっている。
また、アイテム自体は専用倉庫で保管している。コレクティブルは集めれば集めるほど、そして高額のものになればなるほど、ユーザーにとっては保管の手間が増える。
もちろん「いつも手元においておきたい」というニーズは存在するが、高額なコレクティブルは安心できる事業者に、温度・湿度など保管な環境で保管してもらいというニーズも存在する。
「シンガポールはポケモンファンが多く、NFTユーザーの中にはポケモンカードを集めている人が多い。でも、シンガポールにはポケモンカードを扱っているお店がありません。一方で、NFTユーザーは、現物が手元になくてもいいと思っています」と原田氏はコレクティブルのNFT市場にある新たなチャンスについて語った。
もちろん、コレクティブルを倉庫から所有者の手元に送ることもできる。その場合、発行したNFTはバーンされる。
「最初に出品してくれた人を大切にしたい」
ポケモンカードに限らず、日本製のコレクティブルは海外での人気が高まっている。だが日本のユーザーが海外コレクター向けにコレクティブルを販売しようと思っても、言葉の問題はもとより、配送、代金の回収、関税など、ハードルはあまりにも高い。さらに本物であることの証明も不可欠だ。
ユニクラは、そうした問題も一括で解決する。取引したいコレクティブルを倉庫に送るだけで、出品やNFT化が完結するという。また最初にコレクティブルを出品した人には、その後、そのNFTが売買されるごとに、ロイヤリティが入る仕組みになっている。
出品し売ることで、所有権は手放すことになるのだが「コレクティブルを出品してくれた売り手を大事にしたい」と原田氏。
「いいものほど、出品してもらえる。と同時に出品すると、寂しい気持ちがする。だから最初に出品してくれた人を大切にしたい」
人気のコレクティブルは、10回近く取引されるという。
今はクローズドベータ版を展開している段階。Web2的な手法とWeb3的な手法を組み合わせ、売り手と買い手を交互にシーソー的に増やしていくという。買い手には主に海外ユーザーを想定しており、サイトは英語のみで展開している。
「最初のターゲットは、コレクティブルのNFTを集めているユーザー。そこから一般的なNFTコレクターや企業による出品、さらにはスニーカー好き、アート好きの人たちを巻き込むことができるかどうかがポイント」と原田氏は語った。
VELVETTは今年1月には、日本、アメリカ、UAEのVCから300万ドル(約4億4000万円、1ドル145円換算)を調達している。
|文:増田隆幸
|画像:VELVETT
※編集部より:本文を一部修正し、更新しました。