- 暗号資産とAI(人工知能)の基盤となるブロックチェーン技術を金融市場に応用すれば、今後5年間で債券などの金融商品の発行者はコストを削減できる可能性がある。
- ブロックチェーンには可能性があるものの、規制が不十分な場合、国の主権を脅かしたり、脱税を助長する恐れがあるとムーディーズは警告した。
信用格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービス(Moody’s Investors Services)のレポートによると、ブロックチェーン技術は今後5年間、債券などの金融商品の発行者が資金を調達するコストを削減する可能性があるという。
6日に発表されたレポートは、ブロックチェーン技術をビジネスに取り入れればITコストが増加し、当初は「かなりの投資」が求められるが、時間経過とともに経費削減につながる可能性があるとしている。
最近の技術イノベーションにより、AIや分散台帳技術(DLT)などの技術を金融市場に適用した場合の変革の可能性が高まっているとレポートは述べた。
またAIは手作業を自動化することで金融機関の運用コストを削減できると期待され、DLTは「特に小規模な発行体にとって、段階的な資金調達コストの削減」につながる可能性があるという。
新たな技術がもたらす効果とは
「DLTは金融市場の効率性を改善し、決済システムを近代化し、金融包摂を促進する可能性がある」とDeFi&デジタル資産分析の責任者ヴィンセント・グスドルフ(Vincent Gusdorf)氏は声明で述べた。
「技術革新がもたらす全体的な経済的・金融的効果は、技術革新が促す政策や戦略的変化を含め、ポジティブなものになる可能性が高い」
グローバル市場で盛んになりつつあるデジタル債券(トークン化債券)は、銀行などの仲介者を排除し、二次市場(流通市場)での流動性を高めることで取引費用を削減し、資本市場をよりアクセスしやすいものにする可能性があるという。
香港の中央銀行も同様の考え方を示している。香港金融管理局(HKMA)は2月、1億ドル(約145億円、1ドル145円換算)のグリーンボンド(環境債)をトークン化して発行することに成功している。
AIとブロックチェーンへの期待
DLTはまた、一部の企業にとっては、未開拓の収益機会を得て、新たな市場に参入するチャンスにもつながる。
一方で、金融に新しいテクノロジーを導入する効果はポジティブに働く可能性が高いものの、「国、地域、企業、労働者によって大きく異なり、なかにはテクノロジーがもたらす混乱に苦しめられる者も出てくるだろう」。
しかし、このテクノロジーの可能性は、適切に利用されず、規制されなければ、国や地域の主権を脅かし、脱税やマネーロンダリング、テロリズムを助長する恐れもあるとレポートは記している。
ムーディーズは、AIとDLTが促進する金融市場の技術変革が、借り手の返済不能に起因する信用リスクにどのような影響を与えるかを引き続き調査する予定と述べた。
|翻訳:清水マキ
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Blockchain and AI Are Set to Transform Financial Markets: Moody’s