- ビットコインとそのインプライド・ボラティリティの相関が再びマイナスに転じ、投資家が下値への動きを懸念していることを示している。
- あるアナリストによると、投資家は差し迫ったFTXの清算とアメリカ連邦準備制度理事会による継続的な金融引き締めが暗号資産価格を押し下げることを懸念しているようだ。
ビットコイン（BTC）価格とこの暗号資産（仮想通貨）の先見的な30日インプライド・ボラティリティ・ゲージが再び逆方向に動いている。観測筋によると、負の相関関係への回帰は、迫り来るFTXの清算に対する懸念を表している。
Velo Dataによると、ビットコイン価格とインプライド・ボラティリティの60日相関は1週間前にマイナスに反転し、12日には-0.29まで低下した。
ビットコイン価格は4週間で10％近く下落した。破たんした暗号資産取引所FTXが破産裁判所の承認を得て34億ドル（約4930億円、1ドル=145円換算）相当の保有暗号資産の売却を開始する可能性をトレーダーが考慮したためだ。大手暗号資産オプション取引所デリビット（Deribit）の30日インプライド・ボラティリティを測定するBTC DVOL指数は、過去4週間で32から42に上昇した。
インプライド・ボラティリティの上昇に伴う価格の下落は、プット・オプション（価格下落に対するプロテクションを提供するデリバティブ契約）への偏りを示す。インプライド・ボラティリティは、投資家が特定の期間の価格の乱高下を予想するもので、コール・オプションとプット・オプションの両方の需要に影響される。つまり、負の相関は、FTXによる潜在的なリスク回避への期待とポジショニングから生じている。
「市場はここ数カ月、ETF承認の可能性に備えてきたため、トップサイドへの非対称な動きを非常に懸念してきた」とSTS Digitalのシニアトレーダー、ジェフ・アンダーソン（Jeff Anderson）氏は米CoinDeskに語った。「FTX清算のニュースやスポット価格の底が抜けるのではないかという懸念から、このセンチメントは最近変化している。そのため、インプライド・ボラティリティはスポット価格が弱いと思われる領域で推移している」。
暗号資産運用会社Blofinのボラティリティトレーダーであるグリフィン・アーダーン（Griffin Ardern）氏は、世界市場における追加金融引き締め懸念もボラティリティ傾向の変化の背景にあると述べた。
「間近に迫ったアメリカの8月消費者物価指数（CPI）のデータはインフレの反発を示す可能性が高く、これはアメリカ連邦準備制度理事会（FRB）が追加の流動性引き締め策を講じる可能性が高いことを意味する。流動性の再分配において、暗号資産の優先順位は最後であるため、暗号資産に貯められた流動性は引き出され、現金や米国株などの資産に投資される可能性がある」とアーダーン氏は述べ、「それが投資家のプット選好を押し上げ、価格とボラティリティに負の相関をもたらしている」と付け加えた。
RBCエコノミクス（RBC Economics）によると、9月13日に発表される消費者物価指数（CPI）で8月のアメリカの物価は前年同月比3.6％、7月の3.2％から上昇すると予想されている。いくつかの先行指標は、今後数カ月の間にインフレが回復すると警告している。そのため、FRBはすぐに金利を引き下げ、市場に流動性を注入することはないだろう。
この1年間は、直近のマイナスと5月のマイナスを除けば、一貫して価格とボラティリティの相関がプラスだったことが特徴だった。
正の相関は、価格上昇によってBTCコール・オプション・ホルダーがボラティリティ・ゲインだけでなく価格のゲインでも報われることを意味した。負の相関関係が復活したことで、プット保有者は、価格上昇の際にコールで得られる金額と比較して、潜在的な価格下落時に莫大な利益を得ることができるようになる。これは株式市場ではよくあることだ。
｜翻訳：CoinDesk JAPAN
｜編集：井上俊彦
｜画像：Velo Data
｜原文：Bitcoin Price-Volatility Correlation Turns Negative Again as Crypto Traders Eye FTX Liquidations
