2023年も終わりに向かうなか、暗号資産(仮想通貨)は規制の不確実性に包まれ続けている。きわめて不安定な状況のなか、センチメント分析の重要性はこれまでにないほど高まっており、DAO(分散型自律組織)のトレジャリー(保有資産)は、センチメント分析の新たな指針となる可能性を秘めている。
指標としてのDAO資金
現在、特定の暗号資産は上昇しているが、昨年と比較すれば、市場全体は下落相場にある。それでも、DAO資金の流れを見れば、市場の現状と方向性の双方について大切なインサイト(洞察)を得ることができるだろう。
マントル(Mantle)を例にとってみよう。マントルは、あらゆる種類の分散型プロジェクトやコミュニティのための相互運用可能なネットワークハブとして機能することを目指している。
現在、その資産の大部分はイーサリアム(ETH)、ステーブルコイン、そして独自のネイティブトークンであるマントル(MNT)が占め、その中でもMNTが最も多くを占めている。
論理的には、弱気相場の間、流動性が低下し、価格が壊滅的に下落するリスクを減らすために、DAOがネイティブトークンを可能な限りコントロールしようとすることは当然だ。
この状況は、FTXが2021年に旧BitDAO(現マントル)に投資したために、FTXのネイティブトークンであるFTTの影響を大きく受けていた1年前とは大違いだ。当時、BitDAOはネイティブトークンのBITとFTTのスワップを認めていた。
強気相場のとき、DAOはネイティブトークンを分散させて、エコシステムへのさらなる投資と、他分野へのさらなる投資に力を入れる傾向がある。
コンセンサスが「弱気」となれば、その逆が起こる。
運用資産残高(AUM)でトップ5のDAOであるGnosisのように、市場に関係なく成長戦略を追求するDAOもあるが、多くは、弱気相場の場合にはイーサリアムのような、より安全な暗号資産にウエイトを置き、強気相場の場合には、より不安定なアルトコインに手を広げることが多い。
AUMで世界最大のDAOであるアービトラム(Arbitrum)はどうだろうか?
現状、その資金はすべてネイティブトークンに割り当てられている。だがこの先、変わるかどうかはまだわからない。
情報源を広げ、荒波を切り抜ける
次に乗るべき波と市場指標を探しているトレーダーは、これらのDAOの資金をクロスセクション分析することができる。具体的には、DAOのウォレットとそれぞれのガバナンスフォーラムのクロス分析を行う。
さらにそれを、ベンチャーキャピタルファンド、暗号資産ヘッジファンド、さらには伝統的なファンドが暗号資産投資を行う前に使っているチェックツールと組み合わせることもできるだろう。
そうすることで、市場全体に関する多様な情報を得ることができる。しかし、どのような取引指標も確実ではない。
資金の動きは常にオンチェーンで追跡できるため、暗号資産関係者が自らの市場について、どのように考えているかを示す最も透明性の高い指標となっている。
資金戦略が進化するにつれて、資金の動きは暗号資産市場がどちらに傾いているかを示す、より確かな指標となるかもしれない。健全な市場においては、理想的には、暗号資産市場が不安定なときでも、DAOは、その価値を高めたり、保持できる複数の暗号資産で資金を分散するだろう。
DAOのネイティブトークンでより多くのオンチェーン決済が行われることも、DAOの長期的な見通しに対する関係者の自信を示すことになり、肯定的なサインとなる傾向がある。
どのような指標も確実ではないが、市場を追跡するための情報源を広げることは、海が荒れたときに木でできたボートに乗っているか、鉄でできたボートに乗っているかほどの違いをもたらすはずだ。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
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|原文:DAOs Are the New Degen: Crypto Traders Can Copy-Trade Token Treasuries for Fun and Profit