SBIホールディングスは11月10日、2024年3月期第2四半期の決算説明会を開催。説明会は、代表取締役会長兼社長・北尾吉孝氏の「下期は大転換の期になる」という言葉からスタートした。
2024年3月期上半期の売上高は、過去最高の約5748億円。前年同期比28.3%増となった。「通期での初めての1兆円超えは確実」と北尾氏は述べ、「創業25年でここまで来た」「時間の問題でガラッと変わる。その転換点となるのが、この下期だと思っている」と続けた。
「ゼロ革命」がポジティブな影響
北尾氏が説明会の中でたびたび触れたのが、SBI証券の「ゼロ革命」(オンラインでの国内株式売買手数料の無料化)の波及効果だ。手数料の無料化については、売上高にネガティブな影響が出るのではないかとの予想もあったが、SBI証券の上半期の売上高も過去最高を記録。前年同期比26.3%増の約1021億円となった。
その他、FX関連事業の主要会社であるSBIリクイディティ・マーケットは過去最高の営業収益を記録。住信SBIネット銀行も口座数、預金残高が順調に推移した。
「ゼロ革命が生態系全体にポジティブな影響をもたらした」と北尾氏は強調。単体のビジネス展開ではなく、生態系を揃えていくことの重要性、強みを強調した。
暗号資産事業は黒字を確保
暗号資産事業は、前年同期は一部取引先の破綻などから損失となったが、2024年3月期上半期は税引前利益で黒字を確保した。
下期の暗号資産事業の取り組みについては「本格的なデジタルの世界の到来に備え、デジタルアセット分野を中心に積極的な投資と事業構築を推進」とし、Web3をはじめとする最先端サービス/テクノロジーへの投資を行う最大1000億円規模の新ファンド「SBIデジタルスペースファンド(通称)」の設立、暗号資産の生態系の拡大と収益力の最大化、世界最大級のグローバルコリドー形成、NFTに関する事業の展開などをあげた。
発表会資料によると、SBIデジタルスペースファンドにはすでに各業界大手を含む43社が参画。9月に設立してから11月時点で、約550億円の資金が集まっているという。
暗号資産市場の見通しについては、「米国金利に逆相関する場面が多くみられる」とし、「金利低下が見込まれるなか、今後の動向が注目される」と述べた。さらに来年はビットコイン半減期が控えており、米証券取引委員会(SEC)によって暗号資産ETFが承認されれば、価格上昇と取引の増加が期待されると続けた。
その他、Ripple Labsの国際送金サービス、好調なステーキングサービス、貿易金融、シンガポール金融管理局(MAS)が進める「Project Guardian」への関与、私設取引システム(PTS)の運営、NFTへの取り組み、さらには大阪・関西万博への協賛など、暗号資産に関するSBIグループのきわめて幅広い取り組みが紹介された。
2時間、スライドは160枚以上
四半期決算発表会は、最後の質疑応答を含めると2時間強、説明資料は160枚を超えたが、質疑応答以外は北尾氏がほぼ1人で説明した。質疑応答では、大阪・関西万博についての昨今のネガティブな報道について質問もあったが、万博のみにとどまらず、大阪市が進めているIR(統合型リゾート)誘致、万博を契機にした国際送金や地域通貨の活用などを含め、さらに九州との連携も視野に入れた「国際金融都市」づくりを目指していると力強く語った姿が印象的だった。
|文・編集:増田隆幸
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