水曜日は、DAO(分散型自律組織)に取り組む人たちにとって、注目の曜日になっているかもしれない。11月29日、DAOに関する法律のあり方について議論する「DAOルールメイクハッカソン」の第3回目が自民党本部1階にある101号会議室で開催された。自民党web3PTが4週連続で予定している事業者からヒアリングと議論の場だ。
今回、DAOに関する取り組みをプレゼンテーションしたのは、KDDI、Fracton Ventures,アビスパ福岡、SUPER SAPIENSS、 トヨタファイナンシャルサービス、 RULEMAKERS DAOの6事業者(アビスパ福岡は会場参加は欠席し、取り組みを知る別の人が代わりに資料の紹介を行った)。
会議室の前方に座ったのは、前述の事業者と、主催側として自民党デジタル社会推進本部長の平井卓也議員、web3PT座長の平将明議員、同事務局長で司会・進行を担当する川崎ひでと議員。3名の議員および事業者と対面する座席は、議員、各省庁(デジタル庁、内閣府、警察庁、金融庁、消費者庁、文化庁、法務省、経済産業省、衆議院法制局)、Web3PT関係者、傍聴に訪れたDAO事業者などが埋めた。
第1回目、第2回目と同様に川崎議員が開会を宣言、その後、平井議員が「まったく初めての取り組みだが、非常に内容の濃い議論ができていると思う」「新しいことにチャレンジしている人がこれだけいることを大変心強く思う。そうした人たちがさらに前を向いて進めるよう協力したい」と挨拶。続けて、平議員が「新しいテクノロジーが登場したときに、ローメーカーと直接話しをして、レギュレーションをアジャイルに変えているという、今までできなかったことをできる仕組みをしっかり作っていきたい」と続けた。
以下、第1回、第2回に続き、各事業者のプレゼンテーションとその後の議論の要旨を紹介する(一部、資料非公開)。
KDDI
企業として自らDAOを組成するのではなく、さまざまなDAOと一緒に事業を展開したり、社会に貢献したいとのスタンスを述べ、現在展開している「αUサービス」でのDAOの活用、現状の問題点などを紹介。
Fracton Ventures
デジタル庁Web3.0研究会DAOからスピンオフしたDig DAO、DAO特化型カンファレンス「DAO TOKYO」、福岡市と連携した「DAO CAMP」、マーシャル諸島政府の世界初のDAO法に関わったMIDAOとのパートナーシップなどを紹介。
アビスパ福岡
「Web3 × スポーツの力で、福岡から世界に広がるイノベーションモデルを共創する」のビジョンを掲げる「AvispaFukuoka Sports InnovationDAO」について、DAOから意見を集め、クラブ経営に活用している事例を紹介。
SUPER SAPIENSS
映像監督の堤幸彦氏、本広克行氏、佐藤祐市氏らが共同で立ち上げたプロジェクト。現状主流の「制作委員会方式」ではない、コミュニティメンバーを巻き込んだ作品づくりの事例を紹介。
トヨタファイナンシャルサービス
トヨタ・ブロックチェーン・ラボが進める「コミュニティカーシェアDAO」について、コミュニティによるモビリティの柔軟な所有/利用を実現するために、DAO活用の研究・実証に取り組んでいることを紹介。
RULEMAKERS DAO
DAO型助成金システムを地方創生やソーシャルセクターに活用する構想と、地域全体で水産業の6次産業化を目指す「地域分散型陸上養殖」について紹介。
スマートコントラクトはどこまで必要か?
各事業者の取り組みのプレゼンテーションでは、これまでと同様に、現状直面している課題や問題点、DAOのルールメイクに対する要望があげられた。「集団投資スキーム持ち分の適用除外」「法人格の付与」「構成員の有限責任」、さらには実証のための「DAO特区」などが過去2回と同様に指摘された。
また今回は、スマートコントラクトについて活発な議論が交わされた。スマートコントラクトは「DAOの定義」と密接に関わってくるものであり、今後のルールメイクの際にスマートコントラクトの取り扱いはひとつの論点となりそうだ。
さらに、プレゼンテーションを聞いた省庁から「トークン保有者は事業にどの程度関与しているのか」などの質問もあったり、web3PTに参加している弁護士が解説を加えるような場面も見られた。
最後に平議員が今回の議論を踏まえて、「いろいろな視点を教えていただいた。どうすればその本質を損なわずに、使いやすくできるか。運用ですぐに対応できるものと、法律を作らないといけないものがあるので、時間軸も提示したい」と述べた。
最後となる4回目は、12月6日に開催予定。
|文・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|資料:自民党web3PT
|写真:CoinDesk JAPAN編集部