2024年、トークン化が本当に(ついに)始まる

TradFi(伝統的金融)のリーダーから暗号資産(仮想通貨)の専門家に至るまで、誰もがトークン化(tokenization)の機会は数十兆に達すると予測している。我々はすでにいくつかの魅力的なユースケースを目撃しているが、今後数年でオンチェーン化される可能性のある大量のデジタル化資産と比べれば、まだ大海の一滴に過ぎない。

現在のトークン化の流れは、いつ激流に変わるのか? そして、それを妨げているのは何だろうか?

フォーブス誌は10月、「Why Tokenization is Failing.(トークン化はなぜ失敗しつつあるのか」という挑発的なタイトルで、この問題を深く掘り下げた記事を発表した。著者でデジタル資産リサーチディレクターのスティーブン・エーリッヒ(Steven Ehrlich)氏は、失敗した、あるいは期待外れに終わったデジタル化プロジェクトの数々を紹介し、普及を妨げている問題はテクノロジーではなく、信頼であると結論付けた。

私はそうは思わない。 

トークン化市場が本格的に立ち上がっていない主な理由は、技術的なボトルネック、現在のインフラや相互運用性の限界にある。 しかし昨年は、これらの問題を克服するための驚くべき進歩があった。うまくいかなかったプロジェクトを紹介することは簡単だが、2023年のトークン化の真のストーリーは、市場に参入する大手金融機関の力に後押しされ、具体的な次なる成果の波の実現を可能にする下地が築かれたことにある。

プライベート・エクイティ・ファンドとクレジットが先頭に

トークン化のエコシステムに詳しい人に話を聞けば、2024年は大きな可能性に満ちていると言うだろう。 

まず、プライベート・エクイティ・ファンドが投資家のために新しいトークン化商品を開発しようと強い関心を寄せており、さらに、これらのアイデアを急いで商品化している。 

ハミルトン・レーン(Hamilton Lane)や JPモルガンをはじめとするTradFi大手がトークン化ファンドを開発するなか、この傾向は2024年に入っても続くだろう。また、プライベート・クレジットのような新たな収益源から構築された資産を含む、より多くの仕組み金融商品がまもなく開発されることは必然だ。本質的にデジタルであり、オンチェーンへの移行が比較的容易な金融商品にとって論理的な次のステップだ。

他の資産への必然的な拡大

だが、これらの商品はほんの始まりに過ぎない。次世代トークン化資産には、債券や株式などの商品も含まれるだろう。やがて、美術品や自動車、コモディティ、高級ワインといった現実資産(RWA)がオンチェーンで取引されるようになる。実際、古典的な美術品の分割所有権などのユースケースはすでにある。

特に不動産のトークン化は、従来、複雑で流動性が低かった市場にとって大きな恩恵となる可能性がある。市場がデジタルネイティブになるだけでなく、分割所有やほぼ即時の決済といったメリットも生まれるだろう。

こうした動きは投資をより身近なものにし、硬直化した市場に新たな流動性をもたらす。まったく新しい世代の投資家がトークン化の可能性を利用し始め、レガシー市場に新たな息吹を吹き込むだろう。

新たな機関投資家や資産の登場に伴い、新たな決済手段も登場し、これらすべての商品や市場を相互運用可能にする業界全体の標準化も求められる。

さらにトークン化のパワーと有用性を実証するだけでなく、フォーブス誌が需要の重要な原動力として正しく認識している「信頼」を醸成することにもなる。2024年、新たなトークン化の流れは、ポタポタと落ちる水滴から大河へと変わり、金融業界においてこの数世紀で最も重大な革命が起こることを私たちは確信することになるだろう。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Vlad Busuioc/Unsplash
|原文:2024 Will Be the Year Tokenization Truly (Finally) Begins