Web3に株式市場を通して投資する方法【米国版】

新しいテクノロジーに不慣れな人にとって、イノベーションはときとして、一夜のサクセスストーリーのように見えるかもしれない。しかし実際は多くの場合、数十年もかけて生み出されている。

現在我々は、ブロックチェーン、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、そしてXR(VR・AR・MRなどの総称)という数十年の歳月をかけて生み出された4つのイノベーティブなテクノロジーが一挙にその勢いを増す貴重な瞬間を迎えている。

これらのテクノロジーは個別のものではなく関連している。「インターネット」という用語が、狭い一連のテクノロジーを表すものから、さまざまなテクノロジー、ビジネスモデル、文化的な大変動、社会的変革を包含するものになったように「Web3」という用語もまた、進歩の次の時代を捉えるようになるだろう。

ファイナンシャルアドバイザーや投資家は、こうしたディスラプティブなテクノロジーへのエクスポージャーを得るための最善の方法を模索している。

Web3のレンズ

1990年代半ば、私たちは多くの新興インターネット企業や、シスコ(Cisco)のようなWebの最初の時代の中心と見なされる企業から投資先を選ぶことができた。

ブロックバスター(Blockbuster)、ボーダーズ(Borders)、コンパック(Compaq)、JCペニー(JCPenney)、ゼロックス(Xerox)など、安全な投資先と考えられたレガシービジネスは、それほどうまくいかなかった。これらの企業に共通していたことは、Webの最初の時代によって破壊されたり、あるいは仲介者としての役割から追放されようとしていたことだ。

インターネットのレンズを通して見れば、投資家の評価は違ったものになっただろう。現在のWeb3は、市場に新たなレンズを必要としている。90年代の初期のWebと同様、Web3はビジネスにとって不可欠なテクノロジーとなり、勝者と敗者を生み出すだろう。

これまでのところ、価値のほとんどはイーサリアムのようなブロックチェーンやオープンAI(OpenAI)のような民間企業で生み出されてきた。しかし、株式市場はどうだろうか? 投資家は株式を購入することで、Web3へのエクスポージャーを手にすることができるのだろうか?

私たちは、その答えはイエスだと信じている。現在、数十もの優れた企業がWeb3ツールキットに手を伸ばし、新たな製品やサービスを生み出し、新たな顧客をターゲットにし、新たな機能を発表している。

ステーブルコイン

第一に、米ドル連動型のステーブルコインを考えてみよう。最近、独自のステーブルコイン「PYUSD」を立ち上げたペイパル(PayPal)のような企業の登場で、ステーブルコインはどこでも使える決済ツールになるだろう。

今のところ、PYUSDはステーブルコイン市場のごく一部に過ぎないが、ローンチから最初の100日ほどで総供給量を約1億5000万ドル(約225億円、1ドル150円換算)相当にまで増やし、非常に急速に成長している。

PYUSDとUSDCの最初の105日間での供給量成長率(DeFiLlama)

我々は、ステーブルコイン市場は2024年には2000億ドルに成長し、PYUSDは50億ドルに達すると見ている。ステーブルコインは収益性が高く、発行者は預かり金を米国債に投資、利回りは4~5%になる。

非常にイノベーティブなグローバル金融テクノロジー企業のサークル(Circle)は、人気の独自ステーブルコイン「USDC」(流通高は200億ドル以上)を持ち、株式公開を検討している。純粋なWeb3企業やWeb3テクノロジーを採用する企業の投資対象が拡大していることは、資産運用会社やファイナンシャルアドバイザーにとっては追い風となっている。

ステーブルコイン市場の成長と2024年の成長予測(DeFiLlama)

公開市場やOTCで投資できる商品

第二に、アメリカの公開市場やOTC(店頭)取引商品を通じて暗号資産に直接投資するシンプルで簡単な方法がある。グレイスケール(Grayscale)のイーサリアム・トラスト(ETHE)はイーサリアム(ETH)へのエクスポージャーを提供するだけでなく、ときには30%以上のディスカウントで取引されることもあるため、魅力的だ。

我々は、イーサリアムETFの登場は「もし」ではなく「いつ」の問題であると考えており、実現すればETHEはETFに転換されて、ディスカウントはほぼなくなるだろう。カナダではすでにビットコインとイーサリアムのETFが存在している。

トークンを採用する大手企業

第三に、トークンを受け入れ、トークンで多くの利益を上げ始めている企業が増えている。ナイキをはじめとするイノベーティブな企業はすでにトークンを採用している。例えば、ナイキは2021年12月以降、25種類のNFTコレクションで3億8500万ドルの収益をあげている。

ナイキの足跡をたどっているブランドには、アディダス(NFT収益1億5000万ドル)、ドルチェ&ガッバーナ(2700万ドル)、グッチ(1600万ドル)、ティファニー(1500万ドル)などがある。

ディズニーも、独自のWeb3サービスを立ち上げるため、ブロックチェーン企業のダッパーラボ(Dapper Labs)との提携を発表した。デジタル資産を受け入れる企業はやがて、Webの次なるフロンティアで有利な立場に立つことができるだろう。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Crypto for Advisors: Investing in Web3