暗号資産(仮想通貨)市場は、値動きにつかみどころがなく、多くの人には異質な世界のように思えるだろう。
しかし、伝統的な市場と同様に、暗号資産にも独自のサイクルがあり、価格サイクルは、景気の山から谷、価格回復、その後の新しいサイクル最高値への上昇のタイミングを含めて驚くほど一貫している。
一貫したサイクル
現在、市場は新たなサイクルの初期段階にあると考えられる。ビットコイン(BTC)をベンチマークとして、暗号資産市場のサイクルの典型的な構造を説明しよう。
- BTC価格が史上最高値でピークに達する。
- BTCはその後、80%程度の下落に見舞われる。
- 価格は最終的に、前サイクルの高値からほぼ1年後に底を打つ。
- BTCは回復し始め、史上最高値を更新するまで約2年かかる。
- BTCはさらに1年間上昇を続け、次のサイクルの高値で頂点に達する。
- そしてサイクルが繰り返される。
ここ数サイクルは、このシナリオに忠実に従っている。
こうしたサイクルの一貫性は偶然の産物ではない。より大きな、より強力なマクロトレンドがもたらすもののであり、ビットコインの価値提案のまさに中心にあるものだ。
ビットコインは、多くの人が信じているような「インフレヘッジ」ではない。ビットコインは消費者物価指数(CPI)に対するヘッジではない。通貨価値の下落に対するヘッジだ。
通貨安は金融インフレと中央銀行のバランスシートの拡大によって引き起こされるため、この区別は重要だ。要するに、ビットコインは流動性拡大環境に対する最もレバレッジの効いた投資だ。
ビットコインの半減期は強気相場の主要なきっかけではなく、きっかけは流動性サイクルの上昇トレンドだ。たまたま半減期が毎回、流動性が拡大する環境と同時期に起こっているに過ぎない。次の半減期は2024年4月と予想されており、今回もまさにそのタイミング通りとなりそうだ。
だからと言って、半減期が重要ではないというわけではない。特に、流動性の上昇は資金の流入を急増させる傾向があるため、ビットコインETF(上場投資信託)がそれまでに承認されれば、強気の上昇トレンドにさらにモメンタムを増すことのできる強力なストーリーとなる。
ビットコインの前途は有望
ビットコイン価格は、直近サイクルのピークからほぼ1年が経過した2022年11月に底を打った。これまでのシナリオに従えば、2024年第4四半期までに史上最高値を更新し、その約1年後に次のサイクルピークを迎えることになる。
2022年第4四半期、我々は昨年の世界的な流動性の下落トレンドが底を打ち、ビットコイン価格の底値も過去のものになったと指摘した。その後、中央銀行の流動性が回復したことが、今年のリスク資産(特に暗号資産)の回復の重要な支えとなった。
この傾向は今後も続くと予想される。今後1年~1年半を見通せば、中央銀行のバランスシートは拡大し続けると予想される。そうせざるを得ないからだ。
世界有数の経済大国の多くが巨額の債務を抱え、アメリカも財政赤字は悪化の一途をたどると見込まれている(景気後退がなくてもだ)。財政赤字の拡大は、国債発行が増えるということであり、それは結局、連邦準備制度理事会(FRB)の支援が増えることを意味する。
ただしそれは、下記グラフの関係(アメリカの公的債務総額とFRBの総資産を比較したもの)が劇的にデカップリングしなければの話だ。
現在が新たな世界的流動性上昇トレンドの初期段階にあるとすれば、ビットコインと暗号資産は今後12~18カ月で大幅にアウトパフォームするはずだ。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin and the Predictability of Crypto Market Cycles