2年ほど前、暗号資産(仮想通貨)価格はピークに達した。ビットコイン(BTC)はもう少しで7万ドルになるところだった。その後、事態は悪化し、さらに悪化し、大混乱に陥った。ビットコインは、FTX破綻の余波で1万5000ドルに向かって沈んでいった。
あなたもおそらく覚えているだろう!
価格は2023年の大半にわたって反発したが、苦労して勝ち取った上昇のようで、上昇後にはすぐに後退が続いた。10月中旬、ビットコイン価格は2万7000ドル前後だった。
その後、ビットコインETF(上場投資信託)に対する楽観論と金利の低下に煽られて市場は火を噴いた。ビットコインはコインベース(Coinbase)で一時、4万5000ドルに達した。数日前に2022年初頭以来初めて、4万ドルを超えたばかりだった。
暗号資産に懐疑的な友人が数日前に、ビットコインを買い増ししようと思うとメッセージをくれた。同僚は、暗号資産について知りたがっている人々から連絡を受けているという。この状況は続くのだろうか? 暗号資産は再びメインストリームに向けた動きを見せているのだろうか?
私の20年にわたる市場・金融担当のキャリアをあてにして、私に予測を聞いてきた父を失望させることになるが、私にはまったくわからない。だが、暗号資産市場がこれほど陽気なムードに包まれたのは、もう2年も前だということはわかっている。セルシウス・ネットワーク(Celsiusu Network)、ボイジャー・デジタル(Voyager Digital)、スリー・アローズ・キャピタル(Three Arrows Capital)、FTX、ジェネシス(Genesis)などが破綻する前のことだ。
「FOMO」(機会を逃すことへの恐怖:Fear of Missing Out)がYOLO(人生は一度きり:You Only Live Once)と混ざって戻ってきたようだ。
ウォール街が暗号資産にやって来る
事態がここまで熱狂的になった理由を理解することは、難しいことではない。ウォール街の重鎮であるブラックロック(BlackRock)、フィデリティ(Fidelity)、フランクリン・テンプルトン(Franklin Templeton)がアメリカでビットコインETFを上場させようとしていることは本当に一大事だ。
規制当局の承認が得られれば、証券口座を持っている人なら誰でもビットコインETFを購入できるようになるはずだ。そしてどう見ても、ビットコインETFはまもなく承認される可能性が高い。普通のアメリカ人にとっては、コインベースのアカウントを開設したり、DEX(分散型取引所)やメタマスク(MetaMask)の仕組みを理解したりするよりも簡単でおそらく現実的だろう。
つまり、ブラックロック、フィデリティ、フランクリン・テンプルトンの営業力とマーケティング力が、ビットコインETFの後ろ盾となる態勢にあるようだ。それによって暗号資産に多くの資金が流入すると考えてもおかしくはない。ただし、それが持続的な価格上昇につながるかどうかは議論の余地がある。
その他に私が気になっていることは以下の2点だ。
前途多難なデビュー
FTXが破綻した後、多くの人々がその巨大なライバルであるバイナンス(Binance)に何か悪いことが起こるかどうか考えていた。アメリカの規制当局と法執行機関は、バイナンスを包囲しているように思えた。我々は最近、答えを手にした。
バイナンスは43億ドルという巨額の和解金を支払い、複数の捜査に決着をつけることに合意した。創業者のチャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao)氏はCEOを辞任。しかし、ここに至るまでのさまざまな懸念のわりには、業界はこの事態を冷静に受け止めている。
ジャオ氏の後任であるリチャード・テン(Richard Teng)CEOは先日、初めて公の場でインタビューを受けたが、順調なデビューにはならなかったようだ。テン氏は逃げ腰な印象を与えた。バイナンスは本拠地を明かさず、テン氏は他の問題について曖昧だった。
問題はこれが重要かどうかだ。もしかしたら世界最大の暗号資産取引所が曖昧な姿勢を見せても、トレーダーは気にしないのだろうか?
暗号資産で最強の相関関係
いまや言い古されている感があるが、イーロン・マスク氏の言動は、彼が長年愛してきたミームコインであるドージコイン(DOGE)の価格を動かす。それがまた起こった。
規制当局に提出された書類によると、マスク氏はAI開発のために10億ドルを調達しようとしている(その後、同氏は否定している)。それを受けてドージコインは急騰した。市場で最も奇妙な相関関係のひとつはいまだに健在だ。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:This Bitcoin Rally Feels Different. FOMO and YOLO Seem to Be Back