アジアが次の強気相場を牽引する

我々は次の強気相場の幕開けを迎えた。歴史を参考にすれば、このようなサイクルは、ビットコイン半減期、アメリカの選挙や連邦準備制度理事会(FRB)の金利をめぐるマクロ経済情勢の変化、Web3やDeFiイノベーションの出現など、複数の要因によって動かされる。

相場サイクルを彩るストーリー

例えば、イールドファーミングは、前サイクルを煽った重要なイノベーションだった。次のサイクルでは、ゼロ知識証明、リステーキングのような新しいDeFi手法、さらにはモジュール性とコンポーザビリティを提供し、チェーン間の資産およびデータの移動に適した革新的なブロックチェーン技術などが主役となる可能性がある。

それぞれのサイクルは、ユニークなカルチャー的ストーリーを伴っている。前回のサイクルは、アートNFTが席巻した。Beepleがクリスティーズ(Christie’s)で6900万ドル(約99億円、1ドル143円換算)を売り上げたことに端を発し、PFP(プロフィール画像)ブームと、サザビーズ(Sotheby’s)やペースギャラリー(Pace Gallery)にまで広がった美術品のユースケースの成長によってさらに盛り上がった。

現在のサイクルは、Friend.Techのようなプラットフォームがすでに舞台を整えているように、SocialFiのストーリーによって形成されるだろうと予測されている。

機関投資家や規制のストーリーも重要な役割を果たす。前回のサイクルでは、マイクロストラテジー(MicroStrategy)のマイケル・セイラー(Michael Saylor)氏が企業のバランスシートにビットコインを導入したが、今回のサイクルでは、伝統的な金融機関やフィンテック大手が暗号資産(仮想通貨)ETFを申請したり、ステーブルコインをローンチしている。

規制面では、アメリカはまだ暗号資産規制に苦戦しており、多くのプロジェクトが国外で新しい暗号資産プロダクトを販売する結果となっている。このため、私は次の強気相場はアジアであり、はっきりとした地理的な特色を持つと考えている。

熱気あふれるアジア

アジアにおける暗号資産に対する熱意は見逃せない。アメリカで秋に開催されたあまり活気のないカンファレンスと、Korea Blockchain Weekやシンガポールで開催されたやToken2049の賑やかな様相は対照的だ。

バンコク、ホーチミンシティ、ジャカルタ、マニラ、クアラルンプールなどの都市や、インドのいくつかの大都市は、充実した開発者コミュニティとWeb3活況の本拠地であり、政府の支援と企業への普及に支えられている。

シンガポールで開催されたToken2049の盛況ぶり、APACの投資家による暗号資産プロジェクトへの資金投入、NFTへの意欲の高まりは、総じてこの地域が次の強気市場を牽引する素地があることを示している。

アジア各国政府が暗号資産ハブとしてトップの座を争う一方で、アメリカは暗号資産起業家の意欲を削いでいるようだ。その結果、マーケティングキャンペーンはアメリカを除外し、企業はアジア、欧州、中東で拡大する需要に対応し、起業家は規制環境がより友好的な国に移っている。

Web3マーケティングエージェンシー/プロダクトスタジオのセロトニン(Serotonin)のオフィスをAPACに開設した私は、これらの市場が成長する暗号資産プロジェクトにユニークなメリットを提供することを目の当たりにしてきた。

普及に向けた素地

テクノロジーに精通したモバイルファーストのユーザー層から、分散型プロジェクトへの貢献を熱望する質の高い開発者まで、この地域は可能性に満ちている。

Web3カルチャーに対する熱意があり、新しいテクノロジー、特にウィーチャット(WeChat)のおかげでこの地域ではすでに一般的になっている「SocialFi(ソーシャルファイ)」を導入する態勢が整っている(SocialFiとは、ユーザーがソーシャルなやり取りを収益化し、自身のデータをコントロールできるようにするアプリケーションのこと)。

テレグラム(Telegram)は、アジアのWeb3コミュニティでメッセージのやり取りに広く使用されており、すでにアメリカ以外のユーザーを対象に、アプリ内でセルフカストディの暗号資産ウォレットをテストしている。

香港やシンガポールのような規制面でフレンドリーな場所とこのような背景を組み合わせることで、爆発的な暗号資産ブームが起こる可能性がある。

例えば、香港のFirst Digitalが規制当局の承認を得てステーブルコイン「FDUSD」をローンチすることは、ペイパル(PayPal)のようなフィンテック大手が、アメリカで同じことを行って召喚状を受け取っていることを考えると、我々アメリカ人にとっては想像を絶する。

我々が親しみを込めて呼ぶ「アジアのスピード」は、この地域がWeb3テクノロジーを急速に採用し、貢献していることの証しだ。私はこのダイナミズムが今後の強気相場の方向を決め、暗号資産サイクルに地理的なストーリーをもたらすと信じている。

アメリカが再浮上するまではアジアがリード

しかし、私はこの状況は、次の米大統領選挙後の約1年半で変わると予測している。アメリカで暗号資産に関する規制が明確化され、企業による導入と消費者へのマーケティングという新たなサイクルが始まると考えている。

また、この時期には、Web3のイノベーションと普及の主要な推進力としてアメリカが再浮上し、アジアなどのリーダーシップによって、グローバルなWeb3エコシステムの繁栄に貢献するだろう。

それまでの間、我々の戦略は、アジアを中心にビジネスを成長させることだ。欧米のプロジェクトがアジア市場に参入することを促し、アジア発のプロジェクトとパートナーシップを結んでグローバル化をサポートし、欧州や中東の英語圏の人々へとつなげている。

総合的に考えると、暗号資産の世界は、さまざまなグローバルなパワーによって、より多様でダイナミックな時代を迎えようとしており、アジアが次の強気サイクルをリードするだろう。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:How Asia Drives the Next Crypto Bull Market