2023年、価格上昇率ではレイヤー1ブロックチェーンのソラナ(SOL)がリードし、アルトコインのアバランチ(AVAX)、スタックス(STX)、ヘリウム(HNT)が僅差で続いた。
時価総額最大の暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)も、来年早々に現物ETFが承認されるとの楽観的な見方が広がるなか、好調な1年だった。
ソラナ(SOL)
10月中旬に急上昇を始めたソラナは、年初来700%以上の上昇を記録している。米証券取引委員会(SEC)が6月、暗号資産取引所コインベース(Coinbase)に対する訴訟のなかで、他の暗号資産とともにソラナを「未登録証券」と名指ししたことは、この上昇には影響しなかった。
ソラナはまた、破綻した取引所FTXと、11月に裁判が終了したその創設者サム・バンクマン-フリード氏との関係にもかかわらず、健闘した。
バンクマン-フリード氏は名の知れたソラナの支援者で、自身の会社アラメダ・リサーチ(Alameda Research)とFTXを通じて10億ドル(約1420億円、1ドル142円換算)以上のトークンを取得していた。
SOLの上昇のほとんどは裁判終了後にもたらされた。その後のソラナネットワークでは、月間アクティブアドレスの増加や、コインベースに最近上場されたBONKを含むいくつかのミームコインの立ち上げも見られた。
GSRのシニアストラテジスト、ブライアン・ルディック(Brian Rudick)氏は「FTX崩壊後、ソラナの存続が危ぶまれたが、チェーン上のアクティビティの増加、革新的なテクノロジーに対する再評価、そしていくつかの注目度の高いエアドロップによって、むしろ力強く成功した」と語った。
ヘリウム(HNT)
ヘリウム(HNT)も2023年にかなりの上昇を遂げたが、そのほとんどは12月で、同プロジェクトのモバイル分野への進出を受けたものだった。HNTは1年間で500%上昇した。
ヘリウムは4月に独自ブロックチェーンからソラナブロックチェーンに移行。ヘリウムは、IoT(モノのインターネット)デバイスのためのブロックチェーンベースのネットワークで、ノードをホットスポットとして使用し、ワイヤレスデバイスをネットワークに接続する。
アンバーデータ(Amberdata)のリサーチディレクター、クリストファー・マーティン(Christopher Martin)氏によると、モバイル分野への進出によって、2023年はヘリウムにとって大きな年となった。
「このネットワークはモバイルとIoTで大きな計画を持っており、モバイルプランのユーザーがネットワークへのサポートに対してトークン(MOBILE)を獲得し、そのトークンで月々の料金を支払うことができるようにすることで、ネットワークにフライホイール効果を生み出している」とマーティン氏は述べた。
また「最近のBONKブームによって、(特典としてBONKがもらえる)ソラナの携帯電話Sagaは完売している。Sagaにはヘリウム・モバイルの30日間無料利用権も付いている」とマーティン氏は指摘した。
「要するに、MOBILEとHNTは、ユーザー増加によるネットワーク効果の共生関係により、モバイルネットワークとともに成長することが期待されている」
アバランチ(AVAX)
アバランチでは、トークンの上昇を後押しする多くの企業との提携があった。AVAXは年初来で300%上昇。
アバランチは1月にアマゾン・ウェブ・サービス(Amazon Web Services)との提携を発表し、11月にはJ.P.モルガン(J.P. Morgan)とアポロ・グローバル(Apollo Global)のブロックチェーンプラットフォーム「Onyx」の概念実証プロジェクトに参加した。
元デリバティブトレーダーで、DeFiコンサルティング会社Infiniti Labsの創業者クリス・ニューハウス(Chris Newhouse)氏は、今年に入ってからのアバランチの上昇は、ほとんどがニュースを受けた取引によるものだと述べた。
「ただし今回は、人々が複数のレイヤー1やアルトコインをローテーションで取引していただけの最後のサイクルにおけるストーリーがすべてではないと思う」
「アバランチは企業との提携で大きく前進し、アポロやJPモルガンと提携したほか、年初にはAWSとも提携。機関投資家によるアクティビティにとって、最良のチェーンのひとつになりつつある」
ビットコインもまた、値動きの面では好調な1年だったが、これは主にビットコインETFの可能性をめぐる期待によるものだ。
ビットコインは年初来で164%上昇。ルディック氏は、ETFをめぐる盛り上がりが主な要因だったが、マクロ経済環境も後押ししたと述べた。
スタックス(STX)
スタックス・ネットワーク(Stacks Network)のネイティブ暗号資産スタックス(STX)は、1年間で623%上昇した。このトークンは、ビットコインブロックチェーンにデータを記録する方法であるOrdinalsの盛り上がりと、ビットコインプロトコル上のTVL(預かり資産)が増加するなか、3月に急騰した。
スタックスは、2019年にSECの適格トークン・オファリングを通じて配布された最初のトークンとして知られている。
スタックスはスマートコントラクト用のビットコインレイヤー2プロトコルであり、ビットコインの機能を代替決済システムとしての広く知られた役割から、より多用途でプログラム可能なプラットフォームへと変革・拡張しようとしている。
DeFiLlamaのデータによると、スタックス・ネットワークのTVLも1年間で急増し、1月の600万ドルから5000万ドルに上昇した。
最近では、ベテラン投資家ティム・ドレイパー(Tim Draper)氏の一連の好意的なコメントを受けて、12月20日に27%急騰した。
2024年の予測
ルディック氏は、ビットコインとイーサリアム(ETH)が来年も上昇を続けると予想し、アメリカでビットコインETFが承認されることによる流入がその一因となると述べた。
また2024年には「中国、EU、ブラジルなどによって計画や関心が発表されていることから、分散型IDがブロックチェーンユーザーの新しい波を招き入れると見ている」と語った。
マーティン氏は、新年早々のETFへの注目はさておき、現実資産(RWA)が注目すべき分野になるだろうとして、「今年、基盤は整いつつあるが、メインストリームが追いつくのはまだこれからだ」と述べた。
ニューハウス氏は、レンダートークン(RNDR)やHNTなどのトークンが最近、市場を上回るパフォーマンスを見せるなか、今後も「分散型物的インフラ(Depentralized Physical Infrastructure:DePIN)のストーリー」は注目され続けるだろうと述べた。DePINは、暗号資産を使って、現実世界のインフラ構築にインセンティブを与える。
「伝統的なファンドマネージャーもHNTに関心を示しており、(著名なヘッジファンドマネージャー)ビル・アックマン(Bill Ackman)氏も2022年にこのトークンに支持を表明している」とニューハウス氏は付け加えた。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Solana, Avax, Helium Led Digital Assets Gains This Year. What’s Next?