投資家は、2024年の暗号資産(仮想通貨)クラスの変革的飛躍の可能性に備えるべきだ。2023年に市場構造が大きく進化し、2024年は業界のイノベーションが深化することから、機関投資家への急速な普及、ファイナンシャルアドバイザーの投資アクセシビリティの大幅な向上、(ビットコインに限らない)資産価格の強気要因が待ち受けている可能性がある。
以下では、資産構成を多様化し、思慮深いデジタル資産配分計画を策定しようとする投資家向けに、2024年の暗号資産市場の見通しを示す。
2024年暗号資産市場の見通し
概要
デジタル資産に関して、投資家は次の2つの質問を自問すべきだ。
1. なぜ暗号資産なのか?
2. なぜ今なのか?
どちらも回答は長くなるが、簡単にまとめると以下の通りだ。
- 新しい資産クラス──特に最新テクノロジーに支えられ、場合によっては伝統的金融市場の供給過剰や摩擦に対抗するために特別にプログラムされた資産クラス──の誕生に立ち会っている人はきわめて限られる。
ブロックチェーン指標によって測定可能な、正当な価値に根ざした代替資産へのエクスポージャーを手にすることは、投資分散化の機会であり、一世一代の機会。 - 暗号資産業界は普及の初期段階からマスアダプションへと移行しつつある。業界のリーダーシップ、商品開発、受託者としてのコミットメントにおける大きな変化が2023年の暗号資産業界を席巻し、ますます機関投資家グレードな一連の新しい投資機会を実現している。
全般的な業界トレンドに加えて、2024年には明白なきっかけが暗号資産の投資家への急速な普及の引き金となるだろう。
つまり、ビットコインおよびイーサリアムの現物ETF(上場投資信託)が規制当局から承認される可能性、2024年4月に予定されているビットコイン半減期、ハト派的なマクロ経済環境とインフレ環境の減速などだ。これらはそれぞれ単体で見ても、暗号資産にとっては有意義な強気要因であり、トータルで考えれば、ポートフォリオのポジショニングのための希少な機会となる可能性がある。
暗号資産≠ビットコイン
全体的な資産配分の一部としての暗号資産の位置付けの次に、資産クラスの内部について考察してみよう。
伝統的な立場から見ると、暗号資産には偏在という問題がある。ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)という2つの主要トークンが暗号資産の時価総額の約70%を占めている。
この2つの暗号資産には十分な説得力のある投資テーマが存在するが、DeFi(分散型金融)サービスやスマートコントラクト・プラットフォームのような新しいビジネス分野を牽引するブロックチェーンテクノロジーの基本的価値を見落とさないことが重要だ。
投資家が暗号資産を学ぶ旅を進め、2024年に向けて態勢を整える際には、他のセクターの投資事例にもオープンであり続けることが鍵となる。
株式や債券は分散投資できるように、暗号資産も異なるセクターに分散投資が可能だ(下図参照)。
暗号資産へのエクスポージャーを分散し、投資可能な幅広い資産を網羅することで、単一の暗号資産への集中を抑え、資産クラスとその価値に対する知見を深めることができる。
市場構造の改善
分析から実行へ話を移そう。投資家は2024年に向けて、暗号資産へのさまざまな投資配分方法も検討すべきだ。
2023年は、機関投資家にとって転換点となった。適格カストディ、カストディアンと取引所の新しく、思慮深い連携が進み、投資家が暗号資産へのエクスポージャーを計画する際のより強固な地盤を提供している。
アメリカでは、暗号資産にまつわるレポーティングと税務申告環境の整備、使いやすさが実現しつつある。商品普及サイクルが基本的なパッシブエクスポージャーから洗練されたアクティブエクスポージャーに移行するにつれて、市場イノベーションの次の波は、暗号資産市場へのインテリジェントエクスポージャーで競争する資産運用会社からもたらされる可能性がある。
2024年の展望
来年は暗号資産にとって有利な状況になる可能性が複数の出来事から示されているが、暗号資産の短期間で不安定な歴史が、投資家にとってより良い、より息の長い選択肢にどのようにつながっているかを理解することも重要だ。
2022年、業界の度重なる失敗がこの資産クラスに汚名を着せ、規制当局のチグハグな対応によって、伝統的資産運用会社がこの資産クラスの汚名を返上するためのソリューションをタイムリーに提供することが阻まれた。そのためにブロックチェーンイノベーションの根本的な価値から焦点が逸れた。
しかし、これらの出来事は、訓練を受けた金融エンジニア、CFA(米CFA協会認定証券アナリスト)、伝統的な資産運用会社による、伝統的な資産クラスから合法的な投資ソリューションを移行させる取り組みをあと押しし、よく知られた「TradFi(伝統的金融)」大手が現在、暗号資産関連の指導的ポジションに就いている。
こうした取り組みは2023年に強く結実し、この方向へのトレンドが加速しているようだ。
教訓に基づいたより強固な業界インフラに支えられ、投資家は現在、アーリーアダプターとして落とし穴を回避するだけでなく、2024年にアーリーアだプターとしてのメリットを活用するための、より優れた(しかしまだ初期段階にある)幅広い投資教育、商品オプション、プラットフォームを手にしている。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:BoliviaInteligente/Unsplash
|原文:Crypto for Advisors: The 2024 Year Ahead