大手VC、アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz、略称a16z)の2024年の暗号資産(仮想通貨)トレンド予測は、ビットコイン(BTC)についてまったく触れていない。だが彼らは例外ではない。イーサリアムやソラナで急成長しているエコシステムの盛り上がりがあるため、ビットコインを古臭く、時代遅れで退屈なものと見なすことは簡単だ。
しかし、それは間違い。2024年、世界はこのことを大きく思い知らされることになる。2024年は良くも悪くも、ビットコイン・リベンジの年となるだろう。
私の相反する態度は、皆さんを驚かせるだろう。だが、私はビットコインの変革力については考えを変えていない。2024年は、ビットコインが不可逆的な形でついにメインストリームに躍り出る年になりそうだ。
そして、移行がどのようなになるかによって、分散化と資産のセフルカストディという夢が現実に近づくのか、それともビットコインという「ブランド」が伝統的金融大手バンガード(Vanguard)やアマゾンなどによって、ただの商品の1つとして利用されてしまうのかが決まる。
「ペーパー・ビットコイン」で終わらないために
そのきっかけとなるのが、アメリカで目前に迫っているのビットコイン現物ETFの承認だ。暗号資産(仮想通貨)の元祖であるビットコインへの投資の大きな流れを解き放とうとしている。
だが、問題がある。新たに参入した投資家は、ビットコインに投資したつもりになっていても、実際にはオンチェーンに存在するものには手を出していない人たちだ。ETFは「ペーパー・ビットコイン」であり、ドル紙幣が金(ゴールド)と同じものでないように、本物ではなく、表象だ。
また、原資産を直接保有する明白な理由もなくなる。ブロックチェーンに触れることのない人工的な資産を使って、人々が売買、取引、貸し借りを行うコンシューマー向けアプリの世界が広がるだろう。
ビットコインはより繁栄するだろうが、その背後にある真のセルフカストディというアイデアは死んでしまうだろう。犠牲が大きすぎて割の合わない、こうした勝利を避けるためにはどうすればいいのだろう?
初めてホドラー(HODLer:長期保有者)になる人たちに何かを与えることだ。
ビットコインは、時価総額では常に最大の暗号資産であり続けてきた。しかし、ユースケースに関しては何年もの間、イノベーションの中心地ではなくなっている。
イノベーションにおいてはイーサリアムが優勢で、最近ではソラナなどの人気チェーンも加わっている。このため、それとなく、あるいは明確に、多くの人がビットコインを「終わったもの」、つまり永続的な価値を持つものの、成長や進化の余地がほとんどない完成品と考えるようになった。
価値の保存手段を超えて
私たちはこのような誤解を打ち砕かなければならない。ビットコインが独自の形で成功するためには、単なる価値の保存手段としてではなく、テクノロジーとして進化しなければならない。
そのための舞台は、過去1年間に広く採用されたライトニング・ネットワーク(Lightning Network)のようなレイヤー2ソリューションの急速な発展によってすでに整っている。
しかし、ライトニングは可能性を示すと同時に、まだやるべきことが数多くあることを痛感させるものでもある。現在の形では、ライトニング・ネットワークには現実的な限界がある。
例えば、手数料が高い場合、パフォーマンスは劇的に低下する。最近、ライトニングトランザクションのファシリテーターであるNostr Assetsが、圧倒的な需要のために入金の一時停止を余儀なくされたことがその実例だ。
実際のところ、ビットコインの現在のレイヤー2は、次の10億人のユーザーをオンボーディングする能力をまだ持っていない。
ビットコイン・レイヤー2がすべき主なことは、ビットコイン保有者を「マルチプレイヤーモード」にすることだ。ユーザーはビットコインをやり取りするためにブロックの「Cash App」を必要とせず、電子メールやNostrのようなBTCネイティブアプリを通じて、素早く簡単に送ることができるようでなければならない。
ETFの登場は、ビットコインを大きく普及させるだろう。しかし、真に成功するためには、基盤となるブロックチェーンが活動の場、つまり人々が取引や開発を行える分散型金融エコシステムになる必要がある。何よりも、ネットワークとしてのビットコインは、志を同じくする人々が集まり、取引し、ビジネスを行い、開発できるエコシステムであるべきだ。
これはイーサリアムはすでに実現しているが、ビットコインはまだ実現できていない。ライトニングノードを動かすことしかできないならば、ほとんどの人は取引から先に進むことはないだろう。
危機をチャンスに
ビットコインは、他のチェーンで急増しているDeFiエコシステムに追いつかなければならない。2024年の夏を「ビットコインDeFiの夏」にする必要がある。
幸いなことに、2023年はまだビットコインが革新を終えていないことを示してくれた。プロジェクトとして、アイデアとして、コミュニティとして、ビットコインは終わっていない。多くの人が他のチェーンに移ったと思っていた開発者たちも戻ってきている。
ビットコインは最大のチャンス、そして最大の危機に直面している。ETFが承認されれば、一世一代のオンボーディングのチャンスとなる。しかし、インフラの準備が整わなければ、テクノロジーの根底にある約束は、手軽で便利な「ペーパー」資産に負けてしまう。
コミュニティにとっての挑戦は、すべての人のための分散化された健全な通貨の未来を前進させるために、新しい活動すべてを解き放つことのできるインフラを構築することだ。
そのような展開は、VCやマーク・アンドリーセン(Marc Andreessen)氏のような影響力のある人たちの不意を突く可能性が高いが、ビットコインのストーリーは、否定的な人たちを驚かせるストーリーだ。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:2024: The Revenge of Bitcoin