2023年の勝者は? CoinDesk Market Indexを6つのチャートで分析

確かに我々は、ブロックチェーンテクノロジーについてオタクっぽく語り合うのが好きだし、いつかデジタル金融のまったく新しいインフラ基盤となるだろうと考えている。しかし、投資としてはどうだろう?

資本主義のベースは、投資家が新しいテクノロジーの出現に投資できるようにすることだ。そしてブロックチェーンで注目すべきことのひとつは、業界がブロックチェーンの未来に投資できる独自の市場を生み出したことだ。ただし、これらの市場が規制当局に認められるかどうかは別問題。それまでは、ソラナ(SOL)がウォール街で取引されることはないだろう。

それはさておき、2023年のデジタル資産市場のパフォーマンスを振り返るために、ベンチマークであるCoinDesk Market Index(CMI)と、各セクターの年初来リターンの内訳を見ることにしよう。

以下に、2023年の最大のポイントを浮き彫りにする6つのチャートを用意した。

CoinDesk Market Index(CMI)はS&P500の5倍の伸び

CoinDesk Market Index(CMI)は、CoinDeskの最も広範で包括的な指標で、我々はCMIを「暗号資産(仮想通貨)のS&P 500」と呼んでいる。

12月21日までの1年間で、CMIは2倍以上、正確には125%上昇した。上のチャートに見られるように、今年のリターンの大部分は第1四半期と第4四半期にもたらされた。この間、上昇が見え始めるまでには、いくつもの低迷期があり、業界に多くの不安(と解雇)をもたらした。

時価総額最大の暗号資産であるビットコイン(BTC)はCMIをアウトパフォームしたが、第2位のイーサリアム(ETH)はアンダーパフォームした。CMIの年初来リターンは、米国株のベンチマークであるS&P500の23%の約5倍となった。

CoinDesk Computing Index(CPU)がセクター別のリターンでトップ

CoinDesk Computing Index(CPU)は2023年に167%のリターンを記録し、CMIのセクター別インデックスの中で上昇率トップとなった。CPUは、CoinDesk Digital Asset Classification Standardのコンピューティングセクターに相当する。

コンピューティングセクターの定義は以下の通り。

「コンピューティングセクターは、仲介者を排除し、すべてのユーザーのプライバシーを確保することで、データの共有、保存、送信の分散化を目指すプロジェクトで構成される。分散型の方法でデータやウェブサービスを収集、送信、保存、共有することを目的とするすべてのプロジェクトは、Web3のインフラを構築する上で重要な役割を果たす。これには、オンチェーンおよびオフチェーンデータ送信、ソーシャルデータプラットフォーム、ピアツーピアの安全なデータトランザクション、オープンネットワーク、自由市場のプライベートコンピューティング、分散型ファイル保存およびファイル共有が含まれる」

2位は、CoinDesk Currency Index(CCY)で150%のリターン。CCYには、ビットコイン、エックス・アール・ピー(XRP)、ステラルーメン(XLM)、ドージコイン(DOGE)が含まれる。

インジェクティブ、レンダートークン、ソラナがCMIトークンのリターンを牽引

32倍。これがインジェクティブ(Injective)のネイティブ暗号資産インジェクティブ(INJ)のリターンだ。インジェクティブはコスモス(Cosmos)ブロックチェーンテクノロジーを用いて金融のために構築されたブロックチェーンで、レイヤー1の中では最速と主張している。

8月には「INJの焼却(バーン)量を毎週劇的に増加させる」というトークノミクスである「2.0」アップグレードが実施された。

今年イーサリアムからソラナに移行したGPUレンダリングネットワーク、レンダー(Render)のネイティブ暗号資産レンダートークン(RNDR)は972%急騰した(ちなみにレンダートークンは、最もパフォーマンスの良かったコンピューティングセクターでトップだった)。ソラナのSOLは833%上昇。

ボラティリティの高いデジタル資産市場において、これらの上昇が妥当、あるいは永続的という保証はまったくない。

確実に言えることは、2023年のデジタル資産市場では、歴史的に多くのトレーダーを暗号資産に惹きつけてきたような、驚異的なリターンと高いリスクが再び出現したということだ。

2023年のCMIの大きな敗者は、エイプコイン(ApeCoin)、ルナ(LUNA)、ダッシュ(DASH)、BAL、オーエムジー(OMG)、ジーキャッシュ(ZEC

ここで、以下を長々しく説明する必要はないだろう。2023年、おそらく最大の利益はロングの暗号資産トレーダーにもたらされた。しかし、幸運な、あるいは賢いマネジャーが適切なトークンをショートすることに成功した可能性もある。

そうしたプロジェクトの中には、Terra(テラ)のLUNAのように失敗に終わったものもある。また、イーサリアムPOWのETHWのように、イーサリアムのメインブロックチェーンがプルーフ・オブ・ステーク(PoS)への移行を成功させ、「Shapella(シャペラ)」アップグレードでステーキングからの引き出しを可能にしたため、身を結ばずに終わってしまったものもある。

イーサリアム・ネーム・サービス(Ethereum Name Service)のENSとジーキャッシュ(Zcash)のZECは、多くの暗号資産アナリストがまだ十分に興味深いと考えているプロジェクトの代表だが、今年は厳しい1年となった。

ビットコインがドミナンスを拡大

一般の人には理解しにくいかもしれないが、ビットコインは多くの経験豊富な暗号資産トレーダーから、安全な投資と見られている。

そのため、リスクとリターンを考慮すれば、12月21日までのビットコインの164%という年初来リターンに文句を言うことはかなり難しいだろう(上のチャートはCoinDesk Currency Index(CCY)の年初来のリターン上位トークンを示す)。

リップル・ラボ(Ripple Labs)のネットワークで使用されている決済トークンのエックス・アール・ピーは、米証券取引委員会(SEC)との裁判で有利な決定が下されたため、83%上昇し、まずまずの1年となった。

この判決によって、XRP Ledgerの背後にあるテクノロジーを学ぶ価値が再び突然高まった理由については、以下の記事が参考になる。

関連記事:XRP、中央集権化の懸念が残っているが新たな未来が広がりつつある──SECによる規制の脅威も弱まる

2024年初頭に予定されている大規模なスマートコントラクトのアップグレード「Soroban(ソロバン)」の準備に1年を費やしたステラ(Stellar)のXLMは73%と、XRPにそれほど劣らないリターンを記録した。

CoinDesk Smart Contract Platform Sector(SMT)

CoinDesk Smart Contract Platform Index(SMT)は、ビットコイン以外の大規模な主要ブロックチェーンを対象としており、イーサリアムをはじめ、さまざまなレイヤー1ブロックチェーンや、急速に普及しつつあるレイヤー2ネットワークが含まれる。

2023年のSMTのリターンは107%で、ベンチマークであるCMIをわずかに下回っているが、少なくともその一因はビットコインのアウトパフォームにある。

市場をリードしたインジェクティブとソラナについてはすでに述べた。

イーサリアムは87%とまずまずの上昇となったが、フリッピング(Flippening:時価総額最大のブロックチェーンとしてビットコインを逆転すること)に反対している人たちは、ビットコインの164%上昇との大幅なギャップを指摘するだろう。

アバランチ(Avalanche)のAVAXは、機関投資家から支持を得るだろうというストーリーに乗って、躍進を遂げた。このプロジェクトは、JPモルガンとアポロ(Apollo)による大規模なPoC(概念実証)で主導的な役割を果たした。

オプティミズム(Optimism)エコシステムのOPは、コインベース(Coinbase)のBaseや他のいくつかのプロジェクトが、開発を目指す新しいレイヤー2ネットワークのテンプレートとしてこのテクノロジーを選択したことで上昇した。

スケール・ネットワーク(Skale Network)のSKLは「高スループット、高速ファイナリティ、ガス代ゼロ取引に焦点を当て、イーサリアムの分散型アプリをスケーリングするために開発されたイーサリアムネイティブのマルチチェーンネットワーク」をアピールしており、151%と大きく上昇した。

注目すべきは、ポリゴン(Polygon)のMATICの6.2%という冴えないパフォーマンスだ。ポリゴンはイーサリアム・レイヤー2競争の最前線に自らを位置づける最も積極的なプロジェクトのひとつで、流行の「ゼロ知識」暗号化技術の普及におけるリーダーだったが、このようなパフォーマンスとなった。

コスモス(Cosmos)エコシステムのATOMは、マルチチェーンで相互運用可能なブロックチェーンの世界というビジョンが浸透したにもかかわらず、わずか20%のリターンしか得られず、相対的にはやや期待外れだった。

コスモスは、イーサリアム・レイヤー2から移行した分散型デリバティブ取引所dYdXのための新しいレイヤー1ブロックチェーンとなるなど、いくつかの主要プロジェクトから支持を得た。

2024年、暗号資産市場はどうなる?

暗号資産市場はこの先、どうなるのだろうか? 歴史的には、2024年に予定されている4年ごとのビットコイン半減期が、4年間の市場サイクルを牽引してきた。だが、その歴史は14年しかない。

暗号資産市場が伝統的市場とまったく同じ点は、何が起こるかは誰にもわからない、誰もが推測しているだけというところだ。

あるいは、ウォール街の投資家についてはこう言われている──彼らが買えと言うなら、彼らはもう買っている。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Who Won Crypto in 2023? The CoinDesk Market Index Broken Down in 6 Charts