グレイスケールのGBTC、2021年2月以来初めてディスカウント率がゼロに近づく

世界最大のビットコイン投資ファンドであるグレイスケール・ビットコイン・トラスト(Grayscale Bitcoin Trust :GBTC)で、純資産価値(NAV)に対するディスカウント率が2021年2月以来初めて0%まで縮小した。

グレイスケールは10日に米証券取引委員会(SEC)からGBTCをビットコイン(BTC)現物ETF(上場投資信託)に転換する承認を得ており、GBTCは他の10種類のETFとともに11日午前に取引が開始された。

ディスカウント解消は業界にとって救い

GBTCは2021年2月以来、保有するビットコインの価格よりも割引(ディスカウント)された価格で取引されており、2022年12月には50%近くという過去最大のディスカウント率を記録した。昨年夏にETF承認への期待が表面化するにつれて、またビットコインのセンチメントの改善により、GBTCの純資産価値に対するディスカウント率は大幅に縮小し始めた。

GBTCのETFへの転換をSECが承認する前の8日月曜日には、ディスカウント率は5.6%まで低下していた。

金融顧問会社FundStratのデジタル資産戦略責任者を務めるショーン・ファレル(Sean Farrell)氏は、「GBTCが純資産価値に収束することは、業界にとって大きな救いであり、業界が新たな成熟段階に移行することの象徴だ」と指摘。「この商品、GBTCは、明白な理由によって、過去数年間に多くの不必要な痛みをもたらした」とコメントした。

ディスカウントの原因はファンドの構造

ディスカウントが生じていた理由はファンドの性質によるものだ。GBTCはクローズドエンド型ファンドと同様に機能するものだった。つまり、マーケットメーカーが独自の裁量でファンドを発行・償還できるようにする固有の裁定メカニズムがなかった。

ファレル氏は、「ビットコインは常に信託内に存在していたが、償還メカニズムがないことにより、原資産の価値が大幅にディスカウントされることになった」と指摘。「最も重要なのは、ベンチマークのパフォーマンスを下回ったことで多くの個人投資家に損害を与えただけでなく、この商品が業界全体で担保として使用されたため、大規模な信用破壊にもつながったということだ」と説明した。

GSRの暗号資産リサーチアナリストであるマット・クンケ(Matt Kunke)氏はCoinDeskとのインタビューで、以前は流動性が流通市場の店頭でしか利用できなかったが、GBTCがETFに転換されたことで、指定参加者(AP)が純資産価値でETFを発行・償還してETFの市場価格を純資産価値に結び付けることができるようになったと指摘。「その結果、プレミアム・ディスカウントは今後も額面から数ベーシスポイントしか変わらない可能性が高い」と述べた。

ファレル氏は今後について、最終的に現物イーサリアムETFが承認される可能性が高まっている中、グレイスケール・イーサリアム・トラスト(Grayscale Ethereum Trust:ETHE)の純資産価値に対するディスカウント率がどうなるかは興味深いと述べた。

|翻訳・編集:林理南
|画像:TradingView
|原文:Grayscale’s GBTC Discount Closes to Zero for First Time Since February 2021