ビットコイン・クジラ: その正体と見分け方【基礎知識】

ビットコイン・クジラは、大量にビットコイン(BTC)を売買することで価格に大きな影響を与え、ビットコイン市場の最も重要な参加者の一部となっている。

ビットコイン・クジラについて、彼らが市場にどのような影響を与えるのか、そしてどうすれば彼らを見分けることができるのか、詳しく見ていこう。

ビットコイン・クジラとは?

ビットコイン・クジラとは、ビットコインを大量に保有する個人または事業体のことで、1回の取引で価格に影響を与える可能性がある。

広く受け入れられているビットコイン・クジラの最低保有高は1000BTC。市場における他の「小魚」と比較した場合の、いわゆる口語表現だ。

クジラは、個人の場合もあれば、資金をプールして多額の投資を行うグループのこともある。

クジラの影響とは?

ビットコイン市場における最大のプレーヤーであるビットコイン・クジラは非常に大きな影響力を持っている。

彼らは大量にビットコインを保有しており、取引のたびに、取引所におけるビットコインの需要または供給に大きな影響を与える。その結果、しばしば値動きに影響を与える。

具体的には、ビットコイン価格は、クジラがビットコインのポジションを追加する動きを見せたときに、しばしば上昇する。逆に、保有ポジションの一部を売却した場合、価格は下落する傾向がある。

さらに、クジラのウォレットはほとんどが追跡されており、その結果、より広いビットコイン取引コミュニティがクジラの取引(または予想される取引)に反応し、その(予想される)取引を真似するため、しばしば大きな価格変動をもたらす結果となる。

そのため、一部のクジラは、価格への影響を抑えるために、OTCトレーディングデスクを使って、他のトレーダーと直接取引することを好む。

しかし、取引所で取引しているクジラの中には、自分が大口の買い手または売り手であることを市場に示すことで、市場を自分の望む方向に動かす機会を狙っている者もいる。

クジラを見抜く3つの方法

シンプルな売買注文で市場に影響を与える可能性があることから、ビットコイン・クジラを見分ける方法を知っておくことは、ビットコイン取引の武器となり得る。

ビットコインのクジラを見分ける3つの方法を見てみよう。

  • ブロックチェーン・エクスプローラーを使う: ビットコインは、誰もが、すべての取引にアクセスできる。blockchain.comのようなブロックチェーン・エクスプローラーを使えば、大量のビットコインが動いていることを特定できる。
  • 取引パターンを分析する: クジラは大規模な取引を行う傾向があり、価格の急落や急騰を引き起こす。取引パターンに注意を払えば、いつもとは違うパターンの出現がビットコイン・クジラが動き出したことを知らせてくれるかもしれない。
  • ソーシャルメディア: ビットコイン・クジラの一部はソーシャルメディア上で活発に活動し、投資戦略やビットコイン市場に関する意見をシェアしている。SNSをチェックすることで、彼らの潜在的な取引活動や情報の利用について、ある程度の洞察を得ることができる。

最大規模のビットコイン・クジラたち

ビットコイン・クジラのチャートを見ると、2023年7月現在、1000BTC以上の保有残高を持つウォレットは、2018個存在する。その中には、長期にわたってビットコインを保有し続けている者もいる。

最も注目され、公に知られている5つのビットコイン・クジラを見てみよう。

  • サトシ・ナカモト:ビットコインの生みの親であるサトシ・ナカモトの正体は不明のまま。個人なのかグループなのか明確な証拠はない。
    サトシが誰であろうと、約100万BTCをマイニングしており、ウォレットは何年も不活発なままだ。
  • チャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao)氏: 推定資産が100億ドル(約1兆4800億円、1ドル148円換算)を超えるバイナンス(Binance)の共同設立者は、暗号資産業界のトップビリオネアの1人。ビットコインの具体的な保有高は分からないが、過去に暗号資産がポートフォリオの95%を占めていると述べている。
  • ウィンクルボス兄弟:タイラーとキャメロンのウィンクルボス兄弟は2012年にビットコインをポートフォリオに加え始めた。ある時点で、彼らはビットコインの流通量の約1%を保有していた。
  • マイケル・セイラー氏/マイクロストラテジー(Michael Saylor/MicroStrategy): ビジネス分析ソフトウェア企業マイクロストラテジーを通じて、マイケル・セイラー氏は約15万BTCを保有している。彼は最も声高にビットコインを支持する人物として知られ、特に自身のXアカウントではビットコインのメリットを発信している。
  • ティム・ドレイパー(Tim Draper)氏:アメリカのベンチャーキャピタリストである彼は、闇サイト「シルクロード(Silk Road)」の資産が競売にかけられた際、アメリカ連邦保安局から2万9656BTCを購入したことで知られている。
    彼は政府の行き過ぎた政策に反対し、分散化を提唱している。現在のBTC保有高は不明だが、声高にビットコインを支持し続けている。

ビットコイン・クジラの行動を見抜くことは、市場で抜け目のない動きをすることに役立つ。しかし、クジラでさえも合理性を欠いた感情的な決断を下す可能性があることを忘れてはならない。

中には、自分たちの利益のために市場を操作しようとする者さえいるかもしれない。彼らの活動を追跡するだけでなく、意思決定をする前に彼らの行動の理由を確実に見極めるようにしたい。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin Whales: What They Are & How to Spot Them?