ヴィタリック・ブテリン氏を愛すべき30の理由:30歳の誕生日に寄せて

イーサリアムの共同創設者であり精神的リーダーであるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏は1月31日、30歳になった。彼はこの日を「子供時代の終わり」と呼んでいる。

ブテリン氏はこれまで、多くのことを成し遂げてきた。サトシ・ナカモトの後を追いかけるのは大変だったが、ブテリン氏はエゴを一切排除することで、その難題に挑んできた。彼の数々の功績を称え、CoinDeskはブテリン氏を愛すべき30の理由をまとめた。もちろん、リストは現段階のものだ。

1. ありのままを語る

2017年、新規コイン公開(ICO)ブームの絶頂期に暗号資産(仮想通貨)の時価総額が500億ドル(約73兆円、1ドル146円換算)を超えたとき、ブテリン氏は「我々はそれを得るのに値するのか?」とツイートした。大型ICOの多く(すべてではない)が何ももたらさなかったことを考えれば、妥当な質問だ。

2. 正しい心

イーサリアムを創設したブテリン氏の使命は、考え得るあらゆるアプリケーションを実行できる「世界のコンピューター」を開発することだった。

しかし、そのキャリアを通じて、彼は常に現実世界の問題を解決するプロジェクトにスポットライトを当ててきた。

3. 恩義に報いる

ブテリン氏は17歳の時に父親からビットコインについて学んだ。現在、彼の両親であるドミトリ・ブテリン(Dmitry Buterin)氏とナタリア・アメリン(Natalia Ameline)氏はともに暗号資産業界で働いている。アメリン氏はイーサリアムのレイヤー2「Metis」の開発に携わっている。

4. ビットコインナーの中のビットコイナーだった

ブテリン氏は2011年、ビットコインに出会った頃、この新興のテクノロジーについて学べることはすべて学ぼうと、現在は廃刊となった『Bitcoin Weekly』に最初の暗号資産であるビットコインについて書き始めた。

その年の暮れには、『Bitcoin Magazine』を共同創刊し、同誌で最も多作なライターの1人となり、スマートコントラクトの導入やレイヤー2によるスケーリングなど、現在も議論されているアイデアを取り上げ、考え出した。

5. 謙虚

彼は『フォーブス』誌が選出する、世界を変える30歳未満30人のリストや、若手ビジネスリーダーを選出する40歳未満の40人リストに名を連ね、名誉博士号を授与され、多くの雑誌で取り上げられている。

しかし、ブテリン氏が金や名声のためにやっていると主張する人はいない。

6. 経済学に貢献

ブテリン氏はグレン・ワイル(Glen Weyl)氏とゾーイ・ヒッツィグ(Zoe Hitzig)氏とともに、クアドラティックボーティングと呼ばれる、中央の意思決定者を必要とせずに資金を公平に分配する仕組みの開発に貢献した。

このシステムは現在、暗号資産の世界の至るところで機能しており、特に分散型アプリのGitcoinでは公共善の実現に資金を提供している。

7. 時間だけでなくお金も惜しまない

ブテリン氏は近年、AIの安全性や長寿の研究、その他のより現実的な問題に対して、数多くの慈善的な寄付を行っている。

8. 自分を利用とする人たちを逆手にとって、善を成し遂げる

2021年に「犬系トークン」が初めてブレイクした時、柴犬コイン(SHIB)の開発チームは、SHIBの流通量の約5%をブテリン氏に送った。プロジェクトを売り込むための露骨な試みだった。

ブテリン氏は、当時10億ドル以上の価値があったこれらのコインをインドのCrypto Covid救済基金に寄付した。

9. 自分が信じる大義のために発言する

ブテリン氏はロシア生まれだが、ウクライナ侵攻に反対を表明しており、侵攻の初日には「イーサリアムは中立だが、私は中立ではない」という珠玉のツイートを投稿した。

10. シンプルなものを愛する

ブテリン氏の現在のX(旧Twitter)でのプロフィール「mi pinxe lo crino tcati」は、人工的に開発されたルールベースの言語ロジバン(Lojban)で「私は緑茶を飲む」との意味になるようだ。彼はまた、緑茶を赤ワインに混ぜることでも知られている(誰も完璧であることはできない)。

11. 完璧なファッションセンス

ユニコーンのTシャツであれ、クマの着ぐるみであれ、映画『マトリックス』から飛び出してきたようなサングラスであれ、ブテリン氏は間違いなく、着こなしを成功させる方法を知っている。

12. バカを演じる余裕がある

カナダのトロントで開催されたEdcon 2018の開会式で、ブテリン氏は「アナグマ ダンス」を披露した。

13. 独特の声

『ザ・シンプソンズ』の教授と『セサミストリート』に登場するカエルのカーミットの中間のようなブテリン氏のユニークな声は歴史に残るものだ。

14. 自分の考えを進化させ、後から過去の自分を疑うことを恐れない

ブテリン氏は2022年の年頭に、これまで発言したり書いたりした数十の事柄を再考するツイートを投稿した。彼がこのようなことをしたのは、これが最初でも最後でもない。

15. 自分のヒーローを批判することを恐れない

ブテリン氏を含め、多くの暗号資産界のリーダーたちが、ジェームズ・デール・デビッドソン(James Dale Davidson)氏とウィリアム・リース=モグ(William Rees-Mogg)氏の『The Soverign Individual(主権ある個人)』を愛読書として挙げている。

ブテリン氏は2020年、この本の核となる概念と、出版から30年近く経った今日のデジタル世界にそれらがどのように適用されるかを詳細に考察し、その正誤について論じている。

16. アクセシビリティの擁護者

イーサリアムはオープンで、インターネットに接続できる人なら誰でも利用できるように設計されているだけでなく、ブテリン氏は手数料を下げ、アクセスを増やし、利用を補助する方法を常に考えている。その中には、他のブロックチェーン擁護派が切り捨てるかもしれない、物議を醸すような手段も含まれている。

17. パーティーの開き方を知っている

モンテネグロで開催された、暗号資産と長寿研究に興味を持つ人々のための1週間のリトリート&勉強会「Zuzalu」に参加した人に聞いてみてほしい。

18. 言行一致の人

ブテリン氏はFarcasterのようなソーシャルメディアアプリからGitcoinのような寄付プロトコルに至るまで、分散型アプリケーションを頻繁に使用している。まさに理想的なイーサリアムユーザーかもしれない。

19. ライバルチェーンをゼロサムではなくゼロプラスと見ている

ソラナ(Solana)ブロックチェーンのエコシステムと密接に結びついていたFTXが破綻し、サム・バンクマン-フリード氏が凋落した後にソラナが荒らされたとき、ブテリン氏は次のようにツイートした。

「ソラナには真面目でスマートな開発者コミュニティがあり、ひどい日和見主義の金儲け主義者たちが洗い流された今、このチェーンには明るい未来があるとスマートな人たちが教えてくれた。外からではわからないが、コミュニティが繁栄する正当な機会が与えられることを願っている」

大げさに言うつもりはないが、このたった1つのツイートが、ライバルプロジェクトであるソラナへの信頼を再確認させることに大いに役立った。彼は他人が倒れているときに蹴るのではなく、手を差し伸べる。

20. テクノ・オプティミストでありながら、現実的な考えを持っている

AIと暗号資産がどのように相互作用し得るかについての先日のブログを見てみよう。ブテリン氏は、AIエージェントをオンチェーンで動作させ、「基本的なメカニズムは以前とほぼ同じように設計され続ける」といった、彼が最もうまくいきやすいと考える分野に大きな重点を置いている。

21. 造語の作り方を心得ている

人類が技術の進歩に配慮したアプローチをとることを提案する、最近の「Defensive/Decentralized/Differential Acceleration」、すなわちd/acc(超攻撃的、親テクノロジー、親資本主義のe/accをもじったもの)から、ブロックチェーンの「トリレンマ」まで、ブテリン氏は一般的に使われるようになった言葉を数多く作ってきた。

22.(良い意味で)ちょっとしたアナーキスト

ブテリン氏はイーサリアムの創設に加え、コーディ・ウィルソン(Cody Wilson)氏が手掛け、検閲に強いとされるDarkWalletなど、より過激なプロジェクトにも貢献している。

23. 敬意を忘れない

イーサリアム(Ethereum)という言葉は、イーサネット(Ethernet)、つまりインターネットの物理的なバックボーンに由来するとよく言われる(ブテリン氏がウィキペディアを読んでいて出会った、中世に第5の元素と考えられていた「エーテル」に由来するという説もある)。

24. 開発する時間がなければアイデアを提供する

最大のDEX(分散型取引所)であるユニスワップ(Uniswap)を例に挙げておこう。

25. マスター開発者

これは自明のことのように思えるが、もし例が必要なら、よく「飛行機のエンジンを飛行中に交換する」と表現される「Merge(マージ)」を考えてほしい。

26. イーサリアムの「ソーシャルレイヤー」の最良の側面を体現している

悪名高いDAO事件の後、ブテリン氏は当初、チェーンの歴史が書き換えられないように、イーサリアムのソフトフォークを提唱した。

やがて技術的な課題もあり、コミュニティは「ハードフォーク」を選択し、イーサリアムとイーサリアムクラシックという2つのチェーンが誕生した。

この瞬間は、暗号資産の歴史において重要な意味を持つ。なぜなら、コードが常に絶対であるとは限らず、プロジェクトがどのように発展すべきかについて人々が発言権を持つことを示したからだ。

27. 金目当てではない

ブテリン氏は最近のブログで、暗号資産業界がいかにお金にフォーカスしたものになっているかを嘆いた。彼は「イーサリアムをサイファーパンクに戻したい」と考えている。

28. ユーモアのセンス

ブテリン氏がイーサリアム開発の来るべき段階を表現するために、Merge、Verge、Surge、Purge、Splurgeという用語を作ったのかどうかはよくわからないが、彼がそれを受け入れていることは確かだ。

29.(正当な理由があれば)復讐しようとする

イーサリアム創設のきっかけとなったのは、ブテリン氏がゲーム「World of Warcraft」で使っていたウォーロックのキャラクターが、彼の言葉を借りれば「弱体化」された後だったことはよく知られている。

ゲーム開発者のBlizzardが彼のお気に入りのSiphon Lifeの呪文をダウングレードした後、ブテリン氏は人々がデジタルライフを自らコントロールできるようにする方法を考え始めた。彼はクレイグ・ライト(Craig Wright)氏の動向も追っている。

30. 暗号資産が常に必要としてきたリーダーである

ビットコインの生みの親であるサトシ・ナカモトが去った後、誰かが分散化、検閲への抵抗、信頼できる中立性といった理念を守り続けなければならなかった。

ブテリン氏は脚光を浴び続ける一方で、今日、最も強力な組織の多くに反感を抱かせるテクノロジーを開発するという、過酷な仕事に直面している。

彼が最近のマニフェストで書いているように、彼はそれが正しいと思うから、オープンソースとオープンアクセステクノロジーという目標が最終的に世界に利益をもたらすと思うからやっている。

「私は、これらの(テクノロジーが)深く善であり、人類の手の届く範囲を惑星や星までさらに拡大することが深く善であると信じている。なぜなら、人類が深く善であると考えるからだ」

暗号資産が善なのは、ブテリン氏が善だからでもある。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:ヴィテリック・ブテリン氏(TechCrunch/Wikimeda Commons、CoinDeskが加工)
|原文:30 Reasons to Love Vitalik Buterin, on His 30th Birthday