ビットコインETFがポートフォリオに与える影響──業界のゲームチェンジャーか?

米証券取引委員会(SEC)は1月11日、11のビットコインETFの取引開始を承認した。アメリカで初めてビットコインETFが承認されたことで、世界中の投資家は、短期および中長期的な、より広範な資産クラスへの潜在的影響を注視している。

噂で買い、事実で売る?

ビットコインは2023年、160%上昇し、暗号資産(仮想通貨)市場の大幅上昇を牽引した。スリー・アローズ・キャピタル(Three Arrows Capital)、セルシウス(Celsius)、FTXの終焉を見たスキャンダルまみれの2022年の後、追悼記事のインクが乾く前にビットコインは見事な復活を遂げた。

価格復活の大きな原動力は、SECによるアメリカ初のビットコインETF承認への期待だった。資産運用大手ブラックロック(BlackRock)が2023年6月15日にビットコインETFを申請すると、ビットコインは1週間で約22%上昇した。

さらに10月23日、グレイスケール(Grayscale)のビットコインETF申請の却下を撤回することを事実上命じる裁判所の判決を、SECが不服としないことが明らかになると、ビットコインは再び2日間で15%上昇した。

2023年第4四半期(10−12月期)のアメリカの経済環境やマクロ的な追い風など、他の要因も上昇を後押ししたが、主な原動力はまさにETFだった。

このバイナリーイベント(二者択一の出来事)に固執することは、複数のリスクを伴った。

否定派に言わせれば、その後のストーリーが欠如すれば、典型的な「噂で買い、事実で売る」状況になる。バイナリーイベントに固守することは、暗号資産がメインストリームになるにはまだ長い道のりが必要であることを示していた。

ビットコインはETF承認以来、上昇基調で取引されているが、多くのテクニカルアナリストが予測していた大幅な上昇は現実していない。

だがビットコインETFへの資金流入は力強いもので、2月12日には97億ドル(約1兆4550億円、1ドル150円換算)の資金流入が記録された。

中期的な資産クラスの成長への影響

ビットコインETFの承認は、1兆7000億ドル規模のデジタル資産業界にとって画期的な出来事だった。

機関投資家が参入したことで、ビットコインに対する需要は大きく伸びるだろう。例えば、ギャラクシー・デジタル(Galaxy Digital)のアナリストは、ビットコインETFへの資金流入は、2024年は144億ドル、2年目は270億ドル、3年目は390億ドルになるとみている。

資金流入は、現在、大規模なビットコインへのエクスポージャーを確保できていない資産運用セクターから主にもたらされるだろう。また、数十億ドル規模の投資は、ビットコインの価値を大きく変えるだろう。

機関投資家からの資金流入は、暗号資産の資産クラスとしての地位をさらに強固なものにする。流動性はさらに安定し、ビットコイン価格は極端な価格変動の影響を受けにくくなる可能性がある。

さらに、他の暗号資産のETFの承認、VCマネーの流入、決済手段としての暗号資産の受け入れ拡大など、ポジティブな副次的効果もある。具体的にはイーサリアムETFの承認が次の注目イベントとなる。決定の期日は5月23日だ。

バランスの取れたマルチアセット・ポートフォリオとは

マルチアセット・ポートフォリオに少額の暗号資産を加えることで、ポートフォリオのリスクプロファイルに影響を与えることなくリターンを向上させることができる。

下図は、バランスの取れたポートフォリオのわずかな割合をビットコインに配分することによる効率的フロンティアの増加を示している。

(MSCI World AC 50%、Bloomberg Barclay Global Aggregate Index 40%、Bloomberg Commodity Index 10%で構成されるバランスの取れたポートフォリオ。出典:AMINA Bank。開始日:2016年1月1日、終了日:2023年12月29日)

ほとんどの機関投資家は、暗号資産がポートフォリオの中で果たすべき役割があることに同意しているが、専門家を二分する疑問は、暗号資産へのエクスポージャーを得る最も効率的な方法は何かだ。

ビットコイン? コインのバスケット? どのコインをバスケットに含めるべきか? 加重方法は? リバランスの頻度は? ユニバースの選択から規制遵守、市場構造や流動性に至るまで、多くの要因がこのセクターへの投資の結果を左右する可能性がある。

時価総額加重を厳格に守ると、ポートフォリオが過度に集中し(ほとんどがBTCETH)、アルトコインへのエクスポージャーが制限され、ポートフォリオの分散に影響を与える可能性がある。

別のアプローチでは、アルトコインへのエクスポージャーを体系的かつ制御された方法で増加させることを目的とし、リスクパリティと時価総額に基づくスマートベータ配分を実施することで、上記の問題に対処する。他の「ファクター」加重手法も、長期的バイ・アンド・ホールド投資において同様の有望な結果を示す可能性がある。

暗号資産に投資する場合、単純なポジションサイジングの問題にとどまらず、分散投資、コインの選択、リバランスの頻度、加重方法などを考える価値がある。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Crypto for Advisors: Impact of the Spot Bitcoin ETFs for Portfolios