メルカリは15日、ビットコイン(BTC)を使って商品を購入できるサービスを開始した。欲しい商品を選び、購入手続き画面で「ビットコインの使用」を選ぶだけで、ビットコインを保有するメルカリユーザーは決済が完了する。
新機能については同日、暗号資産やブロックチェーンに関連するサービスを開発する子会社メルコインの中村奎太氏が記者発表を行った。夜の経済ニュースにも取り上げられるなど、メディアの関心は高かった。
一方、ビットコインは記者発表前日の14日夜、円建て価格が暗号資産(仮想通貨)取引所bitFlyerで約780円まで上昇、過去最高値を更新した。円安が進む中、日本では価値保存の手段、よりわかりやすく言えば「投資対象としてのビットコイン」にますます注目が集まっている。
メルカリの新機能は「ビットコイン決済」を推進しようとする取り組みだ。ビットコイン決済は、自国通貨への信頼が低く、決済インフラが脆弱な新興国では有用性が期待できるものの、日本のような先進国では必要性・実現可能性が見つけにくいとする向きも強い。
メルカリ、メルコインはビットコイン決済の可能性を切り開くことができるのか。今後、なにを目指そうとしているのか。発表資料や中村CEOとの質疑応答を見てみよう。
逆風の中、新しいユーザー層を開拓
メルカリは2023年3月、メルカリでの売上金を使ってビットコインを購入できるサービスを開始、7カ月で利用者は100万人を超えた。2023年の新規口座開設数の大部分を同社ユーザーが占めた。ビットコインが年末に向けて上昇したとはいえ、大半は弱気相場だった2023年。同社が逆風の中でも暗号資産のすそ野を広げたことは間違いない。
しかも、新しいユーザー層は、従来の「投資」を目的としたユーザーとは違った層だった。売上金を使ってビットコインを購入。その後、売却してメルカリで買い物をしたユーザーは口座開設者の48%にのぼる。
「(ビットコイン売却後に)ユーザーが購入した商品は従来と大きく変化しておらず、いつもの体験の中にビットコインが浸透してきていると考えている」(中村氏)
同社がビットコイン取引サービスを利用しているユーザーを対象に行ったアンケートでは、83%が決済に「利用してみたいと回答している。新機能の導入によって、ビットコインがそのまま決済に利用できるようになる。利用率が実際にどうなるか、動向が注目される。
「ビットコイン決済は、さまざまな新しい体験に繋がると考えている。(決済手段に)価格が変動するお金が加わることで、値動きに合わせた購買体験が生まれるのではないか。30億を超えるメルカリのさまざまな商品とビットコインが交換されることになり、暗号資産を使った価値交換の手段が拡大する大きな第一歩になると考えている」(中村氏)
世界の暗号資産決済市場とメルカリの規模感
中村氏はビットコイン決済の事例として、海外での事例に触れ、「なじみのあるブランド、飲食店、オンラインサービスで利用可能になっている」と指摘。
さらにデータをもとに、世界の暗号資産決済の市場動向に触れ、2023年の1.3兆円から、2025年には1.6兆円に拡大すると述べた。さらに暗号資産決済のパイオニア企業BitPayとメルカリのデータを比較。メルカリのGMV(流通取引総額:Gross Merchandise Value)は年間1兆円を超え、1秒で売れて個数、つまり1秒での決済回数は7.9回と述べた。つまり、メルカリという世界でも有数の規模を持つマーケットプレイスに暗号資産決済を導入することで、同社は暗号資産決算シーンに大きな存在感を発揮しようとしている。
さらに時期未定だが、ビットコイン決済の次は、NFTなどのデジタルアセットやアルトコインにも取り組んでいくと中村氏は述べた。
プレゼンテーション後の質疑応答でも、ビットコイン決済の有用性・実現可能性に関する質問が見られた。現在、日本では当初期待されたほど、ビットコイン決済が広がっていない現状に対して、中村氏はユーザーのモチベーションをあげた。
「これまで、国内の暗号資産保有者の目的は、投資・投機が中心。決済に使いたいわけではない。モチベーションがずれている。一方、メルカリでは、ユーザー側に決済したいというモチベーションがあると考えている。その仮説を今後、検証していきたい」
さらに具体的な数値はまだ明らかにできないとしつつ、「目標としては、世界で(ビットコイン決済が)最も使われる場所を目指したいと考えているし、目指せるポテンシャルがあると思っている」と述べた。
近い将来、ビットコイン決済において、日本が突然、注目を集めるかもしれない。
|文:増田隆幸
|トップ画像:メルコインCEOの中村奎太氏(メルカリ提供)