Play to Earn(P2E)はゲームと暗号資産を成長させる

ビットコインは「元祖Play to Earn(P2E)ブロックチェーンゲーム」と考えることができる。プレイヤーがコンピューターのパワーを使って複雑なパズルを解き、コインをマイニングするデジタル宝探しだ。

プレイヤーが参加すればするほどコインのマイニングは難しくなり、報酬は増える。獲得したコインは、物を買ったり、他のプレイヤーと交換することができる。腹立たしいと同時に中毒性のあるビットコインは、ルールに基づいた競争的なゲームであり、スコアが記録され、楽しい。

スマートコントラクトの登場により、暗号資産(仮想通貨)はさらに「本物の」ビデオゲームのようになり、開発者たちはブロックチェーンの金融的な性質に、NFTのようなプレイ可能なキャラクターや、結果を変更できないピア・ツー・ピア・バトルといった新しい機能を追加している。

暗号資産ゲームは最近、再びレベルアップし、世界創造や伝説、次世代グラフィックス、没入型体験などが取り入れられている。この進化により、暗号資産とゲームの両分野に新しいカテゴリーを生み出し、資金、才能、新規ユーザーを惹きつけている。

暗号資産業界は長年、新規ユーザーを取り込むことに苦戦してきた。そのため、アクシー・インフィニティ(Axie Infinity)のようなゲームを通じて、ビデオゲームをプレイするだけで魔法のようなインターネットマネーを獲得できるという見通しに魅了され、何百万人もの初心者がWeb3に殺到したときには、信じられないような興奮があった。

もちろん、このトレンドを少しでも追っていた人なら、それほど簡単なことではなかったことをご存知だろう。アクシーのP2Eモデルの最初のバージョンには欠陥があることが判明し、最終的にはエコノミーが立ち行かなくなった。

それでも、多くの人々にとって、遊びの時間と収入を得る力を組み合わせるという当初のアイデアは夢のようなものだった。

「ゲームはどうあるべきか」議論は不毛

一方、伝統的なゲームの世界の人々はあまり乗り気ではなかった。業界のベテランたちは、金融と楽しさを混ぜ合わせるというアイデアに憤慨し、「仕事で稼ぎ、趣味に金を使え」といったスローガンを唱えた。

P2E擁護派は、暗号資産エコノミーを盗み、ゲームから本質的な楽しみを吸い取ろうと躍起になっている魂のない利益追求者だと批判された。

「ゲームはどうあるべきか」についての、こうした終わりのない議論は無意味だ。面白さとは極めて抽象的な概念であり、ある人にとっての面白さは、別の人にとっての面白さではない。

ビデオゲーム業界は現在、音楽業界と映画業界を合わせたよりも大きく、40年間で590億ドル(約8兆円8500億円、1ドル150円換算)から1650億ドルに成長した。2027年には4740億ドル規模になると予測されている。同じ顧客層に対するゲーム機の販売台数やゲームの販売本数を増やすだけでなく、ゲームの定義を広げて新たなユーザーにアピールすることで成長した。

ゲーム業界は「キャンディークラッシュ」のプレイヤーが「コール オブ デューティ」や「Wii Sports」のプレイヤーとは違う何かを求めていることを認識したときに拡大した。

しかし、これは容易なことではなかった。業界は革新に抵抗してきた実績がある。AAAゲームの開発者は、ゲームを始めるコストをゼロにするF2P(Free-to-Play)ゲームを嫌った。ハードコアゲーマーは、カジュアルゲームやハイパーカジュアルゲームのシンプルさを嘲笑した。また、コンソールやPCの信奉者たちは、当初、モバイルを批判した。

今日、それぞれの例の後者が業界の礎となっているのは、既存の収益を切り崩すのではなく、収益を超大型化する新市場を発見、あるいは創造したからだ。P2Eもまた、まだ十分なサービスを受けていない市場層、つまり、主にお金を稼ぐためにプレイするプレイヤーに対応することで、同じような道をたどる可能性がある。

金銭的動機に突き動かされたプレイヤーたち

「プロダクトマーケットフィット」はどこに行ったんだ?
「まったく新しいタイプのゲームを作りたい人?」
「まったく新しいタイプのプレイヤーを見つけたい人?」

「World Of Warcraft(WoW)」の中国人ゴールドファーマー(オンラインゲームで流通するコインやアイテムを稼ぎ、それをリアルマネートレードによって現金化する人)から「Old School Runescape」のベネズエラ人に至るまで、マルチプレイヤー・オンライン・ゲームでは、金銭的な動機を持つプレイヤーは、より一般的なゲーマーから悪者扱いされてきた。歓迎されない部外者とされ、弱体化、ハッキング、不正行為で批判され、バーチャル経済を不安定化するとして批判された。

グラインダー、エクストラクター、投機家と呼ばれるこれらのタイプのプレイヤーは、他のプレイヤーをバーチャル害虫駆除業者の役割に駆り立てることさえある。彼らはわざわざ、ゴールドファーマーを現行犯で見つけて、駆除する。ゲームメーカーも、ゲームの外で資産をリアルマネーと交換するプレイヤーを厳しく禁止し、追放している。

それでも、こうしたエクストラクターたちは、WoW、Runescape、EVE Online、Second Lifeなどのゲームで生き残り、苦労して稼いだゴールドやその他のゲーム内資源をデジタル・ブラック・マーケットで売りさばき、ゲームの利用規約に違反して追放されるのではないかと怯えながら生活している。

その技術でキャリアを積んできたエクストラクターたちは、おそらく数え切れないほど何度も追放されてきたことだろう。追い出されるたびに戻ってきて、またやり直している。

稼ぐことが広く受け入れられていると思われるWeb3でさえ、このタイプのプレイヤーは、前サイクルでの初期のP2Eゲームの上昇に次ぐ上昇、そして最終的な崩壊を促進したとして悪い評判を得た。

P2Eは失敗し、Web3開発者たちは、「play-TO-earn」を 「play-AND-earn」に改名し、従来のビデオゲーム業界全体に広まっている「楽しさ第一」と同等かそれ以下となるよう、稼ぐ要素を格下げすることで、この汚名から距離を置こうとした。

「暗号資産の冬」を利用して、開発者たちはゲームの金融化以外のすべての改善に取り組み、Web3業界はその恩恵を大いに受け取った。

Pixels、Parallel、Nifty Islandといったエキサイティングなタイトルがリリースされたことで、面白くない、ループがつまらない、アートワークが粗末、といったWeb3ゲームに対する従来の不満はほとんど否定された。

Web3ゲーム開発者の次なる課題

Web3開発者の次の課題は、ゲームを支えるバーチャル経済をスイス経済のように健全で安定したものにし、P2E志向の人々を排除するのではなく、両手を広げて歓迎できるようにすることだ。

あなたは的外れなことばかり言っている。

インセンティブは楽しみの一部だ。

実のところ、VALORANTやコール オブ デューティ、あるいはMinecraftを私にやらせても、インセンティブがないため、自動的に面白くなくなる。

インセンティブは今やゲームの一部だが、これを理解している開発者はほとんどいない。

我々は、P2Eゲーマーのことを、価値を奪う無益なプレイヤーとして考えることもできれば、彼らが高度に関与し、戦略的なプレイヤーの集団としてもたらす価値に注目することもできる。

エクストラクターは、ゲーム内で有用なタスクを実行することで、堅固なバーチャル経済において重要な役割を果たすことができる。

通常、このような仕事をこなすには多大な時間とある程度のスキルが必要であり、時間のないプレイヤーは自分でそのような仕事をしなくて済むという贅沢のために喜んでお金を払う。今日に至るまで、このようなオープンな市場交換を完全に合法化し、経済のバランスを完全に崩さないようにゲームを設計した人はいない。

結局のところ、Web2ゲームでは、利用規約に反することになるため、このようなことはできなかった。

Web3では、初めてセカンダリーマーケットを統合し、ゲーム内エコノミーを安定させ、存続させ、繁栄させるために、閉鎖的である必要も、中央集権的である必要もないことを証明するチャンスがついに訪れた。

P2Eモデルは、その欠点について徹底的に精査されてきた。つまり、持続可能なバーチャル経済を設計する上で、やってはいけないことについて多くを学んだに違いない。

これまでのすべてのゲームにはお金を使う人がいて、一部のプレイヤーは稼ぐ力を楽しんでいることは明らかだ。問題は、誰もが稼ぐことを期待したときに生じる。しかしいつの日か、お金を使う人と稼ぐ人のバランスが取れたゲームが生まれるだろう。

Web3ゲームは、ゲームプレイの中核となり、ゲームのバーチャル経済において本質的な目的を果たすようなP2E主導のトークノミクスを提供し、金銭的な動機付けを持つプレイヤーを長期にわたって魅了し、報酬を与えることで、より良い結果をもたらすだろう。

そうすることで、何十億人もの人々をゲームや暗号資産に惹きつけることになるだろう。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Play-to-Earn Will Make the Pie Bigger