ETFだけでなく、暗号資産を自ら保有できる手段を提供しよう:バイナンスCTO

1月にアメリカでビットコインETFが承認されたことは、特に規制面や機関投資家の参入に関して、ビットコインと広範な暗号資産(仮想通貨)にとって間違いなく力強い進展だ。

技術的な観点から見ると、ビットコインETFに対する好意的な受け止めは、暗号資産業界がマスアダプションを望むのであれば、ユーザーにとってのハードルや摩擦を減らし続ける必要があることを思い起こさせる。

米証券取引委員会(SEC)がビットコインETFの上場を承認してから2カ月が経過、ビットコインは史上最高値を更新、時価総額は1兆ドルを回復した。初期の予想では、ビットコインETFは5年間で720億ドル(約10兆5840億円、1ドル147円換算)の運用資産残高にのぼるとされており、取引開始以来、すでに90億ドル以上の資金を集めている。

市場は強気サイクルに向けて、ビットコインETF人気に乗じているように見えるが、暗号資産ネイティブ企業やWeb3企業はその現状に甘んじることなく、技術的な参入障壁を下げ続けなければならない。なぜなら、多くの機関投資家や個人投資家は、ユーザーにとってのハードルや摩擦を理由にビットコインETFに注目しているからだ。

ここで言うハードル/摩擦とは、ユーザーがウォレットを作ったり、取引所に口座を開設するために取らなければならない多くのステップ、あるいはパスワードやデバイスのセキュリティ確保についてのベストプラクティスを学ぶために費やさなければならない時間の長さ、さらには詐欺やハッキングから身を守らなければならないことを指す。これらはプロダクトのデザインによって対処できるはずだ。

ETFが存在する理由

ビットコインと金(ゴールド)を比較し、なぜ両資産がETFを必要としているかを考えよう。一般的な投資家は、金の「延べ棒」を価値の保存手段として物理的に保有することはない。延べ棒をどこに、どうやって安全かつ便利に保存できるというのか? 金ETFはそのために存在する。

一方、ビットコインは長い間、「デジタルゴールド」と呼ばれてきた。金のような輸送コストや保管コストはかからないにもかかわらず、金のような希少性をすべて備えているということだ。

ではなぜ、自分のデジタルウォレットで自分のデジタルゴールドを所有するのではなく、ETFを利用するのだろうか? 暗号資産はまだ発展の初期段階にあり、ウォレットや取引所といったプロダクトはまだ複雑で、大多数にとっては敷居が高いからだ。

ビットコインETFは、シードフレーズの安全性を確保するなど、ほとんどの人が取り組みたくない複雑な問題を解決することで、参入障壁を下げる。その見返りとして、投資家は手数料を支払い、資産運用会社に管理を任せている。

ETF発行会社に支払われる手数料と外国為替、プレミアムなどのコストを考慮すると、ETFは通常、取引所から直接ビットコインを購入するよりもコストが高い。それでも、ETFに対する市場からの需要は明らかに存在している。伝統的な資産運用会社はアクセス性の高いETFを発行することで、暗号資産を金融市場で合法的に取り扱っている。

ビットコインETFの登場は、業界にとって非常にポジティブな展開だ。なぜなら、新たなユーザーと資本の流れを可能にするからだ。伝統的な資産運用会社は、ビットコインETFのパフォーマンスを測定できるベンチマークを持つことになり、これは、より多くのTradFi(伝統的金融)の参加を実現するインフラ整備の強化に向けた非常に有望な一歩となる。

ハードルや摩擦の低減を

ユーザーが暗号資産にアクセスする方法におけるハードルや摩擦を取り除くことができれば、普及が進み、より多くの人々が参加できるようになることは間違いない。我々の共通の長期的目標は、ユーザーが自分の暗号資産に直接アクセスし、管理できる知識とツールを身につけることによって、暗号資産を広く利用できるようにすることであるべきだ。

我々は、ユーザーフレンドリーで安全かつ直感的なプロダクトを開発し、誰もが暗号資産に簡単にアクセスできるようにしなければならない。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Unsplash(CoinDeskが加工)
|原文:We Have to Make It Easier For People to Own Crypto Directly (Not Just With ETFs)