ビットコイン vs イーサリアム:どっちに投資する?

投資根拠はどちらもますます強く

ビットコイン(BTC)は今週、7万ドル(約1036万円、1ドル148円換算)を突破し、史上最高値を更新した。これは、アメリカで新しく上場したビットコインETFに対する(飽くことを知らないと思われる)投資家の関心の高さによるもので、誰が見ても史上最高の市場デビューの1つとなった。

ビットコインETFは、2カ月足らずで100億ドル以上の純流入を記録している。これに比べ、同じ記録を打ち立てるのに、ゴールドETFは2年、S&P500ETFは3年かかっている。

需要が過熱するなか、ビットコイン半減期が迫り、我々は新たな供給ショックの瀬戸際に立っている。

半減期とは、ビットコイン・ブロックチェーンの安全を確保しているマイナーに支払うために、ネットワークによって作成される新しいビットコインの量が4年ごとに半分になることを指す。ビットコインの史上最高値の更新は、これまでも半減期のたびに起こっている。

では、ビットコインETFへの資金流入と今後の半減期という2つの追い風があるなか、ビットコインは最善の投資先なのだろうか? 早まってはいけない。

時価総額で2番目に大きい暗号資産(仮想通貨)であるイーサリアム(ETH)には独自の投資根拠がある。

ビットコインがしばしば、価値の保存手段、交換媒体、またはその両方、つまり本質的にはインターネット向けのお金として説明されるのに対し、イーサリアム・ブロックチェーンは、美術品や収集品などのNFT、株式、債券、不動産などRWA(現実資産)のトークン化、ステーブルコイン、DAOなど、いわゆる「Web3」と総称される多様な分野で4500以上のアプリケーションを開発する開発者のためのプラットフォームとなっている。

ウォール街はイーサリアムの可能性に気づきつつある。つい先週、バーンスタインは調査レポートを発表し「爆発的なDeFi(分散型金融)の復活や、ブロックチェーン金融の未来として投資家のストーリーが戻ってくることが見込まれる」とDeFiの大復活を予想した。

私が新著『Web3: Charting the Internet’s Next Economic and Cultural Frontier』(Web3:インターネットの次の経済的・文化的フロンティアを描く)で書いているように、企業でもWeb3の採用が盛んになっており、フォーチュン100企業の52%が2020年以降にブロックチェーン関連のプロジェクトを立ち上げている。

イーサリアムへの3つの追い風

さらに、3つの要因が暗号資産イーサリアムを史上最高値に押し上げ、ビットコイン超えを後押しする可能性がある。

まず、2022年9月以降、イーサリアムの供給量は合計43万ETH減少しており、これは現在の価値で17億ドルに相当する。その間にビットコインの供給量は49万BTC(350億ドル相当)増加している。

なぜこのような違いがあるのか? イーサリアムを利用するためにユーザーから支払われる手数料の一部は、バーン(焼却)されるためで、これは株式市場における自社株買いに似ている。ネットワークが活発であればあるほど、トークンのバーンは増加し、デフレは大きくなる。そしてここ最近、ネットワークアクティビティは過熱している。

Merge(マージ)以降のイーサリアム対ビットコインの純供給量の変化(ultrasoundmoney.com)

次に、イーサリアムは今週、そのスケーラビリティの懸念に対処することに役立つ大規模なネットワーク・アップグレードを実施した。イーサリアムに対する批判の1つは、ネットワークが高価であることであり、ソラナ(Solana)のような競合にはチャンスとなっている。

今回のアップグレードは、スケーラビリティの可能性を最適化し、その容量を最大化することをサポートするはずだ。より高いスループットと、より安価な手数料は、イーサリアムがライバルに対してより大きなリードを築くことに役立つだろう。

最後に、早ければ今年5月にもイーサリアムETFが登場するかもしれない。5月23日は、SECがヴァンエック(VanEck)とアーク21シェアーズ(ARK 21Shares)の申請に対する決定を行う最終期限となっている。

ETF承認への自信が高まっている証として、資産116億ドルのグレイスケール(Grayscale)のクローズドエンド型イーサリアム・トラスト(ETHE)は現在、8.17%のディスカウントで取引されている。昨年の今頃、ETHEは基準価額に対して59%のディスカウントで取引されていた。

ブルームバーグETFのシニアアナリストであるエリック・バルチュナス(Eric Balchunas )氏とジェームズ・セイファート(James Seyffart)氏は、5月23日に承認される確率をわずか35%としている。しかし、私のポッドキャスト「DeFi Decoded」の最近のエピソードで、セイファート氏は、5月の期限で承認されなかったとしても、イーサリアムETF承認は「もし」ではなく「いつ」の問題だと述べている。

ビットコインか、イーサリアムか

ビットコインとイーサリアムは長年にわたって暗号資産のリーダーとなってきた。過去のサイクルでは、イーサリアムはビットコインに対して強含みで推移し、2017年と2021年にはそれぞれ1BTCあたり0.15ETHと0.09ETHの高値をつけた。

現在のレシオ0.056は、ここ3年間の最低レシオをわずかに上回っているに過ぎない。仮にビットコインの目標値を10万ドルと仮定すると、イーサリアムは2017年の高値を当てはめると1万4750ドル、2021年の高値では8800ドルを達成することになる。

イーサリアム誕生以来のETH/BTCレシオ(CoinGecko)

ビットコインでも、イーサリアムでも、悪い選択肢ではないだろう。 しかし、健全なファンダメンタルズといくつかの今後のプラス材料を考慮するとイーサリアムが有利と私は考えている。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Crypto for Advisors: The Investment Case of Bitcoin vs. Ether